株式会社Bizsuppliのメルマガバックナンバー

会計を中心とした実力派プロフェッショナル集団であるビズサプリのメンバーが、旬のネタや色々な物事への洞察を記載したメルマガのバックナンバーです。

クラウドファンディングの会計処理

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.110━ 2020.2.14━━

【ビズサプリ通信】

▼ クラウドファンディングの会計処理

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皆様、こんにちは。ビズサプリの庄村です。
新型コロナウィルスによる肺炎の死者が1000人を超えたようですが、今後
は二次感染や三次感染が予想されるため、十分な感染対応が必要となってきます。

今回のメルマガでは、昨今、新聞やネットなどでよく目にするクラウドファン
ディングに焦点を当て、クラウドファンディングに関する会計処理や税務処理の
ポイントを紹介していきます。これからクラウドファンディングでの資金調達
を検討している法人や個人の方はぜひ参考にしてみてください。

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1. クラウドファンファンディングとは
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インターネットを通じて不特定多数の人から資金を調達するクラウドファンデ
ィング(以下、「CF」という。)が急拡大しています。
CFは、個人やベンチャー企業だけでなく、地方自治体や上場会社でも活用され、
新たな資金調達の手段となっています。
具体的にはCF主催者はインターネット上の「クラウドファンディング」とい
うサイトに自社の商品やサービス内容を掲載し、商品やサービスのアピールを
行います。そして、インターネットを見た不特定多数の方がその商品やサービ
スを理解したうえで小口の資金を支援するという仕組みです。

CF主催者にとっては、製品開発やイベントの開催にかかる多額の資金をCFに
より不特定多数の人から資金提供を呼びかけ、一定額の資金が集まってプロジ
ェクトが実行されるので、資金調達のリスクが低減されます。また、自社の商
品やサービスを一般大衆にアピールできるというメリットがあります。

CF支援者にとっては、小口の出資ができ、投資型の場合には将来のリターンが
期待できるとともに、社会貢献活動へ参画できるというメリットがあります。

CFにはCF支援者に対するリターンの形態により寄付型、売買型、投資型に分
類され、次以降で分類ごとの会計処理や税務上のポイントを言及します。

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2. 寄付型CFの会計処理及び税務上のポイント

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寄付型は、CF支援者にリターンがないタイプのCFです。
被災した自治体や発展途上国の支援をしているNPO法人など公益的な活動を行う
団体に対する資金提供であり、社会貢献の高いプロジェクトで利用されるCFです。
募金のような感覚で行われます。

寄付型CFの会計処理はCF主催者及びCF支援者が個人か法人かで会計処理や税
務上のポイントが異なります。
1.個人⇒個人の場合
 CF主催者である個人は資金の贈与を受けたこととなり、調達した資金に個
 人の贈与税がかかってきます。
 寄付先である個人のCF主催者が寄付金控除の対象先とならないため、確
 定申告での寄付金控除にもならないのでCF支援者である個人は年末調整
 や確定申告も必要ありません。

2.個人⇒法人の場合
 資金調達者であるCF主催者(法人)は贈与を受けたこととみなされ、受贈
 益が発生しその分の法人税が課されます。
 また、個人のCF支援者は、所得税法上の特定寄付金に該当すれば寄付金控除
 で所得が低くなりその分所得税が軽減されます。

3.法人⇒個人
 資金調達者であるCF主催者(個人)は一時所得扱いとなり、その分の所得
 税が課せられます。
 法人たるCF支援者は寄付金として費用(損金)計上し、その一定限度額分
 の法人税が軽減されます。

4.法人⇒法人
 資金調達者であるCF主催者(法人)は②と同様贈与を受けたこととみなさ
 れ、受贈 益が発生しその分の法人税が課されます。
 法人たるCF支援者は③と同様に寄付金として費用(損金)計上し、その一定
 限度額分の法人税が軽減されます。

なお、寄付型の場合には、消費税等は非課税の取引となります。

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3. 売買型CFの会計処理及び税務上のポイント

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売買型は、CF支援者に金銭以外のリターンがあるタイプのCFです。
CF支援者が商品やサービスの開発などに必要な資金を提供し、CF主催者は出来
上がった自社の商品やサービスをリターンとして提供するもので、最も利用さ
れているCFです。

売買型のCFは通常の売買と同様の処理となります。
CF主催者は調達資金の受取時点で「前受金」で計上し、商品またはサービスを提
供して時点で「前受金」を「売上高」に振り替えます。
一方、CF支援者の処理ですが、CF支援者が個人の場合には、税金の支払や確定申
告の必要もありません。
CF支援者が個人事業主や法人の場合には、商品やサービスが事業に必要なもので
あれば資金の提供時点で「前渡金」で計上し、商品またはサービスの受領や享受
があった時点で「前渡金」を経費として振り替えます。

なお、売買型の場合には、消費税等に関しては課税取引となります。

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4. 投資型CFの会計処理及び税務上のポイント

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投資型は、CF支援者に金銭的なリターンがあるタイプのCFです。
さらに投資型は貸付型、ファンド型、株式型と3つの種類に分類できます。
投資型のCFは貸金業者登録や金融商品取引法の規制があるため、その利用は少な
いようです。

貸付型の会計処理は、通常の金銭消費貸借の処理と同様となります。
CF主催者は金銭の借入にあたるため「借入金」計上するとともに、CF支援者に
金利に見合った借入利息を支払います。
一方、CF支援者は資金提供により「貸付金」計上するとともに、CF主催者から
利息を受け取ります。

ファンド型と株式型の会計処理は、通常の新株発行と同様の処理となります。
CF主催者は資金調達により「資本金(資本準備金)」を計上し、決算が好業績
であれば、CF支援者に配当金や分配金の支払をすることがあります。
一方、CF支援者は資金提供で投資有価証券等の投資勘定を計上し、業績が良ければ
配当金や分配金を受け取ることができます。

