株式会社Bizsuppliのメルマガバックナンバー

会計を中心とした実力派プロフェッショナル集団であるビズサプリのメンバーが、旬のネタや色々な物事への洞察を記載したメルマガのバックナンバーです。

昔の知恵

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.045━2017.1.20━━

【ビズサプリ通信】

▼ 昔の知恵

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こんにちは。ビズサプリの花房です。2017年になり1月もすでに3分の2が経過
しようとしており、まさにことわざの『一月往ぬる二月逃げる三月去る』を痛
感しています。ことわざは昔から言い伝えられてきている、事実や知恵、教え
等を端的に表した短い文章ですが、いわば経験則のようなものです。

また今日は暦の上で『大寒』に当たり、1年で最も寒いと言われている日であ
り、本日は天気予報で東京でも雪予報が出ているくらいです。これは経験則
というよりは、地球が太陽を1年かけて回るサイクルから導き出される天文学
的なものですが、それをうまく名づけることで季節感を出し、生活の目安とし
ている意味では先人の知恵だと思います。

時代は変わっても、人類史の宇宙の年齢からみるとわずかな期間において自然
の摂理や物事の本質はほとんど変わることがないものですから、歴史に学ぶ、
ではないですが、今年は経済書だけでなく、より一層歴史や先人の知恵に関す
る書籍を読む年にしたいと思っています。

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■ 1.トランプ大統領誕生
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さて日本における大寒の今日、アメリカでは第45代大統領にトランプ氏が就任
します。トランプ氏と言えば、昨年の選挙戦から徐々に注目され、クリントン
氏優勢の下馬評を覆し一躍時の人となったわけですが、大統領選最中もその後
もその言動が何かと注目されてきました。また情報の発信方法も独特で、旧来
のメディアでの発言はほとんどなく、常にツイッターで一方通行の過激発言を
発信しており、それが選挙に有利に働いたかどうか分かりませんが、当選後の
企業を攻撃する姿勢は、自動車会社を中心に企業活動に多大な影響を持ち始め
ています。

このように注目は集めつつも、国民の好感度は高くないようで、直前のCNN
テレビの世論調査によると、「好ましい」が40%。「好ましくない」が52%
となっていて、大統領就任前からの不人気ぶりは異例のようですが、これ
に対してもトランプ氏は数値が不正に操作されていると発言しているのは
驚きです。

本日1月20日(アメリカ時間)の大統領就任式には、50万人から100万人が
デモ隊も含めてワシントンに訪問すると予想されていて、ある試算による
とその経済効果は1,150億円以上と見込まれているようです。

またトランプ氏の話題がない日はないくらいメディアのネタとしてはしばらく
事欠かないでしょうから、各メディアとも力を入れており、ニューヨーク・タ
イムズはトランプ政権の取材に500万ドルの予算を組み込んでいるとのことで
すが、従来の大統領と情報発信の方法が大きく異なっていたり、マスコミへの
攻撃が凄まじいだけに、マスコミの方も苦労しそうです。

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■ 2.トランプ大統領の政策

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そして大統領選後に世間、特に日本の企業が注目しているのは、どのような政
策を打ち出すかということだと思います。選挙中からスローガンとして
"Make America Great Again"を掲げていて、アメリカ第一主義を唱えています。
それがTPPからの離脱や、NAFTA北米自由貿易協定)の再交渉ということに
繋がります。トランプ氏はツイッターで、メキシコ製の自動車に高い関税をか
けると言ってフォードに工場移転の計画を撤回させたり、トヨタにも同様の圧
力をかけています。

このような保護主義が最終的にアメリカにとっていいのかどうか分かりません
が、他にも移民政策を制限し、工場の国外移転阻止と合わせて、国内の雇用を
守り、作り出そうとしているのは確かなようです。ソフトバンク孫社長はす
でにアメリカに対して今後500億ドルの投資と5万人の新規雇用をトランプ氏と
の会談で話し、アリババのジャック・マー会長は同様に5年間で100万人の雇用
を創出すると約束、Amazonは10万人の雇用を発表し、早速トランプ氏の心を
掴もうとしています。

また最近は為替に対しての発言も増えて来ていて、トランプ氏が『ドルが高す
ぎる』と言ったとたんに一気に円高になる等、大統領選後からの2か月間の間
に円相場は20円くらいの幅で動いており、今後の為替相場の先行きは、景気へ
の影響も含めて企業経営者にとっては大変気になるところだと思います。

また軍事面では、選挙中から在日米軍の駐留費の日本への全額負担を求めてい
て、日米同盟の見直しに発展するのかどうかといったことも気になる点です。

ただ日本の多くの企業においては、日々変わるトランプ氏の発言に翻弄される
こともなくとりあえず様子見できていると思いますが、本日の大統領就任後に
徐々に政策が明らかになってくる中で、今年は様々な対応が求めれる1年にな
るのではないかと予想されます。

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■ 3.歴史は繰り返すのか?

