株式会社Bizsuppliのメルマガバックナンバー

会計を中心とした実力派プロフェッショナル集団であるビズサプリのメンバーが、旬のネタや色々な物事への洞察を記載したメルマガのバックナンバーです。

財務経理業務の改善

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.071━ 2018.3.28━━

【ビズサプリ通信】

▼ 財務経理の業務改善の進め方

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こんにちは。ビズサプリの花房です。今年の冬は実感と違わず統計データでも
いつもより寒かったそうですが、ようやく暖かくなってきたと思ったら、あっ
という間に桜が満開となりました。桜の開花も平年より1週間ほど早いようで、
今年は色々と平年とは違っているようです。そして今週の国会では、森友学園
問題での佐川氏の証人喚問に注目が集まっていましたが、昨日の報道では疑惑
解明に繋がるような発言はなかったようですね。

今国会では1ヶ月ほど前に、厚労省から提出された不適切な調査データがきっ
かけで、今回成立を目指す働き方改革法案の目玉の1つであった裁量労働制
拡大について、法案から切り離すとの決定がなされており、これによって、少
高齢化が進んで益々働き手が減ることで急がれる日本の生産性向上に、ブレ
ーキがかかるのではという声もあります。しかしながら企業としては、法案の
成立云々に関わらず、生産性向上を進めて行かなければなりません。

生産性向上が求められるのは現場だけでなく、財務経理の業務についても同様
であり、言葉を変えれば業務改善ですが、今回は財務経理業務の改善について
考えてみたいと思います。

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■ 1.経理業務の特質
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業務改善は「カイゼン」として海外でも使われているくらい、製造現場におい
ては現場発信の活動として普及していますが、経理を始めとする管理部門にお
いては、業務改善をやろうとして何度取り組んでも、なかなか進まないケース
が散見されます。

理由の1つとして、製造現場や店舗のような現場作業は、仕事の対象がモノや
サービスと言った、具体的に品質を評価したり、作業手順を標準化しやすく、
成果を絶対評価し易いのに対して、経理業務は主に情報を取り扱い、仕事の品
質や成果について明確に定義できないことが多く、絶対的な評価をしにくい、
という特徴があります。

また現場作業は工程を細かく分けることができ、1つ1つの工程をシンプルな業
務に落し込むことが出来るのに対して、経理業務は種類が多岐にわたり、複雑
な業務も多いという特色があります。

さらに評価について言えば、現場作業は通常は品質やサービス評価について専
門の部署が評価を行うことから評価手法が確立し、非効率さや不良品は製造原
価を押し上げることになるため、現場そのもののコスト削減意識が元々高い一
方で、経理業務は仕事が見えにくく、担当者のスキルの差が影響しやすいので、
品質管理が難しく、非効率な作業によるロスも金額的に評価することが難し
い、と言えます。

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■ 2.業務改善のプロセス

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このように経理業務は見えにくく評価しづらいからと言って、業務改善を諦め
るわけにはいかないので、ではどのように経理業務を改善して行けばいいかの
プロセスを示すと次のようになります。

経理業務に限らず業務改善は通常、大きくは、①業務の可視化、②業務の定量
化、③課題・問題の特定、④解決策の策定・導入、の流れになり、それぞれ、

①業務の可視化:現状の業務内容を棚卸しすること
②業務の定量化:それぞれの業務内容について工数(時間)を算出すること
③課題・問題の特定:現状の姿とあるべき姿のギャップ=問題点、を把握する
こと
④解決策の策定・導入:現行プロセスを前提とした改善と、プロセスそのもの
を再構築する改革

ということになります。

業務は放っておけば、自然と増えるものです。例えば上司が変わると要求する
資料が変わる、制度が変わり新たな資料の作成が求められる、担当者の引継ぎ
の中で、伝言ゲームのように当初の最短だったプロセスが遠回りなプロセスに
代わってしまう、監査の厳格化に伴い監査対応の時間が増える、等その原因を
挙げるときりがありません。

そこで、業務効率化の第一のステップとして、現状どのような業務を行ってい
るかを改めて棚卸し、適切に現状を把握をすることから始める必要があります。
業務の棚卸は自己申告による方法もありますが、合わせて担当者が業務上支障
があると感じていることも情報として有用ですから、経理業務全体の経験と
知識を有するものが、個々の担当者にインタビューしてまとめて行く方が望ま
しいです。

業務効率化のステップの2番目は、棚卸して把握した業務について、工数=実際
の作業時間を算出することです。その目的は、全ての業務を一度に改善できる
わけではないので、工数の多い業務から手を付けた方が改善効果は高いため、
改善の優先順位を付けるためです。

そして業務上の課題、問題を特定し、解決策を考えて行くわけですが、その際
の視点として、次の8つのポイントで現行業務を見極めると整理しやすいです。

「廃止」…現行の成果物をやめる、作業をやめる、チェックをやめる
「削減」…現行の成果物のボリューム、頻度、細かさ、例外処理を減らす
「容易化」…情報の入手し易さ、判断のし易さ、後戻りしない仕組みにする
「標準化」…ルール化、ミスの起こりにくい仕組み、ルーチン業務にする
「計画化」…前倒し実施、集中化、作業時間の短縮、他部署等との連携
「分業化」…スキル・経験による最適配置、業務量の平準化、外注化
「同期化」…重複資料の統一、関連業務の集約、ワークシートの統合
「自動化」…単純業務に関するExcelの関数・マクロの活用、システムの導入

どの業務も基本的に上記の8つの観点で課題がないかを検討し、課題があれば
改善が期待できることになります。

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■ 3.「改善」と「改革」の違い

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業務改善と似た言葉で、業務改革という言葉があります。業務改善は自動車で
言えばいわばマイナーチェンジで、現行業務の基本的な流れは維持しつつ、一
部をよりよく変えること、例えばエクセルの資料を簡素化したり、不要な作業
を削減するのに対して、業務改革はフルモデルチェンジであり、ゼロベースで
一からプロセスを再構築することで、例えばエクセルの資料を一から作り直す、
システムを導入する、アウトソース化、ロボットの導入、等です。

