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株式会社Bizsuppliのメルマガバックナンバー

会計を中心とした実力派プロフェッショナル集団であるビズサプリのメンバーが、旬のネタや色々な物事への洞察を記載したメルマガのバックナンバーです。

収益認識とキャッシュフロー経営について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.32 ━ 2016.7.6 ━


【ビズサプリ通信】

▼収益認識とキャッシュフロー経営について

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ビズサプリの三木です。

「売上はすべてを癒す」というのはダイエーの創業者である中内功さんの名言
ですが、私も小さいながらも会社を営むようになって売上の大切さが実感でき
るようになりました。
ボトムラインの利益がいくら重要でも、その源泉たる売上がないとどうにもな
りません。

今回のメールマガジンでは、売上、すなわち収益の認識基準をめぐる最近の動
向を踏まえながら、キャッシュフロー経営とのつながりを考えたいと思います。


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■ 1.売上を分解してみる

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業態により多少違いはあるものの、一般的には以下のようなステップで会社は
お金を稼いでいます。

(1) 受注
(2) 製品やサービスの提供
(3) 請求
(4) 入金

(1)は双務契約で、売手は商品を提供する義務を負い、対価の金銭をいただく権
利を得ます。
(2)は双務契約の片方、売手が義務を果たしたことを意味します。
(3)は双務契約のもう片方である対価を求める行為であり、
(4)で権利や義務が全て精算されることになります。

収益認識とは、このステップのどこで売上を計上するかという問題にほかなり
ません。

現金主義だと(4)で売上計上です。
対価の確実性に軸足を置けば(3)、義務を果たすことに軸足を置けば(2)が収益認
識のタイミングになります。

会計ルールは(2)ですが、実務上は(3)で経理処理をして、決算時だけ(2)に調整し
ている会社も多数存在します。また、(2)の中でも何をもって義務完了とするか
バリエーションがあり、出荷なのか着荷なのかといった議論があります。


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■ 2.収益認識基準の動向

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2014年にIFRSと米国基準で足並みをそろえて収益の新基準が発表されました。
2018年1月以降に開始する事業年度から適用されます。

この基準はメルマガで語りつくせないほど複雑・かつ精緻なものですが、収益
は義務を果たした時に認識する、というのが一貫した考え方です。

こうしたIFRSと米国基準の動きを踏まえ、我が国でも収益認識基準が検討され
ています。
2016年2月4日に企業会計基準委員会が「収益認識に関する包括的な会計基準
開発についての意見の募集」という文書を公表し、5月末までコメントを募集し
ていました。
今後の方向性は未確定ですが、当然ながらIFRSや米国基準を相当に意識した基
準開発となるでしょう。

なお、この基準の内容はメルマガで語りつくせる内容ではありません。
当社での勉強会も考えてしておりますので、ご要望やご意見などお寄せいただ
けますと幸いです。


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■ 3.売上タイミングと債権管理

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皆さんの会社は、複式簿記を使っていると思います。
貸方に売上が計上されると、通常は同時に売掛金が計上されます。

(借)売掛金 (貸)売上

このとき、請求と同タイミングで売上を計上していれば売掛金はすべて請求済
ですが、製品やサービスの提供時点で売上を計上すると売掛金の中に請求済と
未請求が混在することになります。

売掛金の中に請求済と未請求があるのは煩雑に思えます。
しかしながらキャッシュフロー経営という点では、未請求の売掛金も含めて回
収管理すれば請求を早くすることにつながり、資金の回収も早くなるので好ま
しいと言えます。

このように、売上を計上するタイミングによって債権管理の範囲が変わります。
範囲が広いほど当然ながら仕事は大変ですが、会社全体としての資産効率を上
げるチャンスにもなります。

ちなみにこの分野では建設業会計が先駆者です。
工事サービスの提供に応じて段階的に売上と資産を計上し、請求が先行した場
合には前受金として未成工事受入金に計上します。売掛金も請求・未請求を区
別して管理することが一般的です。
ひとつの取引が大きく長期間にわたるため、こうした手法が発達してきたとい
えます。


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■ 4.受注からのプロセス管理

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実はIFRSと米国基準の収益の新基準を開発していく際に、受注の段階から会計
処理することも議論されていました。
(最終的には求められてはいませんが、注記で関連情報の開示が必要です)

(1) 受注
(2) 製品やサービスの提供
(3) 請求
(4) 入金

前述したように①受注とは双務契約ですから、条件付きの債権(義務を果した
らもらえる)という資産と、履行義務という負債があり、

(借)条件付きの債権 (貸)履行義務

という仕訳が理屈の上では可能です。
見慣れない仕訳ですが、要は受注残を対照勘定で計上しているだけです。

(1)受注から(4)入金までが短縮できれば会社の資産効率は大幅に上がりますが、
(3)請求で売上計上している会社は帳簿上では(3)~(4)しか資産管理できません。
(2)で売上計上すれば管理範囲が(2)~(4)に広がります。
(1)受注から会計処理を行えば、理屈上は(1)~(4)まで帳簿で資産管理できます。

帳簿上はBSが膨らんで資産効率が悪化したように見えますが、実は見えていな
かった部分が帳簿に乗って管理の範囲が広がったことになります。

考えてみれば受注残は会社の大切な財産です。
受注を受けて、製造業なら生産計画を練り、サービス業なら人の手配をするな
ど、コストが発生します。
そうしたコストを早く回収するのはキャッシュフロー経営としては当然ですが、
現状では受注残はきちんと管理されていなかったり、「多いほうが良い」とい
う観点でしか見ていなかったりします。
受注残管理はたいてい営業部門の仕事なので「たくさん受注する」「できるだ
け積み上げる」ことに力点が置かれがちなのかもしれません。

帳簿に乗っていないものの資産効率はなおざりにされがちです。
しかしながら受注残も未請求債権も、大切な会社の財産。
本当のキャッシュフロー経営を目指すなら、①受注から④入金までをスピード
アップする観点も取り入れたいものです。

こうした管理を、帳簿を通して行うのかKPIのような指標で行うのか、やり方
はひととおりではありません。
わが国でも収益の基準が検討されています。世界的に収益の会計処理が検討さ
れていることを機に、貴社でも収益認識と会社の管理プロセスを紐づけて見直
してみてはいかがでしょうか。


本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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