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「歴史は繰り返す」という言葉があります。人類史はそれを紐解くと、基本的
には「争い」の歴史でした。民族紛争、国家間紛争、企業間競争と、「争い」
なくして人類の発展はなかったと思いますが、2度の大きな世界大戦も含めて
争いの後は必ず反省も繰り返してここまで来ています。

21世紀はますますグローバル化が進み、それが世界での所得格差を助長して
いる部分も確かにあるのだとは思いますが、一方でシリコンバレー企業のよう
に社会問題を解決するために活動している多くの人もいます。

今はちょうど歴史の転換期のような時代であり、リスクも高いと同時にチャン
スでもあります。そのために必要なのはこの1,2年をとらえる短期的な思考で
はなく、100年、200年といった長期スパンでの視点だと思います。数年単位で
あれば経験がものを言いますが、100年を超える経験は個人レベルではもって
いない訳で、その時間軸で考えるためには、過去の歴史に学ぶのが1つの方法
です。

ことわざは生活の知恵のようなものなので戦略思考にはあまり使えないかも
知れませんが、偉人の残した格言(例えば『論語』のようなもの)や、過去の
歴史を分析することは有用かもしれません。

トランプ新大統領には、今のグローバリズムの中でこそアメリカが果たすべき
役割を長期的な視点でとらえ、無用な争いを繰り返すことのないよう、必要の
ない歴史は繰り返さないような政治を主導して頂きたいと思います。

いよいよ、あと半日ほどで、日本時間の明日午前1時30分から新大統領の就任
式が開催されます。常に世間の期待を超える言動を見せてきただけに、就任演
説でどのような予想外の言葉が飛び出すか、不安と期待の中、見守りたいと思
います。

皆様の会社において予想外のことが起きた時に対応できる経験に裏付けされた
強みが我々にはあります。ビズサプリグループでは会計のみならず、その周辺
領域を含む幅広いコンサルティング、アウトソース業務を行っておりますので、
一度サービス内容をご確認頂ければと思います。
http://www.biz-suppli.com/menu.html?id=menu-consult

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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本社の役割

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.044━2017.01.04━
【ビズサプリ通信】

▼ 本社の役割

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新年あけましておめでとうございます。ビズサプリの辻です。

2017年、新しい年が始まりました。今年のスタートは大変穏やかで、温かな
お天気となりました。皆様はどのようなお正月を過ごされましたでしょうか。

今年が皆様にとって佳き一年になりますことをビズサプリメンバー一同お祈り
しております。

新年最初のメルマガは、本社の役割について考えていきます。

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■1.本社は現場を知らない

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「事件は現場で起こっている」というちょっと古いですが「踊る大捜査線
のセリフにありますが、本社と現場の距離は今も昔も業界を超えて変わらぬ
課題のように思います。

先日、東芝が挑む風土改革の様子がテレビで報道されていました。風土改革の
取組の一環として、工場で勤務する若手社員と社長がざっくばらんな雰囲気で
積極的に情報交換している様子でした。以前は、社長や役員が現場に来ると
なると「大名行列」のような形でそぞろ歩いていたそうですが、その慣習を
やめて社長が1名で現場に赴き、現場の若手社員と直接情報交換するように
したそうです。そこでの30代若手社員の方の発言が辛辣。「本社の人は
そもそも現場を知らないものだと思い、指示は聞き流していました。」
社長は苦笑されていましたが、これまで拾われることがなかった現場の本音
なのでしょう。


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■2.現場はわかろうとする

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私は、仕事上本社側の立場にたって仕事をすることが多いのですが、よく感じる
ことは本社からの指示の“趣旨”が正しく伝わっていないということです。
本社も当然ながら会社を弱体化するために様々な指示や取組を行っているの
ではなく、指示や取組には、趣旨や目的があるわけです。

ただ、それが伝わる過程でその趣旨が忘れられてしまい、また議論されることも
なく、単に「チェックリストつぶし」が始まってしまうということです。
これでは現場は本社を見て仕事をしてしまうことになってしまいます。

最近はガバナンスやモニタリングという言葉をよく使うようになりましたが、
「本社が全体を管理し、現場や子会社は本社の指示に従うことがガバナンス」
といった誤解があるように思います。現場からみても、本社の指示通りに動いて
失敗したとしても自分のせいにはならないため、リスクを取らなくて済むという
点においては好都合ともいえます。
こういう思考回路になると、現場は目の前にある事実を正しく捉えて自ら
自律的に考えて判断、行動することをやめてしまいます。この結果、企業の
収益力や生産性が低くなっていることもあるのではないでしょうか。


ベストセラーとなっている「キリンビール 高知支店の奇跡」の中で、著者が
本社から業績不振の支店長へ異動となり奮闘する姿が描かれています。
(この異動、社内も本人も左遷と捉えられていたそうです。)著者も高知支店
に赴任してしばらくは、現場の状況の詳細を知らない本社から相次いで下りて
くる指示を、本社の事情に明るい著者でさえも「そんな指示は流しておけ」
と言わざるを得なかったそうです。ただ、本社とよくコミュニケーションを
とるようになると「同じ会社なのになぜこれだけ意見と結論が違ってしまう
のだろう」と不思議に思うようになり、考えた結果「持っている情報量が決定的
に違う」「この情報量のギャップを埋めるのは現場マターだ」と気づいたそう
です。そして到った考えが、「会社の方針とその意味をよく理解したうえで顧客
からの支持を最大化するために、どの施策に絞り組むかを決め、効率的なやり方
を議論し、現場ならではの工夫をし、実行する。その結果をチェックし次に
生かす」ということ。そのように考えると、本社からの指示についても面従腹背
ではなく、納得がいくまでコミュニケーションをとるようになっていったそう
です。