業務改善ですと、抜本的な解決策にはならないので改善効果は自ずと限界があ
り、数%から多くても1,2割程度の改善に留まるのに対し、業務改革では、業
務量を半減、あるいは成果を2倍にするような、ドラスティックな成果を求め
ます。業務改革を成功させるためには、最初に全体の設計図、グランドデザイ
ンを如何に描けるかが特に重要となります。

最近話題になっているように、労働人口減少に対応するため、これらかのトレ
ンドとしては、ITのクラウド化による低価格化、AIを搭載したロボットの進化
により、これらを活用した業務の効率化が進むと考えられます。但し気を付け
なければならないのは、現状はまだ任せらるのはコピペのような単純作業で、
ルールが完全に決まっている業務には向いていて、むしろ人がやるよりも速く
て正確ですが、複雑で高度な作業(経理で言えば決算上の見積り計上が必要な
業務等)は引き続き人が行う必要があると思います。またロボットの設定やメ
ンテナンス、最終的なチェック業務と言ったものは人が行うことになるので、
作業が減る一方ではなく、増える作業も出てきます。

また最近は経理人材の不足している中で、財務経理業務の一部、あるいは財務
経理業務そのものをアウトソースすると言ったことも増えてきているようです。
アウトソース先が信頼できる先であれば、退職者が出たらそれを補充して教育
すると言った、採用コストと教育コストが不要になることから、結果的に内製
化よりもコストパフォーマンスが高いこともあり得ます。

ゴールとして何を目指すのかにより、とりあえずマイナーチェンジで行くのか、
一時的に時間とコストをかけてでもフルモデルチェンジを行うのか、国の働き
方改革の方向性は読めませんが、皆様の会社では確実に働き方改革を実践でき
るよう、検討されては如何かと思います。

ビズサプリグループでは、会計士の他、事業会社での経験豊富なコンサルタン
トによる業務改善支援、システム導入支援、財務経理業務のアウトソースも行
っておりますので、ご興味ありましたらご相談頂ければと思います。
http://www.biz-suppli.com/menu.html?id=menu-consult

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

ハレの日騒動とリスクマネジメント

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.070━2018.02.21━


【ビズサプリ通信】


▼ ハレの日騒動とリスクマネジメント

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こんにちは。ビズサプリの辻です。今年の冬は本当に寒い日が続いていますね。
インフルエンザも大流行はやっと過ぎ去ったらしいですが、まだまだ警報レベ
ルが続いているとのこと。春まではもう少しの辛抱です。

本日は、リスク感度について書いてみたいと思います。

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■ 1.「ハレの日」騒動

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少し前になりますが、先月、成人式の晴れ着をめぐる騒動がありました。

横浜市等の成人式の着付け会場に届くはずの振袖が届かず、多くの新成人が
晴れ着を着ることができずに大きな混乱が生じたというものです。人生の記念
すべき晴れの日に、楽しみにしていた振袖を着ることができずに混乱の中涙する
新成人やその親御さんの姿が何度も報道され、大きな衝撃を受けました。

その後に被害額は億円の単位となり、大量に振袖がネットオークションに出品
されているという報道もあり、計画的な詐欺事件かとも思いましたが、その後
事件の当事者の「ハレの日」の社長が謝罪会見を行い、詐欺の意図はなく、
資金繰りがつかず、営業を投げ出したのが要因ということがわかりました。

少なくとも預けていた振袖は転売されているわけではなく、順次手許に返却
されるということで、最悪の事態ではなかったようです。

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■ 2.振り込む前にリスクを想定していたか

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今回の騒動は、「ハレの日」という会社に全面的に責任があるのは確かです。
しかし、購入する側も高額の買い物をする際にもう少し「リスク」を考える
必要はなかったでしょうか。

報道によると、「ハレの日」では、2年後の成人式の晴れ着についても受注を
行い、そして入金を強烈に促しており、今回戻ってこない振袖の代金の一部は、
来年以降の振袖の代金でした。

少し落ち着いて常識的に考えてみれば、2年後の振袖の代金をすぐに振り込ま
なければいけない状況は、非常に違和感があるということに気づくことができ
たのではないでしょうか。

そこまで思いが及ばなかったとしても、「お金を振り込み、商品の到着が2年後
になる」ということは、その間に会社が倒産すれば当然そのお金は返ってこない
という「リスク」をきちんと認識をしたうえで、入金をしたのでしょうか。

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■ 3.リスクに背を向ける日本人

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そのようなリスクを想定していた方は恐らくほとんどいなかったと思います。
振袖という特別のものを購入するということでリスク感度が鈍っていたのかも
しれませんが、日本人は、もともと「リスクを見ない」「リスクに背を向ける」
という傾向にあるといわれています。日本人は文化的に「相互監視と相互規制
の仕組み」があり、変なことをすればその社会で生きていけなくなるという
村八分的感覚で信頼関係を気づいているという背景があるといわれています。
(「心でっかちな日本人」 山岸俊男著)文書化されたルールや契約、モニタ
リングといった明確な根拠がなくても「変なことはしないよね。」という
暗黙のルールがあり、その中にいる人同士であれば、盲目的に信じてしまう
ということになります。

例えば最近生じている「品質データの改ざん」についても、納入先の企業は
納入元の検査結果を全面的に信じており、例えば検品の際にサンプルで検品の
テストをする、といったことは行っていなかったようです。
長年の信頼している取引先だから大丈夫といったことで、取引相手が不正を
行うリスクを識別しないまま盲目的に信頼してしまっていたからでしょう。

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■ 4.リスクマネジメントの考え方

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すべての事柄に対していつもリスクを検討しているのは非効率ですから、重要
なリスクを抱えるという時、個人でいえば例えば住宅を購入するときには慎重
に考慮する必要があります。例えば値段だけではなく、災害やメンテナンス、
周辺の環境等様々なリスクを考えて決断をしていくことが必要なはずです。
水害が起きやすい地域であれば、同条件の他の物件と比較して値段は安いはず
ですが、そのリスクを認識したうえで、対応をしていくことになります。
対応とは、例えば保険を掛ける(リスクの共有)、排水溝を整備する
(リスクの軽減)、購入をあきらめる(リスク回避)ということになります。

