株式会社Bizsuppliのメルマガバックナンバー

会計を中心とした実力派プロフェッショナル集団であるビズサプリのメンバーが、旬のネタや色々な物事への洞察を記載したメルマガのバックナンバーです。

オリンピック

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.035━2016.08.17━

【ビズサプリ通信】

▼ 引き続きオリンピックの話題です

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

こんにちは。ビズサプリの花房です。

オリンピック閉会まであと数日となりました。日々の日本人選手の活躍を見よ
うと、寝不足の日々が続く方も多いかと思います。日本人選手の活躍は、萩野
選手の金メダルを始め、男子体操では団体金メダル、個人総合での内村選手の
金メダル、男子柔道でも初の全7階級でのメダル獲得等、メダルラッシュが続
いています。そして男子テニスでは何と96年ぶりの快挙ということで、錦織選
手が銅メダルを獲得しました。この勢いだと、メダル獲得数の目標30個は越
え、2004年のアテネの37個、2012年のロンドンオリンピックの38個にどれだ
け迫るか、期待したいところです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 1.オリンピックから気付かされること
----------------------------------------------------------------------

まだ日本人選手の出る競技が全て終わったわけではないですが、圧巻だったの
は何と言っても、内村選手の2大会連続金メダルではないでしょうか。世界選
手権6連覇を入れると合計8連覇ということで、8年間も男子体操で世界の頂点
に居続けるのは並大抵のことではありません。

そしてオリンピック開催中の8月7日、大リーグではイチロー選手がメジャー
通算3千本安打の大記録を達成し、日本人初の大リーグの殿堂入りも確実視さ
れています。

このような偉業の裏側には、日々のトレーニングの積み重ねがあるのは言うま
でもありません。もちろんそれぞれの分野での才能は必要でしょうが、常に向
上心と情熱を持ち、また良きライバルがいて、結果を振り返ると、頂点を極め
ていたということだと思います。

このようにトップアスリートとして称賛を浴びる人、それで食べていける人は
ほんの一握りで、その下には膨大な人数のプロ、そしてアマチュアのアスリー
ト達がいます。皆が同じように努力をしても、勝負事は必ず勝ち負けがあり、
それは気力・体力・時の運など様々な要素に左右されるのですが、試合の日に
一番高い能力を引き出せるよう、気力や体力のピークの照準を合わせられるの
が一流選手の最低限の条件で、そこに時の運と言った不確実な要素が加わりま
す。

もちろん、勝てない選手、万年補欠の選手、プロになれないアマチュアの方達
など、努力が最終的に結果として報われないことの方が圧倒的に多い訳ですが、
しかしその方達が努力してきたことは決して無駄ではなく、集中力の高さだっ
たり、礼節といった基本動作だったり、いざというときの判断力など、その後
の人生に必ず影響を与えていると思います。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 2.オリンピックの未来像

----------------------------------------------------------------------

最近は、ポケモンGOに代表されるように、拡張現実(AR:Augmented Reali
ty)や仮想現実(VR:Virtual Reality)の話題が高まってきました。人口が
増えて物理的な世界がどんどん狭くなっていくこととも相まって、資源をあま
り消費しないこれらの新たな世界の拡張は、時代のニーズに合っている気が
します。何度も繰り返し疑似体験ができるこのような仕組みを使って、新たな
トレーニング方法もこれから考案されてくるでしょうし、スポーツ選手もこれ
らの技術を積極的に取り入れて行くかもしれません。

また最近はロボット産業に進出する大企業やベンチャー企業が増えてきていて、
今までは工場などごく一部でしか見られなかったロボットという存在が、今後
は日常生活のいたるところに当たり前のように出てくる近未来が予想されます。
最近は小売店でソフトバンクの『ペッパー』が受付などに置かれることが増え
てきており、発売当初は物珍しさで人が集まっていましたが、最近は『ペッパ
ー』が立っていても通りすがりの人に無視されている光景を見ると、ちょっと
かわいそうな気がします。それだけ人間味のあるロボットとして上手く出来て
いることなのでしょうか?