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■3.現場も自律的に行動をする

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「捨てられる銀行」という書籍では、人口減少にあえぐ地銀の中で堅実な業績
をあげている地銀は、徹底的に顧客の希望によりそい、時には金融庁(おかみ)
と闘いながらも確実に収益をあげているということでした。具体的には、営業
ノルマを廃止し、顧客満足を評価基準に据え、そして会計上引当を積んだ先
にも積極的に運転資金の追加貸し出しを行ったということでした。

いずれの例も売上や利益が究極の目標ではなく、リーダーも現場の一人一人も
「自分の会社が社会に存在している意義は何か」を真剣に考え、「顧客のため」
「地域のため」「従業員のため」にその存在意義に沿って判断し、その結果と
して売上や利益がついてくるということが書かれています。そしてまた利益は
悪ではありません。事業の結果として得られた利益でさらに人、設備、広告、
開発に対する投資余力が生まれさらに強い事業に持続的に育てることができる
といったことになります。経営学の書籍の名著「ビジョナリーカンパニー」
ではORの呪縛(理念OR利益)ではなくand発想(理念&利益)を信じている
会社が強い会社だといっています。


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■4.本社の役割

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では、本社の役割は何なのでしょうか。

私は本社の役割は、現場の一人一人が自律的に会社の存在意義に沿った事業
の判断ができるよう、そして事業に専念できるよう支援することにあると思
います。

具体的には、現場が会社の理念の理解を深める機会を設け、事業の強さを適切
に判断できるような評価基準を設計し、正しい行動が評価されるような人事制
度を整備し、事業が滞りなく行われ、様々な事業上の判断を正しく行えるような
業務プロセスや情報システムを構築し、そのどこに改善すべき点があるのかを
評価するモニタリングを行うといったことになります。本社部門は自身の業務が
どうすればより事業に貢献することができるかを常に頭においておくことが必要
です。

これには正答があるわけではありませんので試行錯誤をしていくことしか
ありません。この試行錯誤がない限り本社と現場の距離は離れたままとなって
しまい、長い目で見れば会社の事業も弱くなってしまうでしょう。


本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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新規上場会社数の減少の理由(わけ)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.043━2016.12.21
【ビズサプリ通信】

▼ 新規上場会社数の減少の理由(わけ)

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ビズサプリの久保です。

だいぶ日が短くなったと思ったら、21日は冬至です。冬空の星が最近きれい
なのはご存知でしょうか。都会の夏は、ほとんど星座が見えませんが、冬に
なると空気が澄んできて星座が見えるようになります。その中でもオリオン座
がどこからでもはっきり見えています。天体望遠鏡でなくても双眼鏡でも
有名なM42(オリオン大星雲)がぼんやり見えるのはご存知でしょうか。
たまには夜空を見上げてみてください。

今回は、一年の締めくくりとして、今年の新規上場会社のお話をいたします。
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■ 1.新規上場会社数が減少

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日本取引所グループは、2016年の新規株式公開(IPO)企業数が前年より約1割
少ない84社になると発表しました(12月1日付日経新聞)。2009年の13社を
底にして、57社(2013年)、78社(2014年)、95社(2015年)と順調に
新規上場会社数が増えてきましたが、ここにきて84社と減少することに
なってしまいました。減少するのは7年ぶりということになります。自動
運転のZMP社が、情報漏洩のため12月での上場を延期したことから、東証
公表した84社からさらに1社減少しするのではないかと思います。(東証
ウェブサイトには、執筆日現在12月の上場会社数は未だ公表されていません)

今年始めには、昨年は95社にまでになったことから、100社超えが期待されて
いたところですが、このように減少したのは、東証による新規上場の審査強化
のためとされています。結果として、最近の上場ブームに水を差した感じに
なるのは否めません。
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■ 2.なぜ東証が審査強化?

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 2年ほど前から、上場直後に業績の下方修正を発表する会社が相次いでいまし
た。東証では、そのようなことにならないよう、上場後の業績を確かめるような
審査をしているものと思われます。これが新規上場会社数減少の大きな理由では
ないかと思います。その筋のお話によると、マザーズの上場審査は2ヶ月(東証
ウェブサイトより)とされていますが、それが半年以上掛かっている会社もある
とのことです。上場審査が長期間化していることは事実のようです。
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■ 3.再上場の審査も強化

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このほか別の観点から、上場審査が強化されていることが最近の報道で明らか
になりました。それはMBO後の再上場の審査強化です。上記の記事の翌日の
12月2日付で日経新聞に「日本取引所、再上場企業の審査強化」という記事が
掲載されました。

投資ファンドが上場会社の株式の大部分を買い取って上場廃止し、その後その
会社が再上場するという事例は、これまでもありました。例えば、スカイラー
クは、業績が悪化したことから2006年9月に上場廃止して野村プリンシパル
ファンアンス(NPF)などの傘下に入りました。その後業績が回復せず、2011年
秋にはベインキャピタルが買収し、2014年8月に再上場したのです。

このように業績が悪くなった上場会社にファンドが入って上場廃止するケースは
雪国まいたけ(これもベインキャピタルが投資しました)など、数が増えてきま
した。ファンドとしては、将来EXIT(株式売却)して株式の売却益を得るため
に投資しているのですから、会社の売却か再上場を目指すことになります。その
ためには業績回復が必須となります。