ビジネスであれば、例えば買収をする際には、開示されている財務数値だけで
なく、法令や内部統制、ビジネスの将来性、従業員の構成等様々な観点から
できる限り網羅的にリスクを識別し、その識別したリスクの大きさや対応方法
を考慮した上でリスクを取るか取らないかといったことを決断していくことに
なるわけです。買収後に思わぬリスクが顕在化して十分シナジー効果がでない
のは、この事前準備が不十分でリスクを十分識別できていないことも多いと
思われます。

新成人がこれから足を踏み入れるビジネスの世界は、健全な懐疑心を持ちなが
ら、時にはリスクを果断に取りながら物事を進めていかなければならない世界
です。中には、スキがあればつけこもうとする人もたくさんいます。また、対処
すべき相手は同じ文化で育った日本人だけでなく、様々な背景を持つグローバル
な世界が相手です。自身がこれから行う行動には、どのようなリスクがあるの
か、何が最大の損失なのか、その最大の損失は避けるべきレベルにあるのか、
そのようなことを考えながら前に進んでいかなければなりません。

今回の「ハレの日」の騒動は、そのような世界が待っていることをしっかり認識
するいい機会と思い、力強い大人になって頂きたいと思います。
また十分大人の私たちもリスク感度を高めていかないといけないですね。

本日もビズサプリ通信をお読み頂きありがとうございました。

経理の業務

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.069━2018.02.07━


【ビズサプリ通信】


▼ 経理の業務

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はじめまして。

この1月より新たにビズサプリに入りました泉です。
ビズサプリは2010年10月に設立され、8年目でありメンバーには諸先輩方が
多い中、一番の若手(とはいっても40前ですが…)としてがんばっていき
たいと思います。
どうぞこれからよろしくお願いいたします。

簡単に自己紹介をしますと、監査法人の勤務後に一般事業会社の経理部で
勤務し、その後コンサルティング会社にてIPO支援やJSOX支援のほか、経理
業務のコンサルティングをしてきました。

今回は、みなさん知っているようであまり知らないのではないかと思う経理
業務についてお話したいと思います。

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■ 1.経理のイメージ

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経理マンの典型的なイメージといえば、腕まくりをし「アームカバー」
「腕抜き」といったものをつけ眼鏡をかけて、ちょっと人とコミュニケーション
をとるのが苦手な感じでずっと数字をいじっている人というものではないで
しょうか?(ちょっと古いですかね。)

ただ、私が監査法人にはいった2000年代前半では、すでに一般的に個人別PC
が普及し、会計システムやExcelによる作業がほとんどでありこういったペン
やインクでの作業はなくなっていたため、実際はこういった人は稀でした。
ただ、確かにちょっとお年を召した方はそういったような様子も伺える時期でした。

経理」という言葉を辞書で調べると、会計・給与に関する事務といった意味
のほかに治めととのえることといった意味も記載されており、人によっては
経営管理」の略だというひともいます。
つまり、単純に伝票を集めてきて集計する、支払いを行う、金庫番をすると
いった業務だけでなく、本来は全社の数字に関わる情報すべて集め、整え、
会社が健全に成長できるようにすることが経理の業務であると考えられます。

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■ 2.経理に求められる役割

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では、実際に社内における経理に求められる役割とはどういったものなので
しょうか?

従来、経理・財務部門の主な業務は、決算を締めて実績数字をいかに正確に
“作る“か、資金繰りを間違わずきちんとするかかということでした。
そのため、経理部員はいわゆる簿記・会計知識(理論)等の専門知識をもって
いかにルーティンワークを正確に実施するか、ということが重要視されていました。

それ自体は今でも十分重要な業務ではありますが、変化の激しい現在の経営
環境下では、経理・財務部門に期待される役割が変わってきており、従来の
まま経理実務のプロフェッショナルとしては通用しない状況となっています。

具体的には経理・財務部門にはその作った数字に対して分析、経理情報等に
潜んでいる経営上の問題点の把握、さらにマネジメントが経営判断を実施する
際に有用な情報を提供することがより重要となってきています。

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■ 3.経理の具体的な業務内容

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経理・財務部門の業務は大きく次の3つに分けられます。
財務会計(制度会計)
金融商品取引法会社法、税法といった制度に則り、株主や債権者などに
会社の財政状態や経営成績を適切に報告する業務
管理会計
経営層や中間管理職が事業上の意思決定をサポートできるようにするため
に、中期経営計画の策定、予実分析や各種KPI資料などを作成、分析、報告、
提案する業務
〇資金管
各種計画に基づいた必要な資金を調達、運用するとともに、現金出納や支払
などの日々の資金管理を行っていく業務

この3つの業務のうち、上で述べたように、会社の意思決定への情報提供等が
期待されるということは業務における管理会計の比重が重くなってきている
ということになります。特に上場企業では、一般的に経理と財務の分離の
観点から資金管理は財務部となっていることも多いかと思います。
なお、昨今の東芝の例をみていると、会社の外からはブレーキ役としての
機能も期待されているのかもしれません。

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■ 4.経理は忙しいのか

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経理の人はいつも忙しい」というイメージがあるかと思いますが、実際に、
経理の人は忙しいのでしょうか?

一般的な上場企業の経理部は、毎月次の業務を行っています。
月次決算:7日前後で単体決算、10日前後で連結決算
取締役会対応:第2、3週に開催される取締役会への月次報告資料(予実分析、損益分析など)
入出金業務:現金出納、債権の入金消込、月次の支払業務
税務業務:源泉所得税、特別徴収住民税、消費税の中間納付

さらに上場企業の場合は金融商品取引法に基づく四半期ごとの法定開示業務と
して、(四半期)決算短信、(四半期)有価証券報告書の作成、JSOX対応、
監査法人の対応を行います。
会社法に対応する年度決算業務として計算書類等の作成、(場合によって)
株主総会の準備や実施。税務業務として、1月の償却資産税申告、法定調書
作成、支払調書の作成、年度末決算に基づく、法人税、住民税および事業税、
消費税の申告を行います。

一口に支払業務といっても、実際は現場からの支払申請に基づき請求書等の
エビデンスと照合したうえで支払データを作成し、何人もの確認をへてから
送金されますので意外と手がかかります。(お金が動く以上、当然といえば
当然ですが…。)