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ビズサプリグループでは、公認会計士や税理士、事業会社での経験豊富なコン
サルタントによる業務改善支援、M&A支援、システム導入のコンサルティング
他、グループ会社で税務申告業務、税務顧問、税務DD等、税務業務も行っており
ますので、ご興味ありましたらご相談頂ければと思います。
http://www.biz-suppli.com/menu.html?id=menu-consult

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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5G導入元年

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.109━ 2020.1.31━━

【ビズサプリ通信】

▼ 5G導入元年

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皆様、こんにちは。ビズサプリの花房です。新年となり、早1ヶ月が過ぎよう
としています。昔から1月は行く、2月は逃げる…、と3月までは何かと行事が
多いのであっという間に時が経つことを先人は上手く言ったものですが、ITの
世界ではドッグイヤーと称されるように技術進化が激しく、そのITが組み込
まれた世の中で生活する我々の時間感覚が益々早く感じるようになるのも当然
なのではないかと思います。

そして今年最も注目度の高いイベントは言うまでもなく、東京五輪です。
世界の人々が関心を寄せ、また日本への多数の来日が期待される中で、長野
五輪から22年ぶり、夏季五輪としては56年ぶりの開催となる東京五輪は、日本
の技術を世界へ発信するまたとない機会でもあります。前回の東京五輪では、
カラーテレビが一般家庭へ普及するきっかけとなり、インフラ整備では東海道
新幹線が高速鉄道の幕開けとなりました。今回の東京五輪を契機に普及が進む
技術の目玉の1つは、5G(第5世代移動通信ネットワーク)サービスの開始です。

5Gは現行規格の4G(LTE)に比べて、「高速・大容量」(LTEの20倍)、「多
接続」(LTEの10倍)、「低遅延」(LTEの10分の1)という3つの特徴がある
ようです。その特徴を生かして、今回の東京五輪では、数万人が集まるスタ
ジアムで多数の機器で同時に高速通信が可能な5Gシステムを使って、多視点
の映像を切り替えるマルチアングル、好きなタイミングでリプレイ映像を見る、
3DやVR、ARでの観戦等、によりライブ感、一体感のある映像、1人1人にパー
ソナライズされた観戦方法を可能とするようです。また体操5種目では3Dレー
ザーセンサーによる自動採点システムが導入されたり、競技場や選手村では
最新の顔認証システムが導入されるようです。

これらを支える通信技術が「高速・大容量」、「多接続」を実現する5Gです
が、もう1つの特徴である「低遅延」の実現により、新たなビジネスの契機と
なります。その一例が、患者と医師が遠く離れていても手術を可能にする「遠
隔医療」であり、また内蔵されたコンピュータの遠隔操作により交通事故を防
ぐ「自動運転」技術になります。5Gが本格運用されると、これらも遠い未来の
話ではなくなるでしょう。

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1. 2020年度税制改正の大綱①5G導入促進税制

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昨年12月20日、2020年度税制改正大綱が閣議決定されました。これは翌年度に
施行される税制改正の概要をまとめたもので、その後各省庁が関連する税制改
正のポイントを説明する資料を発表し、2月初旬頃には財務省税制改正法案を
掲載し、3月末の国会承認を経て、4月1日から改正法が施行される、という流れ
になります。

5Gの整備を早期に円滑に実現するためには、全国に十分な基地局を設置する必要
があります。そこで5G基地局、及びローカル5Gと呼ばれる、企業等が自前で小
規模の5Gの通信網を構築するための設備投資に対して、税額控除(15%)又は
特別償却(30%)ができるようになります(5G導入促進税制)。

政策的な税制ではこの他、高い生産性が見込まれる事業を行う等の目的で、設立
10年未満の特定の事業活動を行うベンチャー企業に1億円以上出資の払い込みを
する場合、その取得価額の25%を損金算入できる制度が創設されました(オー
プンイノベーション投資促進税制)。これは、事業会社が自前の開発にこだわ
ることなく、ベンチャー企業へ出資することで新たな分野への投資を後押しする
ためのものです。

また連結納税がグループ通算制度に移行することになります。すなわち、従来の
企業グループ全体を一つの納税単位とする現行制度に代えて、企業グループ内の
各法人を納税単位としつつも、損益通算等の調整を行う仕組みになります。これ
まで、従来の連結納税制度の計算が煩雑で、また税務調査後の修正や更正等に
時間がかかりすぎるため、導入を見送っていた企業グループもありました。
そこで、完全支配関係のある企業グループで損益通算のメリットは維持しながら、
グループ通算制度に移行後は、各法人が納税単位として税額計算を行い、その後
修正や更正があっても、グループ内の他の法人の税額計算に反映させないことに
なり、手続の簡素化が図ることができます。

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2. 2020年度税制改正の大綱②キャッシュレス化に対応した帳簿保存の見直し

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また、法人税法そのものではありませんが、前年度に続いて電子帳簿保存制度の
見直しがありました。具体的には、企業が電子取引を行った場合の、請求データ
や受領データの保存方法として、次の2つの方法が新たに認められることとなり
ました。

1つは、従来は、(請求書等のデータに)発行者側がタイムスタンプを付したと
しても、さらに受領者側でもタイムスタンプを付する必要があったものが、不要
となりました。もう1つは、(請求書等のデータの)受領者が自由にデータを改変
できないシステム(例えばクラウド会計システム)を利用して電子的に受け取っ
た請求書等のデータをそのまま保存する場合にもタイムスタンプの付与が不要と
なり、いずれも処理が現行より簡略化されます。

現在、クラウド会計を中心に、銀行データや、クレジットカード、プリペイド
カードデータから自動仕訳を起票する機能がありますが、その場合でも請求書
原本や領収書の原本を紙ベース、あるいはPDF化してタイムスタンプを付して、
別途保管する必要があります。今回の改正により、銀行取引やキャッシュレス
決済のデータが一気通貫で直接会計システムに登録され、一度登録されたデータ
の改変が出来ないシステムを採用している場合は、紙ベースの原本や、タイム
スタンプでのPDF化は不要となります。