今後AR/VRとロボットが融合していくことで、ガンダムのように人間がロボッ
トに乗り込む、あるいは遠隔で人間がロボットを操作し、ロボット同士を競わ
せるような、馬術やポロ競技の進化版、ロボット版格闘技と言ったものが将来
登場する可能性を考えてしまいます。技術の発達により、従来は空想の世界、
漫画の中だけの話だったものが、現実に登場する可能性も出てくるでしょう。

毎回競技の入れ替えがあるとは言え、しかし紀元前に行われていた古代オリン
ピックが起源とされ、100年以上続く由緒ある近代オリンピックが、人間の肉体
の限界に挑戦することを趣旨として貫くならば、ロボットが乗り物としてでも
競技の中に登場することはないでしょうか。

ただ、実際に競技場で直に見なくても、自宅のテレビで臨場感を持って、単な
る映像を超えて体験ができるような技術は、今後の技術革新によって可能とな
り、オリンピックの楽しみ方が変わりうるかもしれません。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 3.ソフトバンクによるARM社買収について

----------------------------------------------------------------------
話しは変わりますが、ちょうど1ヶ月前の7月18日に、ソフトバンクグループの
孫社長は、イギリスの半導体設計大手であるARM社を日本円換算3.3兆円で買収
することを発表しました。これは株式市場においてネガティブな驚きをもって
評価され、発表後の週明け7月19日の株価は5,387円と、買収発表前の6,007円
から1割下落し、10日ほどは5,300円前後の株価水準でした。

しかしその後、第1四半期決算発表の7月28日以降は上昇基調に転じ、昨日の終
値で6,802円と、買収直前の株価から13%増し、買収発表直後の5,387円から
だと26%も増加しています。ARM社の買収が今後どのようなシナジーをもたら
し、どの程度の貢献があるかはっきりはしていませんが、既存事業の業績の
固さが安心感をもたらしているのかもしれません。

実際キャッシュ・フローで見ると、ソフトバンクはこの第1四半期で約6,800億
円のEBITDA(償却前利益)を稼ぎ出していて、単純に年間ベースだと2.7兆円
規模のキャッシュを生み出しています。2016年3月期通期の年間EBITDAは
2.4兆円でしたから、仮に毎期2.5兆円のキャッシュ・フローを生み出せれば、
2016年6月末の有利子負債合計12.3兆円に、今回のARM社買収で新たに借り入
れるとされる1兆円の合計13.3兆円は、約5年ちょっとで返済できる計算です。

もちろん既存事業の設備投資を継続的に行わなければならず、特に経営再建中
のスプリントは今後も積極的な設備投資が必要であり、今回のARM社の買収に
よって、経営立て直しが遅れるのではないかといった懸念も当初の株価下落の
要因にあったようですが、冷静に現状のキャッシュ・フロー水準を見ると、借
金の絶対額は巨額であるものの、返せない金額ではないということが分かって
きたということでしょうか。

またソフトバンクは虎の子のアリババ株も未だ発行済株式の32%を所有してお
り、持分法適用会社であるためソフトバンクのB/S上の簿価は1.2兆円に対し
て、上場を果たしたアリババ株の時価は、7兆円ほどあるので、仮に現在以上
の株価のまま売却できれば、借金は半減できることになり、その安心感もある
のかもしれません。

いずれにしても今後は、投資家の期待通り既存事業の成長を維持し、スプリント
を見事に再生させ、新たにグループに取込むARM社のシナジーを最大限に発揮
できるかが焦点になって来るでしょう。特にシナジー効果についてはソフトバン
クの既存事業との直接的な結びつきが見えない中、孫社長は「囲碁でいえば飛び
石。10手先、50手先を考えて打った」と説明されています。おそらく常人には
考えもつかないような未来図を孫社長は描いており、その中では着実にARM社
の果たす役割は重要だということでしょう。

あるビジネス誌においても、ARM社はIoT時代のプラットフォームの中核の1つ
で、もちろんそれだけではプラットフォームを作り上げることはできないが、
重要な要素の1つであり、今後足りないものを継ぎ足して行ってIoTのプラット
フォームを作り上げて行くような趣旨の発言をされていました。そしてそれが
AI(人工知能)とも繋がっていくと。ソフトバンクの開発したロボットである
『ペッパー』は感情エンジンを持つAIを備えたロボットで、これがARMの技術
と最終的にはシナジーを有し、我々の生活にとって意義のある新たなものが
生み出されるということでしょう。

優れた経営者の方は、いつも時代の数歩先を予測し、そこで必要とされるもの
を開発することで、会社を成長させてきました。事業意欲と言ってしまえば簡
単ですが、おそらくもの凄い執念をもって時代を変えて行く気概を備えないと、
大事を成すことはできないと思います。そしてそのようなこだわりというか意
識の高さは、トップアスリートにも通じるものがあると思います。いつの時代
も常人には理解しがたい発想は、ともすればほら吹きやペテン師、ドンキホー
テ的と言われ兼ねないですが、自分の描いた世界を信じ抜くことで何かをやり
遂げた例は数えきれません。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 4.志をもって努力することの大切さ
----------------------------------------------------------------------
スポーツ選手の話に戻りますが、その世界で一流になるには努力は絶対に欠か
せません。それはただやみくもに連取するわけではなく、スポーツ科学という
言葉もあるように、理論的に正しい練習を考えながら行い、かつ何かをやり遂
げようという志、すなわち高い目標意識を持って取込む必要があります。そし
てそのような形で努力することは、ビジネスで成功するためにもやっぱり必要
なことだということです。