また、ひと昔前は四半期決算もJSOXもなく、その前は連結もない時代でした
が、1990年代後半以降は会計基準の制定が急激に進み、また、税務も外形
標準課税や組織再編税制といったものにより経理部門の高度化、複雑化が
進んでいます。

この上に従来からある管理会計としての中期経営計画や予算策定といった業務
に加え、さらに管理会計の比重が重くなるということはかなり大変だという
ことがご理解を頂けると思います。

最近、経理部門の人材が不足しているようでなかなか人の採用ができないと
いう話はよくききますし、「いい人いないですか」ということもよく言われ
ます。

ビズサプリグループでは、経理財務人材の人材紹介業務、財務経理業務の
改善コンサルティングアウトソーシングも行っておりますので、何か
ありましたらご相談ください。
http://www.biz-suppli.com/menu.html?id=menu-consult

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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ICOの会計処理

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.068━ 2018.1.24━

【ビズサプリ通信】


▼ ICOの会計処理


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 こんにちは、ビズサプリの久保です。
先月のメルマガでは、仮想通貨の売買などの「取引」についての会計処理や
税務上の取り扱いについてお話ししましたが、今回は、仮想通貨による資金調達
であるICOについて考えてみることにしたいと思います。

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■ 1.ICOとは?


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新規上場の時に新株発行をして出資する人を募集するところから、IPO =
Initial Public Offering (最初の公開募集)は新規上場を意味します。
最近はICOInitial Coin Offeringが話題になっています。これは、Bitcoin
のような仮想通貨を使ったベンチャー企業による資金調達方法の一つです。
仮想通貨市場で、「トークン」と呼ばれるものを発行して、その代わりに仮想
通貨を調達するというものです。ICOのIはInitialですが、別に最初であるか
どうかは関係なく仮想通貨での資金調達がICOと呼ばれているようです。
米国では、filecoinという会社が280億円ぐらいを調達したとのことです。日本
でもCOMSAという会社が昨年10月から11月にICOを実施し109億円調達したそうです。
トークンを買った投資家は、どうするのかというと、市場でそれが値上がりした
ら売却して儲けるそうです。当然値下がりすることもあります。トークンは売買
できますので、株式市場での株式の売買に似ています。
一方、仮想通貨で資金調達した会社は、そのまま仮想通貨を持っていてもよい
のですが、資金として使うためには現金化することになります。

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■ 2.ICOで調達した資金は資本金か?


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株券とトークンは大きく違います。会社法上、株券の所有者は株主として一定の
権利が保証されていますが、トークンは民間の市場での取り決めだけしかあり
ません。
株式を発行すると会社の「資本金」となりますが、トークンを発行する会社で
は、調達額を資本金に計上することはできません。それでは、何になるのでしょ
うか。
「長期預り金」ではないかという人がいます。これは、1年以内に返金するもの
ではないので、長期の預り金であるという考え方です。
トークンは、ゴルフ会員券のように売却できる一種の有価証券という性格があり
ます。バブルの時は、ゴルフ会員券を売って儲けたり、または大損したりした人
も多かったと思います。ゴルフ会員権は、ゴルフ場の会社側ではどんな会計処理
になっているのでしょうか。
ゴルフ場の会社では、ゴルフ会員権は「長期預り金」になっています(古い
ゴルフ場は株券を会員に渡すこともありました。その場合は資本金)。会員が
脱退する時は、それを返金してもらうことができます。ゴルフ会員権を市場で
売却すると会員が変わります。その場合は、ゴルフ場は返金するのではなく、
書き換え料を徴収して会員名を書き換えます。書き換え料はゴルフ場の収益に
なります。
トークンは、ゴルフ会員権に似たところがありますので、長期預り金だという
人がいるのだと思います。ただし、ゴルフ会員権は、会員に返金する前提が
あるので長期預り金なのでよいのですが、トークンは返金する義務がないという
点が異なります。
このように議論が解決していないことから、会計処理基準が公表されていない
状況でした。しかし、ついに上場会社のメタップスという会社がICOをしま
した。これまでは、上場していない会社がICOをしており、監査法人の監査の
対象になるということはありませんでした。メタップスが最初に監査を受ける
ことになってしまったのです。
 
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■ 3.メタップスによる会計処理


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タップスは、8月決算の会社で昨年9月から11月までの第1四半期報告書を
45日後の1月15日に提出する必要がありましたが、その提出を延期しました。
これは監査人であるPwCあらた監査法人とのICOに関わる会計処理についての
意見調整が必要となったからです。この監査法人東芝の監査人でもあり、
提出延期になると、この監査法人が出てくるイメージもありますが、筆者の
考えすぎと思います。
タップスの韓国子会社が昨年9月から10月にかけてICOを実施し、当時の時価
で10億円を調達しました。これをどのように会計処理するかというのが、
タップス監査法人に突きつけられた問題です。前述のとおり、ICO
どのように会計処理したらよいかについての、会計処理基準がありません。
法的な整備もされていません。
タップスが1月15日の夜に提出した四半期決算短信とIRニュース(適時開示
情報)によれば、調達した資金を「前受金」に計上したとのことです。
四半期貸借対照表をみると、その他の流動負債が10億円程度増えています。
IRニュースには、「本ICOは、仮想通貨Pluscoin(PLC)の販売であり、本ICO
において受領した対価は将来的には収益として認識します。但し、収益認識の
方法やタイミングについては引き続き協議中」としています。ちなみに、仮想
通貨Pluscoin(PLC)というのはイーサリアムという仮想通貨をベースにした
トークンです。ベースになる仮想通貨によって、トークンにはいろいろと名前
がついているようです。ここでは、トークンも仮想通貨であると言っている
ようです。
この日に発表した決算説明のパワーポイントには、ICOで調達した10億円の
仮想通貨(イーサリアム)の時価が、その後5倍になったと書かれています。
前受金計上したときは10億円だったものが、今は50億円ということになりま
す。ちょっと整理すると、メタップスは「長期預り金」ではなく「前受金」
に計上しています。これは将来収益に計上する予定であるからである、とし
ています。この収益は、いつ頃、いくらで計上するのでしょうか。
ICO時の時価は10億円でしたが、メタップスがそのまま仮想通貨を持ってい
たら50億円になっていたということです。仮想通貨の販売なので収益である
としているので、多分10億円が売上高となり、それ以外に評価益が計上される
のかもしれません。提出が延期されている四半期報告書が提出されたら分かる
と思います。
仮想通貨でのICOは、収益であるとしているのは、メタップスの韓国子会社が
仮想通貨の販売業をしているからなのかもしれません。ICOによる資金調達は、
どんな場合も収益かというとそうでもないかもしれません。収益だったら課税
されますが、長期預り金には課税されません。大きな違いがあります。
PwCあらたさんは、東芝に対しては「結論不表明」を表明しています。監査
法人がこの手を使って結論を出さないという判断をした場合には、第1四半期
では決着がつかないということになります。収益計上されるのか、結局は別の
会計処理なのか、注目したいと思います。
 