お金を出すだけでなく、経営に手を入れて業績回復させる努力をするわけです
から、ファンドとしては、それなりの見返りがあって然るべきです。しかし、
一般株主から見たら、業績が悪化して株価が下がった時に上場廃止され、再上場
したら高い株価になっている、ということでは、株式を持ち続けて儲ける機会を
失うということになってしまいます。当然ながら、非上場の期間は業績の開示も
されません。

業績が悪くなったタイミングで、ファンドが経営者と組んで、意図を持って上場
廃止して再上場で儲けるということだと、一般株主の利益を害することになって
しまいます。このようなことがないかについて、東証はしっかり時間をかけて
審査しますよ、ということだと考えられます。

本年も【ビズサプリ通信】お読みいただき、ありがとうございました。
良いお年をお過ごしください。

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長時間労働と労働生産性について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.042━2016.12.7 ━


【ビズサプリ通信】

長時間労働労働生産性について

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ビズサプリの三木です。

かつて日本には「企業戦士」という言葉があり、「24時間戦えますか?」とい
うコピーのドリンク剤が売れていた時期がありました。
時代は変わり、今やブラック企業という言葉に代表される長時間労働が社会問
題となっています。

今回のメールマガジンでは、長時間労働をめぐる問題や労働生産性について取
り上げます。


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■ 1.過労死の原因とは

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現役で働いている方が亡くなると、その原因が仕事かどうかが問題となります。
厚生労働省は、残業が月100時間を超えた場合、あるいは2~6か月平均で80時
間を超えた場合に健康被害リスクが高まるという目安を示しています。
労災認定も概ねこの目安を基準にしているようです。

社会問題としての過労死もさることながら、現役で忙しく働く方にとって最大
の関心事は「自分は大丈夫か?」でしょう。
いわゆる過労死と呼ばれるものには、大きく分けて2つのタイプがあります。

1つは睡眠不足を直接の原因とする疾患です。
睡眠不足が続くことによる高血圧や、規則正しい生活ができず食生活が乱れる
ことによる動脈硬化などが原因で、心筋梗塞脳出血に至ります。
対策としては、睡眠とバランスのよい食生活に尽きます。
もちろん原因は仕事だけではありません。夜遅くまでポテトチップを食べなが
らネットゲームをしていても同じことが起きます。

もう1つは労働ストレスによるうつ病と自殺です。
うつ病も休暇を取れて治ればよいのですが、そうもいかず自殺に至ってしまう
ケースが後を絶ちません。
社会問題であるのは確かですが、ストレスは仕事につきものですし、ストレス
耐性にも個人差が大きいため、社会制度としてこれを撲滅するのはなかなか難
しい問題です。

この2つの悪いスパイラルには陥らないようにしなければなりません。
実は現在の労働法制には限界があり、過剰な長時間労働に歯止めがかかりにく
いところがあります。次にこの辺の事情を見ていきましょう。


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■ 2.36協定の限界

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労働時間を制限する法令としては労働基準法があり、法定労働時間は1日8時
間、1週40時間と定められています。

しかしこれでは業務が回らないことがあるため、労使で合意して労働基準監督
署に届け出れば、残業時間を延長することができます。
この届出のことを、労働基準法第36条に定めがあることから36協定(さぶろく
きょうてい)と通称しています。
この36協定には延長の限度があり、例えば年間では360時間が延長の限度です。

「あれ、うちの会社ではそれ以上の残業がしょっちゅうあるよ」という方も多
いと思います。
実は36協定には特別条項を付けることが認められています。
これは、「臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別
の事情」がある場合には年間360時間を超える延長を認めるものです。

しかしながら「特別の事情」という定義はあいまいですし、緊急対応はビジネ
スでは頻繁に起こります。
何でもかんでも「特別の事情」と言い出してしまえば、法令上の歯止めは乏し
いことになります。

ビジネスマンは、どこでどんな職場や上司、取引先に当たるか分かりません。
制度による保護に頼りすぎず、セルフコントロールが必要です。


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■ 3.職場環境

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コンサルタントとして数多くの職場を見てきました。あちこちで話し声がする
にぎやかな職場もあれば、静かな職場もあります。
私はにぎやかな職場のほうが好きですが、業務に集中したいときは「話しかけ
ないで!」と思うときもあります(わがままです)。

仕事に集中したいときに話しかけられるのはストレスになりますが、
うつ病寸前という時にはちょっとしたことを相談しやすい雰囲気は大切です。

業務効率と組織内コミュニケーションの両立は多くの会社での悩み事です。
メンター制度を導入してみたり、社内での飲みニケーションに補助金を出した
り、色々な取り組みを目にします。

私が「これはいい」と思った事例があります。
みんなが色々なおしゃべりをしているにぎやかな職場なのですが、1人作業用
の会議室をいくつか用意しているのです。
ここ一番、業務に集中したいときは人知れずに1人会議室にこもるとのこと。

業務効率を優先しすぎてちょっとしたことを相談しにくくなっては、逆に業務
効率を損ないます。
長時間労働うつ病に対しては、相談しやすい雰囲気は良い緩衝材となります。
職場の雰囲気は簡単には変わりませんが、うまくコントロールしたいものです。


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■ 4.労働生産性について

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日本の労働生産性は主要国の中で最低という報道をよく目にします。