これにより、紙の領収書の受領や保管の作業、原始証憑と起票データの照合等
が原則不要となるため、クラウドによって事務処理が簡略化されている現実に
即して、税制上も証憑類の保存形態を改めたものと言えます。

帳簿保存の在り方を見直す単純なことではありますが、キャッシュレス化と
働き方改革(=生産性の向上)、ペーパーレス化が同時に図れるという、うま
く行けば1粒で3度美味しい改正ということになります。その意味で、この改正
の効果は思いの外、インパクトは大きいと思います。但し、日付と金額だけ
では、損金性を説明できないため、誰と何のために支出した経費であるかの
摘要等への追記は必要になると思います。

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ビズサプリグループでは、会計士、事業会社での経験豊富なコンサルタント
よる業務改善支援、M&A支援、システム導入のコンサルティングの他、グループ
会社で税務申告業務、税務顧問、税務DD等、税務業務も行っておりますので、
ご興味ありましたらご相談頂ければと思います。
http://www.biz-suppli.com/menu.html?id=menu-consult


本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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「強いチーム」になるために

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.108━2020.1.15━

【ビズサプリ通信】

▼ 「強いチーム」になるために

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ビズサプリの辻です。
2020年の年が明けました。少し遅くなりましたが、明けましておめでとう
ございます。今年が皆様にとって素晴らしい年になりますように。

さて、今年は何と言っても東京オリンピックの年です。メインスタジアムで
ある国立競技場も完成し、チケットの抽選も着々と進み(全く当選する気配は
ありませんが…)、ポスターのデザインも発表され、徐々に近づいてきている
感じをひしひしと感じます。

スポーツの世界で「強くなるために必要なこと」「強いチームになるために
必要なこと」は、ビジネスに通じる事が非常に多く、監督や選手の名言や格言
は多くの書籍やビジネス雑誌で紹介されています。今日はその中で「強いチー
ム」についてお話ししていきます。

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■ 1.ONE TEAM

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今年の東京オリンピックに先立ち、2019年はラグビーワールドカップで大変
盛り上がりました。私自身もすっかり「にわかラグビーファン」となりテレビ
にくぎ付けでした。そのラグビーの日本代表チームのスローガンであった
「ONE TEAM」という言葉は、昨年の流行語大賞にもなりました。その言葉が表す
「一丸となって目標に進む」という概念は、ビジネスにも大変通用しやすく、
急に「ONE TEAMになって頑張ろう!」といった使い方をされているといった
ことがビジネス雑誌の記事でも紹介されていました。
ただ、当たり前のことですが、「ONE TEAMになろう」と掛け声をかけたから
といってすぐにONE TEAMとなれるわけでもなく、それどころか、「ONE TEAM
すべてを犠牲にしてついてこい」「ONE TEAMだからリーダーのオレに反論す
るな(又はそれに近い言葉)」というようなニュアンスで使っていると逆効果
となってしまいます。
そもそもリーダーについていくだけのチームは強くなれません。チームや組織
には強く優秀なリーダーがいることは重要ですが、それだけではリーダーの力量
でチームや組織の限界が決まってしまいます。チームや組織にいる各個人が
その強みを心置きなく発揮できるような信頼関係や関係性を築くことで、チーム
や組織であることの相乗効果を発揮し、それでこそ「ONE TEAM」としての意味
を成すことができるのです。前述のラグビーであればスピード、瞬発力、突破力、
キック力等各選手が持つ強みをお互いが理解し信頼し、尊重をしながらリーダー
の戦略に沿って力を発揮していく状態になるでしょうか。
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■ 2.各個人の個性を生かすには

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それではチームや組織にいる各個人がその強みを心置きなく発揮できるような
信頼関係や関係性は何に裏付けられて築かれていくのでしょうか。それには
心理的安全性」という要素があります。心理的安全性とは、「チームにおいて、
自分が発言した内容で、それよって恥じたり、拒絶したり、罪を与えたりする
ことがないといった確信を持っているような状態」のことであり、心理的安全
性が保たれた組織とは「組織にいる全員がそのように感じている状態」を指します。
もともとはハーバードビジネススクールエドモンドソン教授が論文の中で
「手術に成功している心臓外科チームにある要素」の中の一つとして心理的
全性を指摘しており、その数年後には「恐怖は学習意欲を阻害する」といった
論文で心理的安全性がチームの成長に必須の条件であると主張したものです。
それが最近、Googleが自身の生産性を向上させるプロジェクトにおいて「成功
しているチームの要件」として効率的に業績を上げているチームに共通する
特性を抽出して分析する中で、業績が優秀なチームの特性は「メンバーの能力
や働き方によって生産性が左右されるのではなく、他者への心遣いや、どの
ような気づきも安心して発言できるという心理的な要素が、生産性に影響して
いる」と発表し、再度注目を浴びるようになった概念です。
皆さん自身の経験を鑑みても「ここのチーム(部署・メンバー)では、自分
は信頼されており、何を言っても尊重し、受け止めてもらえる」という時と
「ここのチーム(部署・メンバー)では、何かまずい事を言ったら批判される、
バカにされる」という時と、どちらが他の人の話にしっかり耳を傾けた上で、
自分の意見を落ち着いて発言する事ができるか、そしてアイディアや懸念事項
を適切に正しく伝える事ができるかは明らかですよね。
皆さんの職場や、皆さんがリードする会議は心理的安全性が保たれているで
しょうか。心理的安全性を保つための工夫は何かされていますでしょうか。