本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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東芝の監査意見と監査法人との付き合い方

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.067━2018.1.15 ━

【ビズサプリ通信】


東芝の監査意見と監査法人との付き合い方


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ビズサプリの三木です。
今回のメールマガジンでは、東芝の監査意見と監査法人との付き合い方について取り上げます。あまりこういう記事を書くと業界の中で良い顔はされないのかもしれませんが‘(笑)上場会社やIPO準備会社などからすれば興味のある話題と思います。
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■ 1.「適正」以外の監査意見
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ご存知の通り、監査法人というのは財務諸表と内部統制(上場企業の場合)の監査を行って監査意見を表明します。監査対象が2つあるため、財務諸表監査と内部統制監査それぞれの監査意見があります。
財務諸表監査の場合は財務諸表が適正に作られているかどうかを監査し、「適正」「不適正」「限定付き適正」「意見不表明」のいずれかの監査意見を表明します。もちろん一番多いのは「適正」意見ですが、「意見不表明」も時々目にします。マスコミではよく監査意見のことを「お墨付き」と表現します。「意見不表明」はまさに「お墨付きがない」ということで、財務諸表が正しいかどうか監査法人が判断できないということです。「不適正」「限定付き適正」は財務諸表が間違っているということですが、間違いの程度がひどい場合には「不適正」、間違いの影響がさほどではない場合には「限定付き適正」となります。「不適正」や「限定付き適正」といった監査意見はほとんど目にしません。なぜなら、これらの監査意見は財務諸表の間違っている箇所や金額が分かる場合に表明されますから、通常はそんな監査意見を出されるくらいなら企業側も財務諸表を修正するからです。にもかかわらず「不適正」や「限定付き適正」が表明されるケースは、監査法人も監査を受ける企業も、よほどの事情があって引くに引けないケースだと思って良いでしょう。
内部統制監査の場合、企業の内部統制そのものに対して監査法人が意見表明しているわけではありません。まず経営者自らが内部統制を評価して結果を開示し、監査法人は経営者自らによる評価が正しく行われたかどうかについて監査意見を表明しています。内部統制監査については、ほぼ全てが「適正」意見です。「意見不表明」も、エアバッグのリコール問題に揺れたタカタくらいしか記憶にありません。財務諸表監査と同じで、監査法人に「不適正」と宣告されるくらいなら企業自ら内部統制に不備があると表明しますから、監査法人による内部統制監査が「不適正」というのはよほどのことがなければあり得ません。

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■ 2.東芝の内部統制監査
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こうした「よほどのこと」を連発したのが東芝です。2017年3月期の監査報告書では、財務諸表監査が「限定付き適正」、内部統制監査は「不適正意見」が表明されています。いずれも、前期(2016年3月期)の工事損失引当金を適切に計上していなかった(それにかかわる内部統制にも問題があった)ことを原因としています。
財務諸表監査が「限定付き適正」なのは過去のメルマガでもご説明した通り一種の“ウルトラC”ですが、ある程度背景が分からなくもありません。東芝上場廃止を避けたいと考えており、「不適正」意見を受けてしまうと上場廃止基準に抵触してしまうのですが、「限定付き適正」であれば抵触しません。「適正意見」にするためには過去分の遡及処理を含めて決算をやり直す必要があり、これは私の想像ですが、「限定付き適正」で上場廃止を免れる道が開けたのなら、どうせ傷のある身としては面倒な遡及修正にメリットを感じなかったとしても不思議ではありません(上場企業の姿勢としてはどうかとは思いますが・・・)。
しかし内部統制監査の「不適正意見」は解釈が簡単ではありません。監査法人の内部統制監査の結果が不適正になることが分かっていながら、なぜ経営者評価の結果として“内部統制は有効”と表明したのでしょうか。内部統制の場合には財務諸表の遡及修正のような膨大な作業は不要で、自らの内部統制の評価結果を「不備あり」に変えるだけです。
こうした選択をした背景を考えると、東芝が何を優先したかが見えてきます。東芝は上場維持のためには債務超過を回避する必要があり、工事損失引当金の遡及計上は是が非でも避けたいところでした。このため東芝は、「限定付き適正」を覚悟のうえで、工事損失引当金の計上をしていない2016年3月期の財務諸表は適正だと主張しました。この状況下で内部統制に不備があったと主張することは、理屈としてはあり得ても、財務諸表は適正だという主張と干渉しかねません。財務諸表の数字自体を”ウルトラC”で乗り切ることを最優先し、それに影響しかねない要素を排除した結果、内部統制監査は覚悟のうえで不適正意見を受け入れたことになります。
2017年3月期の四半期決算では東芝PwCあらた監査法人は鋭く対立し、結論不表明にまで至りました。想像ですが、東芝は期末決算の財務諸表監査を”ウルトラC”で乗りきるのが精いっぱい、内部統制監査を何とかする“ウルトラCパート2”の交渉などできず、内部統制監査は不適正意見以外に選択肢がなかったのかもしれません。