どの文献か忘れてしまいましたが、欧州などは家族で夕食を食べるのが当たり
前のため、それでも仕事が回るように権限移譲が進んでいるという分析を見た
ことがあります。
これに対し、全体調和・根回しを必要とする日本の仕事スタイルは、意思決定
に時間がかかり、自分でコントロールできないだけに長時間労働にもつながり
がちとのこと。

上場企業では内部統制も問われることから、何かというと上長の承認が求めら
れます。
ひとくちに承認と言っても、内容チェックから、部下の責任を免除するもの、
最終的な意思決定としての承認まで目的が様々です。
承認が部下の思考停止につながると、せっかくの統制が台無しです。
例えば上長責任を明確にするための承認であれば「内容はお前に任せた!責任
は私が取る」という実質的な権限移譲を明言することも必要でしょう。

余談ですが、指標としての労働生産性は労働効率とは異なるので注意が必要で
す。
労働生産性としてもっともよく使われるのはOECDの計算方式で、

労働生産性GDP購買力平価)÷就業人口

で計算します。

この式を見ると、効率の悪い残業をしても労働生産性は下がらないことが分か
ります。
従って、「日本は冗長な会議が多いことが労働生産性が低い原因」といった記
事は、OECDの指標のことを想定しているなら誤っています。
労働効率を議論するなら、本来は時間当たり労働生産性に注目する必要があり
ます。


本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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事業譲渡と会社分割

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.041━2016.11.18━

【ビズサプリ通信】

▼ 事業譲渡と会社分割

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こんにちは。ビズサプリの庄村です。

11月もあっという間に後半に入りました。朝晩はすっかり冷え込み、まもな
く冬の到来といったところです。

富士フイルムホールディングス再生医療技術を取り込むために武田製薬工業
傘下の和光純薬興業を買収。住友金属鉱山半導体材料として使うリードフレ
ーム事業から撤退。後継者難をきっかけとする中小企業による大手企業への事
業売却といった事業の集中と選択のためのM&Aに関するニュースをよく耳
にします。


今回のメルマガはM&Aの代表的な方法として、事業譲渡と会社分割をテーマ
としています。

なお、文中の意見は筆者個人の私見であることを予めご了承ください。

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■ 1.事業譲渡と会社分割の相違
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会社の事業部門を他社へ移す代表的な手段として、事業譲渡と会社分割があり
ます。また、会社分割には、分割により新たに会社を設立する新設分割と、分
割後にすでに存在する他の会社に承継する吸収分割があります。

事業譲渡は、単に事業を売買するという個別の資産、負債及び契約関係などの
売買契約で、対価が金銭等で支払われるものです。
これに対して、会社分割は、会社法に規定された組織再編行為であり、対価が
株式(新設分割の場合は、新設会社の新株。吸収分割の場合は、承継会社の新
株)の交付です。

このように事業譲渡と会社分割は、会社の事業部門を他社へ移す代表的な手
段ですが、法的に異なるものであるため、労働者保護手続き、債権・債務の
承継、債権者保護手続きが異なってきます。


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■ 2.労働者保護手続

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事業譲渡の場合、従業員の承継には、従業員個人と個別に交渉し個別の同意が
必要です。
円滑な事業譲渡を行うためには、従業員の意向を十分に把握することが重要と
なります。その上で譲渡会社から譲受会社への承継の形態(出向、転籍等)、
退職金の承継方法等を決めることになります。
また、事業譲渡に同意しない従業員は部署異動や転職等今後の処遇について
十分な話し合いが望まれます。

他方、会社分割の場合は、労働承継法が適用され個々の従業員の同意を得ずに
従業員を承継することができます。
ただし、従業員保護の観点から、労働者との協議(全体説明会・個別説明会)
、労働者への事前通知が必要になります。
なお、会社分割では従業員は当然に承継されますので、差別的取り扱いを防止
するために労働者の異議申し立てが認められ、申し立てのあった労働契約は承
継会社に承継されません。

 

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■ 3.債権・債務の承継と債権者保護手続

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事業譲渡は個別の資産・負債・契約関係などの売買契約ですので、包括的に権
利義務が承継されず、個別の債権、債務ごとに移転手続きが必要になります。
そのため、債権者及び債務者が多数の場合は相当の時間と労力が必要となりま
す。ただし、個別に債権者の同意を得ることが必要なため、債権者保護手続き
は不要となります。
また、許認可は承継されないので、事業譲渡の効力発生日までに許認可の取得
ができるようにスケジュール調整する必要が出てきます。

それに対して、会社分割は、会社法上の組織再編行為ですので分割会社の権利
義務は承継会社に包括的に承継されるため、債権・債務も相手方の同意を得る
必要がありません。
しかし、、債権者保護手続きが必要となります。具体的には、債権者が一定期
間内に異議を申し立てることができるように所定の事項を官報で公告するとと
もに、各債権者に個別に催告する必要があります。
ただし、官報公告に加えて、時事に関する事項を日刊新聞紙に掲載する方法、
もしくは、電子公告で行う場合は、個別に催告する必要はありません。
債権者が異議を申し立てた場合は、その債権者に債務を弁済するか、相当の担
保を提供する等の対応が求められます。
会社分割の許認可については、承継が認められる場合や一定の要件を満たすこ
とを前提に許認可の承継が認められる場合がありますので関連業界への事前確
認が必要となります。