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■ 3.心理的安全性を保つには
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心理的な安全性を保つためには具体的には何をすればいいのでしょうか。
心理的安全性を高めるために必要なこと」とWEBで検索すると様々な対処
法が出てきます。一言でいうとコミュニケーションの質を高めるといったこと
が主流の対処法のようです。例えば、非常に昭和的ではありますが、「社内運
動会や飲み会の再評価」といった職場外でのコミュニケーションの充実を図る
といったことを書かれた論文や、会議の場で意図的に反論を言う役割である
「悪魔の代理人(Devil’s Advocate)」を設けて、反論と議論を重ねるといっ
た会議手法を紹介したもの等様々な対処法が載っています。
但し、注意をしなければならないのは、他社で成功した手法やネット検索でヒット
したコンサルタントが提唱している手法を「そのまま当てはめる」と逆効果と
なる可能性もあるということです。
心理的安全性を研究した調査では、職業や職位によって心理的安全性の感じ方は
異なり、また、組織のダイバーシティーの進み度合によっても心理的安全性に
よってもたらされる影響の度合いが異なってくるといった結果が出ています。
RMS message 2017年11月 組織の成果や学びにつながる 心理的安全性のあり
方 レビュー1 心理的安全性の効用と 今後の研究課題より抜粋) つまり、
Googleでうまくいった取組がそのまま自社でもうまくいくわけではないという
ことです。むしろ形式だけを真似することで「カーゴカルトの罠」に陥り、
逆効果ということになりかねません。チームや組織のどこにどんな問題点があっ
て何をどう変えていけばいいのか、実践しながら考えていくことが必要です。

ビズサプリでは、組織やチームの問題点をアンケート形式で探る従業員満足
調査や意識調査も人事コンサルタントと連携して実施しています。
お気軽にご相談下さい。

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年末調整と給与計算について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.107━2019.12.20━
【ビズサプリ通信】
▼ 年末調整と給与計算
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ビズサプリの泉です。
師走となり令和元年も終わりに近づき、来年はいよいよ東京オリンピックの年です。特に今年は秋が短かったような気がしており、毎年行事となっていた花粉症も気づかないまま冬になりました。
私の業務対象となることが多いベンチャー業界では、資金調達について一部ピークを越えたという意見があるものの、相変わらず景気のいい話はよく聞きますし、IPO準備やM&Aのサポート業務も依然として堅調です。独立して約3年、来年40歳となることから今後のキャリアパスについて色々考えることが多くなりました。
さて、今回はこの時期におけるトピックである年末調整と給与計算について考えてみたいと思います。
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■ 1.年末調整
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一般的な会社では毎月の給与計算を行うともに、年末に年末調整を行うこととなります。年末調整とは毎月の給与支給時に源泉徴収した所得税について、改めて年間で再計算を行い適切な金額となるように過不足額を計算、精算することです。
通常のサラリーマンは毎月の源泉徴収額のほうが多いため、還付されるため臨時のボーナスと感じることも人もいるかと思います。
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■ 2.給与関連の年末年始業務
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従業員からすると、給与関連の年末業務は年末調整のみにみえますが、会社の労務担当者としては実は年末年始に給与関連の業務が色々あります。<年末>年末調整住民税の納期の特例による納付(対象会社の場合)<年始> 法定調書の提出(税務署) 給与支払報告の提出(市区町村) 源泉所得税の納期の特例(対象会社の場合)による納付 支払調書の送付(義務ではない)
労務部門がある会社であればまだいいのですが、ベンチャーの場合、労務専門部門はなく管理部門に担当者1名の場合もあり、年末年始は大変あわただしくなります。
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■ 3.外部への委託
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社会保険、給与関連及び税務関連の業務は一定の専門性が必要となり、手続き周りは外部の専門家に委託する会社も多くあります。特に確定申告を税理士にお願いすることが多いため、税理士と顧問契約している場合は、年末調整を税理士に依頼することもあるかと思います。
給与計算、社会保険の手続きは社労士、確定申告、年末調整は税理士というのがよくあるパターンです。ただ、給与計算と年末調整は密接に結びついており、そこを分けてしまうと、社労士:給与計算(年末調整前)→会社→税理士:年末調整→会社→社労士:給与計算(年末調整後)→会社:支払
といった煩雑なフローになってしまいます。なぜ、こんなことになってしまっているのでしょうか。
従来、社労士及び税理士の業務範囲が不明確であったところ、平成14年全国社会保険労務士会連合会日本税理士会連合会が業務範囲を明確にするため、「税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲に関する確認書」を締結しました。
その確認書において、税理士は社会保険関連の届け出はできず、社労士は年末調整ができないことが明確化されました。そのため、このような煩雑なフローとなっています。もちろん、給与計算は税理士でもできるため、給与計算及び年末調整を税理士にということも多いのです。ただ、ある程度入退社の多い会社だと月額変更届などの社会保険の諸手続きが発生しますので、給与計算を社労士に依頼するメリットも大きいと思います。

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■ 4.町の税理士
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私は税理士でもありますので、改めて振り返ってみたところ、一般的に従来型の税理士のクライアントとの関わり方は次のようなものです。・自計化されている会社:月1往訪で2時間程度打ち合わせ、様子伺い・記帳代行している会社:領収書、請求書を送ってもらって事務所で記帳、月1  往訪で2時間程度打ち合わせ、様子伺い
ただ、経営者が求めているのはこの業務なのでしょうか?中小企業にとって町の税理士は社外管理部長であり、経営者が経営に専念するためのサポートをするのがあるべき姿と考えています。特に今後AI化が進み仕事がなくなるといわれる中、単なる記帳やチェックではなく専門性を高めるとともに業務改善も含めたサポートを行っていくべきだと個人的には考えています。

ビズサプリグループでは、通常の税務業務に加え業務改善に関するコンサルティング業務も行っておりますので、何かお役に立てることがありましたらご相談ください。
本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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報酬ガバナンス改革の 進め方について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.106━2019.12.5 ━

【ビズサプリ通信】

▼ 報酬ガバナンス改革の進め方

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ビズサプリの久保です。国会は「桜を見る会」で紛糾していますが、その最中
の12月3日に会社法改正案が参議院で可決成立しました。改正会社法には、
役員報酬に関する改正が盛り込まれています。今回は、報酬ガバナンス改革の
進め方についてお話してみたいと思います。

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■ 1.会社法の改正と業績連動報酬

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改正会社法は、上場会社に社外取締役を義務付ける法案であると報道されて
いますが、役員報酬に関する改正も盛り込まれており、取締役報酬の決定方針
決定の義務化やその開示義務などが規定されました。有価証券報告書において
役員報酬の決定方針の開示が求められるようになっていますので、これについ
ては、上場会社ではすでに対応済みのはずです。ただ、この方針は取締役会で
の承認事項になりますので、その対応は必要になると思われます。