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■ 3.監査法人の内部事情
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近年の監査法人側の事情としては、人不足が挙げられます。監査の基準は厳しくなる一方です。私が公認会計士として業務を始めたころの監査六法は「監査小六法」という名前でカバンで持ち運べたのですが、だんだん分厚くなり、”小”の字がなくなり、紙が薄くなり、サイズが大きくなり、ついに分冊となりました。その様子を見るだけで隔世の感があります。更には監査法人に対しては、日本公認会計協会によるレビュー、金融庁によるレビュー、米国に上場している企業の監査ではPCAOBによるレビューも行われます。こうした外部圧力もあって、単に監査をしっかりやるだけではなく、隙が無く論理的に説明できるように、中身と共に見栄えも良い監査をしなければなりません。つまり監査法人の監査チームは、監査におびえながら監査をしている状態です。このため企業側からは見えない作業が膨大となっています。「最近の監査法人のスタッフは部屋にこもって書類づくりばっかりしている」という印象を受ける経理の方も多いようですが、実際のところ監査チームも好きでやっているわけではありません。中には膨大な内向きの仕事にモチベーションを下げてしまうスタッフもいます。大量の仕事の中で、スタッフの確保に喘ぐのが今の監査法人の姿です。
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■ 4.監査法人との付き合い方
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監査法人も意見不表明や不適正意見は出したくないものです。こうしたイレギュラーな監査意見に至った論拠を隙なくまとめるのは大作業ですし、そもそも適正な決算書で経済社会に資するという監査法人の存在意義にも反してしまいます。監査法人の監査を受ける現場では、面倒さが先に立って監査法人と会社で利害が対立しがちです。「なんでこんな資料まで」「監査法人の言い訳づくりに付き合わされている」という声も聞くことがあります。しかしながら監査法人としても理不尽でやりたいのではなく、会計監査の世界で筋の通った説明がつくのかどうかが気になっているだけです。もちろん企業側も意見不表明や不適正意見などもらいたくありません。こうした状況を見ていると、監査を受ける企業側も監査理論をある程度知っておく必要が出てきたな、と感じます。監査法人が資料を求める目的は何か、どういうロジックを組み立てようとしているのかを察すれば、もう少し手軽に提供できる資料に切り替えたり、別の説明の仕方を提案したりすることもできます。意見不表明や不適正意見にしたくないのは企業も監査法人も同じですから、時にぶつかり合うことはあっても、緊張感ある協力関係という基本軸を外してはいけません。東芝は2017年3月期で、四半期決算ではかなり関係がこじれ、期末はウルトラCで財務諸表監査では意見不表明や不適正は免れました。しかしながら内部統制に関する意見の食い違いを見ると、監査法人との間の協力関係は引き続き懸念材料と思えます。
本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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仮想通貨取扱のルール

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.066━ 2017.12.21━

【ビズサプリ通信】

▼ 仮想通貨取扱のルール

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こんにちは。ビズサプリの庄村です。すっかり寒くなり忘年会やクリスマス
などイベントも多く多忙を極めている方も多いと思います。
2017年最後のビズサプリ通信は仮想通貨をテーマにしたいと思います。

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■ 1.仮想通貨とは

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最近はビットコインや仮想通貨という言葉を新聞やTVニュース等でよく見か
けます。

仮想通貨はもともとオンラインゲームの「おもちゃのコイン」から派生した
もののようですが、実体を持たないバーチャルなお金です。
資金決済法上で仮想通貨は、次のいずれかに該当するものとして定義されて
います。
①代価の弁済のために不特定の者に対して、使用することができ、かつ、
不特定の者に対して購入及び売却ができる
②電子機器その他のものに電子的方法で記録され、移転できる
法定通貨又は法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)でない
仮想通貨にはいろいろな種類があり有名な仮想通貨としてビットコイン
あります。

送金手数料が格段に安いため、仮想通貨は海外送金等の送金手段として使用
されることが多いです。
中国では人民元の海外への資金移動制限があるため外国との資金決済で仮想
通貨の便利さが評価されてきましたが、当局がビットコインの取引所を閉鎖
するなど国家による統制もあり、今後の行く先が不透明なところもあります。

また、仮想通貨の価格は取引所で「いくらで売りたい人」と「いくらで買い
たい人」という人がうまくマッチングして取引が成立する相対取引で決まる
ため、価格は常に変動します。したがって、投資手段として使用されること
も多いです。価格が下がったときに買って上がった時に売れば、その差額が
儲けとなります。まだ取引の歴史が浅いこと等もあり、価格の上げ下げが
激しいようです。

さらに最近の新聞紙上をにぎわしているように仮想通貨は飲食店や家電量販店
等のお店での支払手段として使用されています。国内ではまだ利用できる店舗
は限られているものの1万店舗以上で使用されているようです。
仮想通貨の代表格であるピットコインの支払いは「ウォレット」という専用
アプリを通じて行います。
お店でビットコインアドレスのQRコードを発行してもらい、それをスマホ
読み取って利用代金を送金するのみで、現金やカードが不要でスマホさえあれ
ばその場で支払が完了します。
ウォレットにある残高の範囲内で送金ができます。
仮想通貨はクレジットカード、Suicananaco等の電子マネー、デビット
カードと違い、専用のカードリーダーが不要のため、初期費用が安く済み、
また仮想通貨の支払手数料はクレジットカード決済でクレジットカード会社
等に支払う手数料よりも安いため、今後は大型店舗や個人商店でも導入が
進んでくると予想されます。

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■ 2.法整備

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仮想通貨は社会生活に欠かせない存在になりつつあるので、2017年4月に仮想
通貨について規定された新しい法律が施行されました。正式名称は「情報通信
技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」で
あり、フィンテックに代表されるIT技術の発展などの伴う環境の変化に対応す
るために金融分野の法律を改正することが法制度の目的です。金融グループに
おける経営管理の充実や共通・重複業務の集約等、技術革新や仮想通貨への
対応といった内容が盛り込まれています。

このうち、仮想通貨への対応が盛り込まれた(改正資金決済法)が改正され、
そこでは「仮想通貨とは何か」という定義しました。
日本が世界に先駆けて仮想通貨を定義した法律を制定したようです。

また、仮想通貨交換会社も定義したうえで仮想通貨交換会社に対して登録制
が導入されるとともに、仮想通貨交換業者にはマネーロンダリングを防ぐため、
仮想通貨を取引する人に対して、銀行並みに本人確認を徹底します。また、
顧客からの預かり資産と、事業の運営資金を別々に管理することを義務付けて
います。