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■ 4.課税関係

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消費税は、事業譲渡には課税されますが、会社分割には課税されません。
事業譲渡は資産・負債等の売買ですので消費税が課税されます。当然ですが、
消費税の課税対象となる資産は課税資産のみですので、留意が必要です。

不動産取得税についても、事業譲渡には課税されますが、会社分割には課税さ
れません。不動産を多く保有する事業を他社へ移す時には、事業譲渡の場合は
巨額の不動産取得税がかかることになりますので留意が必要です。


本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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サービスについて

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.040━2016.11.02━

【ビズサプリ通信】

▼ 今年もあと2か月です

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こんにちは。ビズサプリの花房です。

気が付けば今年も残り2か月となりました。まだ年内やらなければならないこ
とも多く残っているとは言え、そろそろ来年をどんな年にしようか考え始めて
いる方もいらっしゃることかと思います。なかなか思うようにならないことも
多々あるのですが、仕事について言えば、ちょうど昨年の今頃ビズサプリグル
ープとして組織化する話をしたのがちょうど昨年の今頃で、準備期間を経て今
年の春からグループとしての活動を始めることができ、1つ大きな目標を実現
できました。

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■ 1.サービスレベルの向上に終わりはない
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先日タクシーに乗ったところ、そのサービスの良さに驚かされました。若干汗
ばむ気候だったのですが、乗るとすぐに冷えた使い捨てのおしぼりが出てきて、
しかも厚地のしっかりしたタイプで、柑橘系の香りのあるものでした。今まで
の経験上、おしぼりが出てきたタクシーは2回目で、最初の時は個人タクシー
でしたが、今回は法人タクシーだったので、そのタクシー会社ではどのタクシー
でもおしぼりのサービスをしているのかと聞くと、その運転手さん独自のサー
ビスとのことでした。

それだけでなく、前席後ろのシートポケットには様々な便利グッズが所狭しと
並び、眼鏡拭きやら防水・消臭スプレー、女性向けには大判の脂取り紙(運転
手さんに聞くところによると売っているお店は少なく、わざわざ探し出した購
入先があるとか)がありました。運転手さんにお断りすればそれらを自由に使
えるとのことでした。ざっと見ただけで20種類くらい並んでいて、運転手さん
によれば並んでいないものも含めて30種類くらいあるそうです。そして急な雨
に備えて、トランクには100円のビニール傘が何本か常備されていて、希望する
お客様にお配りしているそうです。

このタクシーに乗って気付かされたのは、タクシーもここまでサービスのレベ
ルが上げられるんだということです。目的地まで運んでもらうこと以外のサー
ビスを一般的なタクシーと同じ値段で受けられるわけですから、お客様が初
めてそのサービスを受けた時は私同様「満足感」を得ると思います。タクシー
のサービスはこういうもの、という決まりがあるわけではないですが、ほとん
どのタクシーのサービスに差はありません。しかし、この運転手さんのように、
何か+αのサービスが出来れば他との差別化が図ることができ、それは私の行
っているコンサルティングを始めとして、どのサービス業も同じことが言えま
す。そしてサービスレベルの向上を追求し、新しいものを作り出そうとしても
そこに終わりはありません。


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■ 2.サービスレベルを上げる方法

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タクシーのそもそもの目的は人を運ぶということであり、一番大事なのは、
車の整備状況や法定速度の遵守、丁寧な運転など、最低限守るべきものを
守った上でお客様を如何に早く安全に送り届けるか、だと思います。
その上で、
快適性が増せばそれだけお客様の満足度が高まるわけですが、快適性を高め
るための方法として、お金がかかるものとそうでないものがあります。

お金をかけずにサービスレベルを上げるのは、最近「おもてなし」と言われて
いるような、目配り・気配り・心配りでなされる活動です。具体的には心のこ
もった言葉や態度で接することですが、基本的に見返りを求めず自主的に行う
ものです。挨拶はもちろんですが、最近では乗降時にわざわざ運転席から降り
てきて手でドアを開け閉めしたり、乗車時にエアコンの温度設定について聞い
たりします。

お金のかかるサービスとしては、先ほどのようなおしぼりや各種備品の他、飲
み物の配付(以前夜中に乗ったタクシーは冷えたビールやソフトドリンクを配
ってました)、ワンボックスや外国車での車両提供があります(外国車は基本
的に個人タクシーが多く、長時間運転しなければならない運転手さんの個人的
な趣味が色濃く反映された結果だと思いますが、法人タクシーでも何台かベン
ツを提供し話題となったMKタクシーやふくねこタクシーがあります)。

またサービスの専門性を高めるという方法もあって、羽田空港や成田空港への、
送迎を目的とした定額料金のサービスがあります。その他にも観光タクシーや
子供の送り迎えのタクシー、介護タクシー、最近だと買い物タクシーというの
もあります(買い物に同行してくれるサービスの他、買い物そのものを代行し
てくれて配達してくれるサービスもあるそうです)。また東京オリンピック
催に伴い、これからは英語対応の可能なドライバーがいるバイリンガルタクシ
ーの需要も増えて行くと想像できます(なお、筆者が最近上海に旅行に行った
際に現地の方から聞いた話ですが、上海万博の1年くらい前はタクシードラ
バーに英語教育をして外国人を迎え入れられるような対策を取ったそうですが、
万博後はそのような施策は全くなくなったそうで、国際空港での客待ちのタク
シーですら英語が通じない状況でした)。