法務省の法制審議会が今年2月に答申した会社法改正要綱では、役員の個人別
報酬額の決定について、代表取締役に一任する場合は株主総会の決議が必要と
されていました。これは、日産自動車事件を受けたものでしたが、産業界から
の反対があり、法案に盛り込まれないことになりました。社長一任の会社が
実態として多いことが反対の原因と思われます。

従来は、固定報酬と年次賞与の2本立ての報酬が普通でした。その場合、報酬
方針を検討する必要性はほとんどありません。最近は、業績連動報酬を導入
する上場会社が増えてきたことから、その方針を決定し、それを開示させる
ことによって、株主を保護しようというのが法制化の趣旨と考えられます。

上場会社のうちの大会社については、社長の報酬が1億円近いという報道も
あり、この改正は、今後の役員報酬の高額化を見据えたものとも考えられます。

その一方で、業績連動報酬の導入やその拡大によって、「攻めのガバナンス」
を強化してほしいという政府の方針があります。

コーポレートガバナンス・コードでは、「経営陣の報酬については、中長
期的な会社の業績や潜在的リスクを反映させ、健全な企業家精神の発揮に
資するようなインセンティブ付けを行うべきである」(原則4-2)としています。

上場会社がコーポレートガバナンス・コードに準拠(コンプライ)するため
には、役員報酬において業績連動報酬的な要素が必要ということになります。

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■ 2.役員報酬を変えたら経営が良くなるのか

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会社創業以来、役員報酬は固定報酬と年次賞与の組み合わせで、役員個人別
の配分は社長が決めるというやり方を続けて来た会社も多いと思います。
そもそも役員報酬の支給基準を変え、業績連動報酬を導入したからといって、
会社の「稼ぐ力」が向上するのでしょうか。

いくら良い経営戦略を立案したとしても、それを実行するのは人間です。
経営目標達成のために、やる気を持って熱心に取り組む人がいない限り、
経営戦略は絵に描いた餅に終わります。そういう点では、役員報酬という
ニンジンをぶら下げたほうが、役員のやる気が向上するということは言える
と思います。

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■ 3.固定報酬だけでも業績好調の会社がある

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役員報酬の考え方についてユニークな事例として、ヤクルト本社があります。
同社は、この10年間ほぼ毎年増収増益を続けています。

ヤクルト本社は、業績連動報酬を支給せず、固定報酬だけを支給しています。
これについて、コーポレートガバナンス報告書において、次のようにエクス
プレイン(説明)しています。

「当社は、短期的な利益偏重になることなく、グループ内外に対する『代田
イズム』の継続的な浸透を通じて、持続的な成長を図れる環境を構築してい
くことが重要だと考えています。その一環として、報酬体系についても同様に、
一時的な利益変動に連動させる報酬体系ではなく、『代田イズム』を実現する
ために安定的な固定報酬体系を採用しています。」

実は、同社は平成20年に業績連動報酬を導入していますが、平成22年にこれ
を廃止し、固定報酬に戻しています。

報酬ガバナンス改革は、経営戦略を成功させるための一つのツールです。経営
戦略のために助けにならないのであれば、それに時間を掛ける必要はないと
思います。ヤクルト本社のように、年功に基づいた固定報酬で十分という考え
方もあります。

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■ 4.役員賞与は、業績連動報酬か

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ところで、役員賞与は、企業業績によって変動するので、業績連動報酬の一種
と考えてよいでしょうか。

役員賞与は、利益配当と同じように、利益が出たらその一部を役員に配分する
という考え方で支給されるのが普通です。一方、業績連動報酬は、役員各人の
業績目標の達成度に応じて支払う報酬です。

たとえば、会社全体としては減益になっていたとしても、業績目標を達成した
取締役は、追加的な報酬を受け取ることができるというのが業績連動報酬です。

このため、役員賞与は、業績連動報酬とは言えないということになります。
ちなみに、ヤクルト本社は固定報酬のみで、役員賞与さえ支給していません。

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■ 5.役員報酬を変えるだけでは効果がない

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コーポレートガバナンス・コードでは、業績連動報酬の対象を執行役員以上の
経営陣としています。

日本企業の場合、社員が昇格して役員に就任することが多いので、その報酬は、
社員の給料と無関係に決めることができません。コーポレートガバナンス
コードが業績連動報酬を導入せよと言っても、社員から役員に昇格したら急に
業績連動報酬が支給されるというのは、一貫性がありません。

社員の時代から、業績目標に基づくインセンティブ給与が支給されており、
それが役員になっても続くようにすることで、首尾一貫した報酬体制になります。

業績連動報酬をもらえる役員が、給料が固定的な社員を叱咤激励したとしても、
社員はシラケるだけではないでしょうか。その逆の場合も、ちぐはぐな状況に
なります。

すなわち、役員に業績連動報酬を導入するということは、役員報酬だけの話で
はなく、社員と役員全員に業績連動給与・報酬をどのように導入するかどうか
を決めるということと同義と考えてよいと思います。社員はそっちのけで、
役員だけに業績連動報酬を導入しても、効果を期待できません。

業績連動報酬の効果がない、当社のカルチャーには馴染まないということで
あれば、報酬設計の検討はやめた方がよいと思います。反対に、社員・役員の
給料・報酬を成果主義の業績連動にしたら、各人のやる気に効果がありそうで
あれば、給料・報酬の設計にも着手すべきと思います。

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■ 6.最初は株主対策でよい

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コーポレートガバナンス・コードが徐々に厳しくなり、欧米型のガバナンスが
求められてくることから、形だけでもコードを遵守しておけば、機関投資家
はじめとする株主から文句を言われることがないだろうという考え方もあります。