さらに、仮想通貨交換業者の分別管理に伴い、仮想通貨交換会社の財務諸表監査
及び分別管理の監査が義務付けられることとなりました。

法整備によりいろいろな企業が仮想通貨事業に参入し、さまざまなサービスが
登場して、安心・安全に仮想通貨をつかうことができるようになることが期待
されます。

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■ 3.会計ルール

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改正資金決済法の改正により、仮想通貨交換会社の財務諸表監査が義務づけら
れたことを受け、企業会計基準委員会(ASBJ)は仮想通貨を利用する際の会計
ルールの公開草案、実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想
通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」を公表しました。
これは2018年4月1日以降開始する事業年度の期首からの適用され、仮想
通貨交換業者だけでなく、仮想通貨利用者にも適用されます。

では、会計処理はどうなるのでしょうか?
期末における仮想通貨の評価については、活発な市場の存在の有無により会計
処理が異なります。
活発な市場が存在する場合は、市場価格に基づく時価でBS計上し、帳簿金額
との差額は当期の損益として処理します。
一方、活発な市場が存在しない場合は、取得価額でBS計上します。ただし、
期末における処分見込価額が取得価額を下回る場合には、処分見込価額でBS計
上し、取得価額との差額を当期の損失として処理します。

そこで「活発な市場が存在する場合」、とは「継続的に価格情報が提供される
程度に仮想通貨取引所または仮想通貨販売所で十分な数量及び頻度で取引が行
われる場合と定義されています。

仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が仮想通貨の売却取引を行う場合、
当該仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額
をPLに表示します。

注記情報として以下を注記します。
・期末日に保有する仮想通貨のBS計上額合計
・預託者から預かった仮想通貨BS計上額合計
保有する仮想通貨について活発な市場の有無に区分して仮想通貨種類ごとの
保有数量とBS計上額

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■ 4.税務ルール

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最後に税務上はどうなるのでしょうか?

消費税については仮想通貨の売買取引は非課税となります。これは、仮想通貨
は海外でも売買することもあり、海外では消費税がかからない一方で国内取引
に消費税を課すと日本でピットコインを買う人が海外で買う人よりも一方的に
不利になってしまうためです。

ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却または使用することにより生じた
利益は、所得税の課税対象となります。原則として、雑所得に区分され、所得税
の確定申告が必要になります。

ここで注意しておきたいのは、「売却または使用すること」の取扱いです。
法定通貨に交換したときに利益が出ていれば課税対象されることは分かりやす
いですが、所有ビットコインでモノを購入したときに利益が出ていれば課税取引
となります。
例えば、100万円で買ったビットコインが150万円となり、150万円の
車を買ったときには50万円が課税対象となります。
これは仮想通貨で150万円の車を買ったときに一旦100万円の仮想通貨から
150万円の法定通貨に交換して利益が出たものと考えるためです。

以上のように仮想通貨の所得税の課税対象取引を把握するのが取引履歴は分か
りやすく残していくように心がけましょう。


本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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企業の豊かさとは何か?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.065━ 2017.12.6━━

【ビズサプリ通信】

▼ 企業の豊かさとは何か?

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こんにちは。ビズサプリの花房です。師走となり、年末特有のイベントや来年
に向けての仕事の整理など、多くの方は通常月よりも忙しくされることと思い
ます。さて今回のビズサプリ通信では、最近特に目立って来ている企業不正の
根本原因から、企業の社会的な役割について再考してみたいと思います。

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■ 1.相次ぐ不正問題とその問題の本質
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今年のビズサプリ通信では、東芝の不正問題について多く取り上げてきました
が、不正自体は2015年に起こったもので、今年は監査報告書が出来るかどうか
と上場維持問題にスポットライトが当たっていました。ところが、9月以降は
立て続けに、日産の無資格者による検査不備、神戸製鋼所三菱マテリアル
東レの品質データの改ざんが発覚し、日本のものづくりへの信頼性の危機の
ように取り上げられています。

いずれも今年たまたま行われたというものではなく、30年とか40年と言った前
から行われていたような証言も出て来ています。原因の究明は道半ばですが、
すでに経営トップが辞任に追い込まれるなど、その影響が徐々に波及していま
す。

このような不正がなぜ起こったかということについては、過去の事例も含めて
コンプライアンス意識・モラルの低下、経営陣・上司からのプレッシャー、隠
ぺい体質といった経営風土上の問題があった等、様々な理由が挙げられるので
すが、突き詰めるところ、多くの場合は結局「利益」の成長を続けなければな
らないという市場からの圧力によることが、多くの場合の不正問題の本質では
ないかと考えています。そうであれば、増収増益による成長を続ける企業が、
最も優れている企業であるという評価に対応するため、経営者として無理をし
てまで利益を確保する縛りを逆になくせばいいのではないか、と思うのです。


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■ 2.資本主義経済とガバナンス強化

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上記のことについては、上場会社である以上、会社を成長させることが経営者
に課せられるミッションであり、増収増益を続けて行くことが、投資家に対し
ての責任を果たすことであって、そのプレッシャーに屈して不正を働くことの
ないよう、内部統制を整備・運用し、コンプライアンス遵守の体制を強化し、
企業風土を含めた企業のガバナンスを向上させることで、不正を防げるのであ
るから、その上でやはり利益を追求して行くべきだと言った反論があることは
もちろん承知しています。

しかしながら、経済の成熟した先進国にとって、一般市民にとって食べて行く
ために稼ぐことが人生のすべてではなく、価値観が多様化し、少子高齢化が進
み、国内市場の成長が見込めない中で、マーケットがゼロサム、場合によって
は縮小を余儀なくされる厳しい状況の中で会社を成長させていかなければなら
ないのと、高度成長期に代表されるマーケット自体が成長する時代において、
それなりにやっていれば企業を成長させられるのでは、ITの技術革新などで新
たに作り出される産業は別として、旧態依然の既存産業については競争環境が
あまりに違い過ぎるように思います(事実、今回立て続けに不正が発覚してい
る企業は全て、素材産業や製造業と言った、かつて日本の中心となっていた産
業ではないでしょうか)。