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■ 3.本当のサービスは真心がこもってこそ

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タクシー業界は規制業種です。タクシー会社は認可制から事前届出制にはなっ
ていますが、運賃は国が地域ごとに決めた料金範囲で設定することになってい
ますから、価格面での競争というのはしづらい環境にあると言えます。さらに
最近は、本格参入は出来ていないものの、ウーバーのような価格優位性を持つ
類似業態も登場する可能性もあり、車で人を運ぶプロとして、競争に勝ち抜く
ためには何かしらの差別化を続けて行かなければならないでしょう。

一番最初に紹介した運転手の話に戻りますが、その運転手さんは法人タクシー
のドライバーであり、サービスの良さで顧客を増やしたとしても個人タクシー
とは違って、全て自分の収入となるのではなく、その一部は会社に徴収されま
すから、固定客を増やして売上を上げることを一番の目的としているようには
思えませんでした。そしてお客様に配る数々の備品類は、確認してないです
が個人負担と思いますので、30種類もあって毎回お客様に配っているとなる
と、それなりの支出にもなります。

ではなぜコストをかけてまでそこまでするのかと言えば、それは単純に、お客
さんに喜んで頂くことが好きなのだと思います。その運転手さんは、お客様
を喜ばせることが一番で、それにより売上も自ずと後からついて来ると考えて
いるのではないかと言うことを、わずかな時間のやり取りでしたが、感じまし
た。備品の提供だけではなく、挨拶から話し方や態度、様々な所作に心がこも
っていました。物を揃えるだけなら簡単ですが、魂がこもってなければ、その
サービスはお客様には伝わらないと思います。

私自身が今のコンサルティングの仕事をしている理由も、お客様に喜んで頂
きたいからです。お客様が期待以上の仕事をしてもらったと思って頂けるよ
う真心を込めて、普段から仕事へ取り組んでいます。お客様からの「感謝」
こそがコンサルタントの原動力です。そして、サービスの質の追求もさること
ながら、サービスの幅を広げることも重要と考えています。昨年まで1人でコン
サルティングをしている時は、専門領域とリソースの関係で受けられる仕事は
限定的でしたが、ビズサプリグループとなったことで、組織として専門領域が
広がり、大手の会計事務所に劣らないサービスラインを持つことができました。

お客様の様々な課題を解決できることも、サービスレベルの向上と思っていま
す。もちろんその中身も追及します。ビズサプリグループでは会計のみならず、
その周辺領域を含む幅広いコンサルティング、アウトソース業務を行っており
ますので、一度サービス内容をご確認頂ければと思います。
http://www.biz-suppli.com/menu.html?id=menu-consult

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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不正リスク管理ガイドの公表

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.39━2016.10.19━
【ビズサプリ通信】

▼ 不正リスク管理ガイドの公表
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 ビズサプリの辻です。
 10月もあっという間に後半に入りました。街はいつから始まった習慣なのか
ハロウィン一色です。これが終わるとクリスマスの飾りが出てきて今年の
カウントダウンが始まってしまうのでしょうね。

 10月は秋の運動会シーズンでもあります。最近はコミュニケーションを円滑
にとるための企業運動会を復活させるところが増えているようです。コミュニ
ケーションを良好にとるための一つの手段として「マルチマーケットコンタク
ト」という考え方があります。これは人間関係において多面的に接触すること
で組織に対する忠誠心や愛社精神が芽生えるといった考え方です。企業主催の
運動会はまさにこの考え方を利用して、企業の一体感を生み出そうとするもの
です。
 ただ、このような愛社精神は不正リスク管理という面でいうと、「間違っ
たムラ意識」を生む可能性があることを考慮しなければなりません。「会社
のためだから」という正当化のもと不正に手を染めていうことになります。
良好なコミュニケーションのベースには確固たる倫理観が必要であり、その
倫理観を徹底することが必要となります。

 このような不正リスク管理に関する対応のガイドラインとして、9月28日に
COSOとACFEが共同で不正リスク対応ガイド管理ガイド(Fraud Risk Mana
gement Guide)を公表しました。本日はその内容をご紹介します。

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■ 1.不正リスク管理ガイドの位置づけ
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 皆さんCOSOはよくご存じかと思いますが、1992年に内部統制のフレーム
ワークを公表しているアメリカの民間団体です。内部統制をサイコロの形で
示す「COSOキューブ」が有名です。日本ではこの初代の内部統制フレーム
ワークが日本の内部統制報告制度(J-SOX)とも密接に関連しているため有名
ですが、実は2013年に改訂が行われています。
 この2013年の改訂版COSOでは、内部統制システムが有効であるための
17原則が定められています。このうちの原則8に以下の記載があります。

 「組織は内部統制の目的の達成のリスク評価に際して不正の可能性を検討
する。」(訳はACFE JAPAN)

そして、この原則に従うということにより実践的なガイダンスを示したものが
今回公表された「不正リスク管理ガイド」となります。
 なお、COSOはアメリカの上場企業であれば強制的に適用になりますが、不正
リスク管理ガイドは強制適用ではないそうです。ただCOSOが公表したという
ことの意味は大きく、今後多くの企業に影響を与えると言われています。

 日本企業においては、COSOが強制適用されているわけではなく、内部統制に
関しては、会社法で求められる内部統制決議とJ-SOXです。ただ、不正リスク
に具体的にどのように対応すべきか悩まれている会社においては多いに参考に
なるガイドになるかと思います。