ヤクルト本社のように、会社の方針をしっかり説明できるのであれば、業績
連動報酬を導入しなくても株主や投資家は納得すると思います。また、毎年
業績向上の結果が出せていれば、株主からの文句も出ないかもしれません。
そうでない場合には、なぜ報酬ガバナンス改革を実施しないのかと、株主や
投資家から問われることになると思います。

コーポレートガバナンス・コードの諸原則が自社に合うのかどうかは、慎重に
吟味する必要があります。しかし、やってみないと分からないということで
あれば、やってみる価値はあるはあると思います。

ヤクルト本社のように、一度、業績連動報酬を入れてみたけれど、自社に合わ
ないということで止めたということであれば、納得感があります。

急激な改革は必要ないですし、返って弊害もあります。業績連動報酬について
は、少額の業績連動報酬を導入し、報酬を検討する報酬委員会については、
社内取締役が委員長となる方法から始めたらよいと思います。

これにより、とりあえずは「コーポレートガバナンス・コードの各原則を実施
しない理由」のエクスプレインが不要になります。おそらく、このような考え
方で形から入った会社も多いと思います。

この方法は、形だけで実質が伴わないため邪道である、という意見があるかも
しれません。しかし筆者は、少しやってみることは非常に大事であると思い
ます。やってみれば、そのやり方の良し悪しが分かってくるようになります。
また、業績連動報酬や報酬委員会も違和感がなくなってくると思います。

そうなれば、もう一歩進めて業績連動報酬の金額や設計について検討してみる
ことができます。また、役員個人別の報酬の決定に社外取締役が関与すること
に抵抗感がなくなってくれば、委員長を社外取締役にするという決断ができる
ようにもなるでしょう。

反対に、大した効果が期待できないということが分かれば、ヤクルト本社
ように、その業績連動報酬も報酬委員会の設置も止め、コーポレート・ガバ
ナンス報告書ではエクスプレインすればよいと思います。そのときは、しっか
りとした根拠をもって説明することができるようになると思います。

今回もビズサプリ・メールマガジンをお読みいただきありがとうございました。
ビズサプリでは、役員報酬設計や報酬ガバナンスのご相談をお受けしています。
お気軽にお問い合わせください。

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改めて税について考える

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.105━ 2019.11.20━━

【ビズサプリ通信】

▼ 消費税が10%になりました。

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皆様、こんにちは。ビズサプリの花房です。消費税が8%から10%に変わり、
1ヶ月半が立ち、景気後退を懸念する声がある一方で、その対応策として5%還
元や10%還元が叫ばれ、売上を維持拡大しようと、小売り・外食業界の方はし
ばらくは大変な対応が続くと想定されます。キャッシュレス決済のポイント還
元については政府の支援策で予算が付いていますが、対象となる決済に対する
還元は1日当たり10億円分に上っているようで、予算が来年3月末までに足りな
くなる可能性も言われています。また、キャッシュレス端末が間に合わなかっ
たとか、システム対応で消費税がゼロになってしまった等、トラブルも少なか
らずあるようで、消費マインドの回復やキャッシュレス決済の普及等、消費税
10%が当たり前のものとして定着するまでには少し時間がかかりますね。

元々消費税というのは、今後少子高齢化で現役世代の減少とともに減るであろ
所得税から、消費全般に薄く広く課税する間接税とすることで税収を維持し、
少子高齢化で必要となるであろう社会保障費の財源を確保する目的で導入され
ています。今では、消費税は社会保障の充実のため、年金・医療・介護・少子
化対策に用いるということで、目的税化されています。

世間一般には、今回の消費増税に関して、食料品については軽減税率が実施さ
れたことで、みりんとみりん風調味料の違いや、栄養ドリンクでも医薬品等と
清涼飲料水になるもの、テイクアウトと店内飲食で適用される税率が違うと言
った、軽減税率の範囲に注意が行きがちですが、そもそもの目的である消費税
が実際どのように使われているのか、同じ社会保障費の財源でも、健康保険料
や年金保険料も近年1人当たりの負担は増え続けており、「隠れ増税」と言わ
れていることにも目を向け、社会保障費の財源だけでなく、その使途にも注意
を払って行かなければならないと感じるところです。

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■ 1.株主第一主義の見直し

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先日の日経新聞で、『米主要企業の経営者団体、ビジネス・ラウンドテーブル
は19日、「株主第一主義」を見直し、従業員や地域社会などの利益を尊重した
事業運営に取り組むと宣言した。株価上昇や配当増加など投資家の利益を優先
してきた米国型の資本主義にとって大きな転換点となる。米国では所得格差の
拡大で、大企業にも批判の矛先が向かっており、行動原則の修正を迫られた形
だ。』(2019/8/20 日本経済新聞電子版)、との記事が載っていました。

企業は様々なステークホルダーと利害関係を持っている中で、アメリカでは企
業の所有者である株主が一番大事と考えられ、企業は株主価値を最大化するこ
とを最優先しなければならない風潮があり、日本でもコーポレートガバナンス
コードの導入や、ROE重視の経営への転換が行われてきました。しかし、行き
過ぎた株主重視の姿勢は、株価が上昇してもその恩恵を受けるのは大量の株式
保有する富裕層、機関投資家、自社株式やストック・オプションを持つ経営
層であり、上記宣言は、投資家とそれ以外の人達との格差が許容しうる水準を
超えたことの表れと言えそうです。

一方で日本の経営は、旧来は、利益三分法(会社の利益を従業員賞与、株主配
当、社内留保で分ける考え方)や、日本的経営(終身雇用、年功序列、組合)
と言われる特色を持ち、従業員重視の傾向は強く、また近江商人の三方良しに
代表されるように、取引先や社会に対する配慮が行われ、現在でいう、CSR
ESGで言われていることを実践している会社も多くありました。

「企業は社会の公器である」とは、かの松下幸之助氏も言った言葉と言われて
いますが、本来は全てのステークホルダーに配慮すべきところ、アメリカは株
主重視に振り子が行き過ぎていたところを是正しようとし、一方で日本は株主
を軽視していたところ、もう少し株主重視の姿勢に戻してきているとうように、
ステークホルダーへの力の入れ方、バランスを見直しているのだと言えます。

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■ 2.How Dare You!