資本主義経済は自転車操業であると形容されますが、それは経済全体が成長す
ることで、誰も損をせず、皆が勝者になることが大前提であるように思います。
それが一たび停滞すると、勝者と敗者が出てきて、敗者が多くなることで不況
になり、資本主義は停まってしまうという理屈です。IoTやAIと言った、今後
成長する可能性の高い分野の出現や、技術革新によって、今まで不況を克服で
きたということもあるでしょう。

しかし資本主義経済であることから、毎期の成長、言い換えると利益を計上し
続けることがあまりに強く求められる結果、その市場圧力が不正の要因となる
のであれば、逆に投資家が利益をそこまで求めなければ、不正を起こそうとす
る動機が減り、その結果ガチガチで窮屈なガバナンスでなく、ほどほどの健全
なガバナンスで済むような気がいたします。とは言っても資本主義経済よりも
いいと考えられる経済システムはないのが現状ではあるのですが。

グローバル化がどんどん進展し、未開拓地域がなくなる一方、人間の生活には
消費活動が必要ですから、皆が豊かになり人口が増えると、物的な資源が徐々
に枯渇していきます。このような問題に対応するため、大量生産・大量消費で
はなく、循環型社会への取り組みが色んな形で試されています。シェアリング
エコノミーの提唱もその問題解決への取組みの1つでしょう。


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■ 3.利益が全てではない

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それでは投資家は利益以外に何を企業に求めればいいのでしょうか?利益は、
企業の決算書の中でも代表的な指標であり、決算書に関する情報を財務情報と
分類します。一方、有価証券報告書やアニュアルレポートの中には、財務情報
以外の情報があり、これを財務情報に対して非財務情報と分類します。非財務
情報は、経営者による財政状態・経営成績の分析、経営理念や経営ビジョン、
経営者や従業員の情報、中期経営計画と言ったものがあります。また古くは
環境報告書と言われ、近年ではCSR報告書から、サスティナビリティレポート
と形を変えて来ていますが、主に環境問題や社会問題に対しての企業の社会的
取り組みをまとめたものです。

最近では、この財務情報と非財務情報を別個のものではなく、1つにまとめた
「統合報告」を作成することが、ヨーロッパ企業を中心にトレンドとなってい
ます。企業としては、『財務情報以外にも社会に提供する価値を含めて、企業
価値を含めて欲しい』というメッセージと理解しています。実際、機関投資家
の中には、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)
の頭文字を取ってESG投資と呼び、そこへの取り組みが優良な企業に投資して
行こうというという考え方も生まれています。ただ、環境問題や社会問題に対
する取り組みが財務情報と結びつきにくく、また過去・現在のみならず将来に
影響するものでもあるため(財務情報は基本的に過去情報)、投資効果として
判断しづらいと言った課題もあるので、投資指標として『利益』を超えるもの
にはなっていません。

少し前になりますが、ブータンで重要視されている指標として、GNPならぬGNH
(=Gross National Happiness)が話題となりました。国民1人当たりの幸福を
最大化することで、社会全体が幸福となるとの考え方から生まれた指標です。
コンセプトそのものは大変理想的なものですが、最近ブータンで問題となって
いるのは、『幸せ』の定義が揺れていることだと言います。当初近代的な物を
持っていない状況では、皆が欲しい物は共通で経済の成長とともにそれらが手
に入り幸福度も上がっていったのが、ある程度の物が普及し、経済格差が徐々
に出てくると価値観も多様化し、それぞれの『幸せ』の尺度に幅が出てきてい
るようです。これは、高度成長期前後の日本と同じではないでしょうか。

以前高校生時代の夏休みの課題図書で、『豊かさとは何か』(暉峻淑子 著、
1989年 岩波新書)という本を読んだ記憶があります。漠然とですが、本当に
幸せなのは物質的な豊かさではなく精神的な豊かさなのだというような話だと
漠然とは感じたものの、未熟な高校生の経験ではからは、本当に深い意味では
理解できず、難解な本だったように思います。1989年と言えばバブルの真っ只
中にあって、その中で30年も前にこの本を書いた著書の社会の洞察力は、今更
ながら凄いと感じます。

今年の11月はちょうど北海道拓殖銀行の破綻、山一証券の自主廃業から20年の
節目ということで、雑誌等で関連の記事が多く書かれています。詳細はそれら
の記事に譲るとして、やはり根本的な原因は、利益を追求するあまり無茶をし
た、ということでした。

ここで改めて企業の社会的な役割について、大学時代に学んだことを思い返し
てみると、企業には多くの利害関係者(ステークホルダー)が存在して、株主
だけでなく、従業員、顧客、債権者、取引先、政府、地域社会などとお互いに
助け合うことで企業は存続できているのであり、そのための利害調整をする役
割を、財務会計が果たしている、と学びました。つまり、企業は株主や投資家
だけを見るのではなく、それ以外の利害関係者にもきちんと向き合わなければ
ならないところ、最近特に、投資家の方を向く傾向が強くなっています。

投資家からみれば、人件費、仕入、税金、金利、いずれもコストですが、それ
らを受け取る側に取ってみれば「利益(あるいは収入)」であって、売上が
一定の下では、投資家の『利益』を増やそうとすると、その他の利害関係者へ
の分配を減らさなければなりません。果たしてそれが社会的にいいことなのか、
それを改めて考えなければならないと思います。先程の著書のタイトルを借り
ると「企業の豊かさとは何か」を考えた場合、それは投資家の懐を潤すことだ
けではないはずです。そのような観点から、企業活動の責任とその果たすべき
役割を見直すべき時代に来ており、持続可能な社会実現のためには、個々の企
業そのものの持続可能性を『利益』以外の部分でも高めて行く必要があります。

ステークホルダーとの関係性が投資家偏重になるのではなく、バランスの良い
関係を再構築することが、今後の健全な企業ガバナンスではないかと考えます。

ビズサプリグループでは、上場支援、企業再編、M&A、PMIにおける各種支援の
他、内部統制やガバナンス向上支援も行っておりますので、ご興味ありました
らご相談頂ければと思います。
http://www.biz-suppli.com/menu.html?id=menu-consult

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

 

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