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■ 2.不正リスク管理ガイドの記載内容
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 不正リスク管理ガイドでは、不正リスク管理の原則(5原則)と不正リスク
管理プロセスが記載されています。
 
 不正リスク管理の原則は内部統制の5つの基本的要素と関連している下記の
5つとなります。


原則1(統制環境と関連)
組織は、取締役会及び上級経営者の期待と彼らの不正リスク管理に関する誠実
性と倫理的価値観に対するコミットメントを表明する不正リスク管理プログラム
を確立し伝達する。

原則2 (リスク評価と関連)
組織は、具体的な不正スキームとリスクを識別し、不正の発生の可能性と重大性
を測定し、既存の不正対策活動を評価し、不正の残存リスクを軽減する対策
を実施するため統合的な不正リスク評価を実施する。

原則3 (統制活動と関連)
組織は、発生する、または適時に発見されることのない不正リスクを軽減する
ための防止的・発見的な不正対策活動を選定、開発、実施する。

原則4 (情報と伝達に関連)
組織は、潜在的な不正についての情報を入手するための情報伝達のプロセスを
確立し、調査および不正に適時にかつ適切な方法で対処する是正措置への
組織的な取組を採用する。

原則5 (モニタリング活動に関連)
組織は、不正リスク管理の5つの原則の各々が存在し、機能し、運営されている
かどうかを確認するための継続的な評価方法を選定、開発、実施し、不正リス
ク管理プログラムの不具合を、上級管理者と取締役会を含む是正措置の実施に
責任を負う当事者に適時に伝達する。

 また、上記の原則を遵守するための不正リスク管理プロセスとしていわゆる
PDCAサイクルが記載されています。

組織ガバナンスの一部としての不正リスク管理方針の確立

統合的な不正リスクの評価の実施

予防的・発見的不正対策活動の選択、開発、実施

調査と是正措置のための組織的な取組と不正報告プロセスの確立

不正リスク管理プロセスの監視(モニタリング)、結果の報告、プロセスの改善

なお、今回のガイドには豊富な資料編があり、テンプレート、実例、チェック
リスト等が用意されていることも大きな特徴です。

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■ 3.不正リスク管理原則の中で特に留意すべき点
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 上記でご紹介した不正リスクの管理原則の中で、現在の日本の不正リスク
対応で最も難しいのは、原則1で言われている不正リスク管理に関するトップ
のコミットメントかと思います。
 不正というとどうしても「粉飾決算」等の財務諸表関連の不正を考えがち
ですが、不正リスクマネジメントで管理すべき不正は財務報告だけに限った
ものではありません。原産地偽装、環境データ改ざん、マンションの杭打ちの
データ改ざんなどの非財務情報に関連する不正やカルテルなどの取引法関連
の違反、労務管理関連等非常に幅広いが含まれます。 このため、一言で
「不正リスク管理」といっても単に内部統制関連の部署や内部監査部門だけで
なく、ほぼすべての部署が関連する取組が必要となります。このような場合、
不正リスクマネジメントに号令をかけられるのはトップのみです。逆にトップ
が不正リスクに対して関心がない場合は、不正リスク管理が効果的に根付く
ことはありません。
 ただ、不正リスク管理について統合的にトップが明確にコミットを表明し、
全社的に取り組んでいる会社はとても少ないのではないでしょうか。

 また原則4の「潜在的な不正についての情報を入手するための情報伝達の
プロセス」についても誤解があるように思います。このような情報伝達のプロ
セスといった場合には、いわゆる「通報窓口」を想定される方が多いと思い
ます。もちろん通報窓口は隠れた不正を明らかにする手段として重要で、企業
は、通報者の保護も含めて適切に整備をすべきものです。
 ただ、通報窓口を整備すればいいというものではありません。
 大きな不正が生じた会社の調査報告書の中で不正が生じた背景としてよく
指摘されることとして「コミュニケーション不足」「無関心、無批判」
「上司にものが言えない雰囲気」といったことがあります。何かおかしいと
感じた時に「おかしい」とか「どうして」といったような声が自然と起きる
ような普段からのコミュニケーション、信頼関係を築いておくことも非常に
重要です。 そうすることで、不正があったとしても小さい問題のうちに
早期に是正することができます。
 
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■ 4.実務で活かすために
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 不正リスク管理を「具体的に」どのように実施していけばいいのか悩んでいる
方も多いかと思います。今回公表された不正リスク管理ガイドはチェックリスト
やスコアカード等のツール類も豊富にありますので、まずは手をつけやすい
ところから導入していくのもいいかもしれません。

 なお、今回公表されたガイドは、エグゼクティブサマリーがCOSOとACFEの
サイトからダウンロードできます。実務に使える資料編を含んだ本編(英語)
はACFE、COSOのサイトから購入することができます。また、エグゼクティブ
サマリーのに日本語訳は、ACFE JAPANのホームページからダウンロードできます。

https://www.acfe.jp/notice/post-110.php

また、本編の日本語への翻訳も検討されています。本編は結構なボリュームに
なりますので日本語訳で見ていただくといいでしょう。
 
 ビズサプリグループでは、企業不正・コンプライアンス関連の内部統制構築
内部監査手続についてコンサルティング、インハウスセミナーを実施していま
す。企業不正リスク管理についてもお気軽にお問合せ下さい。
 

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。
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