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格差問題というのは古くて新しい問題であり、時代により様々な格差が話題に
上ります。基本的には資産格差や賃金格差と言った金銭的な格差ですが、最近
は教育の差が将来の貧富の差を決める原因となるが、そもそも低所得層の子供
はちゃんとした教育が受けられないと言った教育格差や、選挙が近くなると
「1票の格差」が取りざたされ、最近は世代間格差が話題となっています。

上記ビジネス・ラウンドテーブルでの話題で思い出すのは、数年前にフランス
の経済学者であるトマ・ピケティ氏が『21世紀の資本(Le Capital)』におい
て、資本収益率(r)が経済成長率(g)よりも大きい状況が続く現在において、
投資家は益々豊かになり、一般的な経済成長率しか享受できない労働者層との
経済格差が拡大する構造的な問題があるとの主張です。そして、行き過ぎた富
の偏在を解消するためには、グローバルに資産課税をすべきだとのことでした。

労働コストを削減して利益をねん出し、投資家の利益を増やすことはまさに、
r>gを推進するものであり、本来は格差是正は政治が行うべきことですが、民
間の自浄作用として、経営トップ層が格差是正を決断したということだと思い
ます。

一方で社会保障費の増大は、本来受益者負担であるはずが、高齢化と医療費の
増大により、シニア世代は過去に負担した以上の給付を、現役世代の負担によ
って賄っており、それが世代間で見た場合、負担と給付の関係が、シニア世代
と現役世代で不公平となっている状況を、世代間格差と呼んでいます。

すなわち、シニア世代が得をし、現役世代が損をしているという構図ですが、
広い意味でいうと、環境問題についても、かつて資源を制限なく採掘し、工業
製品を作り、環境を汚染した世代がある一方で、資源がだんだんと枯渇し、汚
染された環境で生活し、今後環境を再生しなければならない現役世代との間で
は、世代間格差が生じていると言えます。

先日、国連の気候サミットで、16歳の環境活動家の少女、グレタ・トゥンベリ
さんが、"How Dare You!"「あなたたちが話しているのは、お金のことと経済
発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。よくもそんなことが言えますね
!」と発言したことが話題となりました。まだ社会に出ていない若者が、今置
かれた地球温暖化が進んだ状況に、不遇を嘆くのではなく、そのような状況を
作ってきた世代に対して本当に怒っている姿が、各国首脳の行動を本当に変え
てくれればいいのですが。

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■ 3.改めて税について考える

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消費税が最初に検討されたのは1979年の大平内閣まで遡り、財政再建のため
「一般消費税」導入を閣議決定したものの、世論の反対を受け、断念しました。
その後、消費税が実際に導入されたのは竹下内閣時代の1989年(平成元年)でし
たが、そのあおりで竹下内閣は総辞職しました。その後の増税の際も、常に世
論からは逆風を受け続けてきたという歴史があります。

消費税だけでなく、そもそも日本人は、税に対して、義務ではあるから仕方な
く納税している、本当は払いたくない、と考える方が大半ではないでしょうか?
なぜ、税が必要なのか。これは、国や地方自治体が、共用資産である道路や橋
と言った公的インフラや、年金・医療・福祉の他、国民の安全を守るための教
育や警察、消防、防衛と言った、公共サービスを提供するためには、財源が必
要であり、その財源のベースとなるのが税金である、ということは、高校まで
の教育で一度は耳にしたことがあるかと思います。

その意味で、程度の差こそあれ、誰もが税金の使途について恩恵を受けている
はずなのですが、皆さんが税金を払うことに抵抗があるのはなぜなのでしょう
か?若干古い資料ではありますが、2017年に、東京都税制調査会が外部委託し
た調査レポート(租税に対する国民意識と税への理解を深める取組に関する国
際比較調査・分析等委託 最終報告書)によると、の国民所得に占める租税負
担の割合は、他の先進諸国(ニュージーランドの46.2%、フランスの40.7%、
ドイツの30.4%等)に比べて低い、24.1%であるにもかかわらず、中間層の税
負担に関する意識調査は「高すぎる」という回答が6割を超え、実際に税負担の
高い国よりも、意識の上では日本の方が高いと感じる割合が高水準だという結
果が出ています。但し、税モラル(税金をきちんと納めなければならない意識)
は、調査対象となっている国の中では一番高いようです。

実際の税負担と、負担していると感じる意識(通税感)の逆転現象は、分析に
よると、納税者が自らの納める税金がどのように使われどのように自らの生活
に還ってきているのかを実感し、納得してもらうという「納得感」が足りない
ことに起因するようです。これを改善するためには、学校での教育だけでなく、
自分の将来の給料からどの程度の税金が支払われるのか、社会人になるととも
に説明する必要があり、またアメリカと違って組織人は源泉徴収の年末調整の
制度によって、自分では確定申告は原則として行いませんが、大目に源泉して
必ず年度末に、それぞれ確定申告で還付を受けることにすれば、例えで血税
言われるように、血の滲むような自身の努力から得られた報酬から、どれだけ
の税金が徴収されているか必然的に意識することとなり、その使い途にも自然
に興味がわくと思います。そして選挙権を行使し、血税が大切に使われている
ことを監視することが、国民の義務だと思います。

税の三大機能の1つとして、所得再分配機能があります。競争を前提とした資本
義経済においては努力した者がより多くの所得を得ることは避けられないこ
とから、ある程度の格差はいたし方ありませんが、行き過ぎた格差は許容され
るものではありません。税は所得再配分により、その格差を緩和する調整機能
を持っていますから、今回の消費増税がきちんと世代間の格差を解消するよう
に政治を監視することが、まさに今我々国民に求められていると言えます。

ビズサプリグループでは、会計士、事業会社での経験豊富なコンサルタント
よる業務改善支援、M&A支援、システム導入のコンサルティングの他、グループ
会社で税務申告業務、税務顧問、税務DD等、税務業務も行っておりますので、
ご興味ありましたらご相談頂ければと思います。
http://www.biz-suppli.com/menu.html?id=menu-consult

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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意思決定の方法について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.104━2019.11.5━
【ビズサプリ通信】
▼意思決定の方法について
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ビズサプリの三木です。
最近、コンビニのアイス売り場に行くと、「ガリガリ君リッチ たまご焼き味」が販売されています。ご興味ある方は一度チャレンジいただければと思いますが、卵焼きのようなカスタードクリームのような焼きトウモロコシのような、ちょっと不思議な味です。同時に、いったいどのような意思決定をすればこういう商品にたどり着くのだろう、と不思議に感じます。
今回は様々な意思決定の方法について、その長所や短所を見ていきます。
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■ 1.多数決
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集団の意思決定で最もよく使われるのが多数決です。多数決とは、ある集団において意思決定を図る際に、多数派の意見を採用する方法のことです(Wikipediaより)。
■ メリット・シンプルでわかりやすい。・より多くの人が納得する結論となる。
■ デメリット・少数意見が切り捨てられる。・強権限者の意見にまとまってしまうことがある。
デメリットの1点目は、例えば選挙で避けられない死票の問題や、少数株主の利益を多数決の株主総会でどう保護するか、といったことです。集団で意思決定する以上は個人の意思と不整合が出てしまうのは避けられませんが、単純な多数決ではそうした人が最大で49.9%発生してしまいます。デメリットの2点目は「ワンマン社長に逆らえない」といったケースで、日産のゴーン氏の事件などを思い浮かべれば分かりやすいと思います。選挙のように議決が匿名なら回避できますが、企業での意思決定など意見を戦わせる場合は匿名にするのは実質困難といえます。
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■ 2.アビリーンのパラドックス
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多数決で意思決定をする場合に、逆らえないワンマン社長がいるわけではなくでも、妙な心理が働いて正しく意思決定できないことがあり、代表的なものとしてアビリーンのパラドックスという状況があります。これは、人と違って見えることに気おくれしたり、「自分のような考えを持つことは変なのではないか?」と思い込んでしまうことで、集団全体が間違えた意思決定をしてしまうものです。人の和を重んじる日本ではとても生じやすい状況かもしれません。
例えば、大きな組織の中には、参加者が「この会議何の意味があるのだろう?」と疑問を感じているような会議がしばしばあります。誰かが「この会議、やめよう!」と口火を切れば「そうだよね、この会議いらないよね」「短縮しようか」といった話が出るのですが、「やめよう」と言い出すに勇気がいります。つまり、本心で多数決すれば会議は廃止・縮小されるのに、表立っては反対意見は出てきません。こうした状況に陥ると、現状維持であったり、誰もが反対意見を唱えにくい無難な結論になりやすいことが知られています。
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■ 3.多数決の補正
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アビリーンのパラドックスで分かるように、集団の意思決定では大胆な経営改革やオリジナリティのある商品開発に二の足を踏んでしまうといった弊害が出てくることがあります。このため、堅実さよりも迅速で大胆な経営が必要であったり、奇抜さやオリジナリティを必要とする業態では、多数決を採用しつつも、工夫を凝らすことがあります。IT系の会社では、シュルツ方式といって、単純な賛否だけを数えるのではなく、様々な意見に順位付けをして、最上位ではない選択肢にも光を当てるようにしているところがあります。また商品やサービスの開発にオリジナリティが必要な会社では意思決定を多数決で行わず、矛盾しない意見であれば「両方やってみよう」とか、引き返せるような選択肢であれば「ダメもとでやってみよう」といった判断を推奨することもあります。(もちろん、意思決定方法とは別に、失敗を責めない人事評価などの社風づくりも重要です)また、他の議決権者の意見を見ながら自分の意思決定をする「戦略投票」を認めると、意思決定の結果が変わることがあります。例えばA、B、Cの3つの選択肢があり、自分はA>B>Cの順に良い案だと考えているのですが、自分を除く多数決の状況は、A案が4票、B案が7票、C案が8票だったとします。ここで自分はベストだと思っているA案に投票してもC案の優位は動かないため、戦略投票ができるのであればB案に投票することでC案との決戦投票に持ち込めます。このように戦略投票を行うと、投票は自分自身の意思表明とは異なってしまうものの、より議決権者がより望ましいと考える方向で意思決定がなされると言われています。

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■ 4.エラー排除のための意思決定
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2008 年 2 月 24 日、湘南モノレールで約 40 メートルオーバーランして停車する事故が発生しました。この事故の原因は、運輸安全委員会がまとめた調査報告書によると、制御コンピュータに入ったノイズだったようです。単純作業を代行するRPA、複雑な意思決定をもこなしていくAIなど、人間ではなく機械が意思決定や判断を行うことが増えています。機械は、人間のようなミスはしない一方で、学習不足による判断ミスや、湘南モノレールの事例のように異常値の除外ができないといった機械特有のミスは犯してしまう可能性はあります。実は機械でも集団で意思決定することがあります。飛行機など事故が致命的な結果を招く乗り物では、重要な操縦装置の制御には複数台のコンピュータによる意思決定を行い、異常値を出したものを排除するようにしています。私は趣味でスキューバダイビングをしますが、その際にはダイブコンピュータという減圧症(いわゆる潜水病)にならないための潜り方を指示してくれる小さな機械を使います。この機械の中では複数の方法で計算が行われており、最も厳しい計算となったものを採用して指示を出しているそうです。今後、意思決定に機械が関わることは増えてきます。人間もしばしばエラーを起こしますが、機械も人間とは違ったエラーを起こします。正しい意思決定をするためにも、誤った意思決定を排除していく方法は今後も研究が続くでしょう。

コーポレートガバナンスなど、会社経営に関しても意思決定の議論は多くなされています。その際、登場人物やそれぞれの立場の是非は良く議論されますが、意思決定の方法に焦点を当てることは少ないように思います。ちょっと考えてみても良いテーマかもしれません。
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