ある程度物事が出来るようになると、人間というのは少しでも楽をしたがる生
き物なので、気を抜くとついつい惰性で仕事を回しがちになります。そうする
と単純作業に近いものになってきて、面白味もかけてくると思います。やはり
仕事とは常に変革するつもりで、考えながら取り組み、それに必要な足りない
ものを勉強したり、新しいことを取り入れると言った、たゆまぬ努力が必要で
す。

オリンピックは4年に1度の祭典ということもあり、日本人選手の活躍や、世界
の注目選手の技等、限界まで挑む人間離れしたプレーを見るだけで十分面白い
のですが、その裏側には1日も休まず練習を続けている姿があることを想像する
と、頭が下がる思いになるとともに、自分自身が最近ちょっと努力が足りない
んじゃないかと反省したりして、少し心に活を入れるいい機会となりました。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ドーピングとオリンピック

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.034━2016.08.03━

【ビズサプリ通信】

▼ ドーピングとオリンピック

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

こんにちは。ビズサプリの辻です。

リオデジャネイロオリンピックまであと2日です。ジカ熱、テロ、治安悪化、
不況等々多くの不安材料がある中、日本選手もぞくぞくと出国しリオ入りして
います。毎日練習をこなし、厳しい選考レースを勝ち抜いてきた選手のすべて
のみなさんが日頃の成果を思う存分発揮して、晴れ晴れとした舞台を全力で楽
しんでいただきたいと心から願います。

一方、すっかり商業化したオリンピック、大きなお金が動く祭典として様々な
スキャンダルの舞台ともなっています。特に今回は、ロシアのドーピング問題が
本番直前になってもまだ未解決です。今日は、ドーピングについて考えてみたい
と思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 1.ドーピングとはなにか
----------------------------------------------------------------------

ドーピングは、一般的には「競技でよい成績を納めるため、何か良くない薬物
を使って、筋肉を増強したり興奮状態を作り出すこと」といったイメージかと
思います。ドーピングの定義は、世界アンチ・ドーピング規程(World Anti-
doping Code)の第1条で定められています。そこでは、「ドーピングとは、本
規程の第2.1項から第2.10項に定めらているアンチ・ドーピング規則に対する
違反が発生すること」と定められています。第2.1項から第2.10項では「競技
者の検体にアンチドーピングのマーカーが存在すること、つまりドーピングの
陽性反応がでることに加えて、禁止薬物・禁止方法の使用を企てること、
検体の採取を拒否すること、虚偽の報告をすること、禁止薬物を保有すること、
禁止薬物の不正取引すること、禁止薬物を投与することなどが定められていま
す。禁止方法というのは聞きなれない言葉ですが、例えば「自分の血液を冷凍
保存して試合の直前に体内に入れる」「検体をすり替える」「遺伝子操作をす
る」等薬物以外の「方法」も禁止されることを指します。

ちなみに、ドーピングという言葉の由来は、南アフリカ共和国の原住民が、
お祭りの時に景気づけに「トップ」という強いお酒を飲んでいたことが由来
だそうです。言葉の由来自体は、とても明るい人間らしいものなんですね。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 2.ドーピングの起こる背景

----------------------------------------------------------------------

オリンピックでは、毎回ドーピング問題が報道されます。特に今回、ロシアの
ドーピング問題では、組織(=国)ぐるみでドーピングを実施していたようで
す。報道によると、オリンピック前に陰性の検体を冷凍保存し、ドーピングを
検査する施設の壁に穴を開け、その穴から大会中に採取された陽性の検体と
すり替えるというまるで映画のような手口が明らかにされました。そして
組織(=国ぐるみ)となってしまうと、一個人、一競技団体はもはや声を挙げ
ることができなくなってしまいます。「上司の指示でおかしいと思いながらも
不正に手を染め身動きできない」過去にあった組織ぐるみの企業不正と状況
は変わりません。

それでは、スポーツの祭典にどうして国家がここまでこだわるのでしょうか。
オリンピックは、各国の代表が○○人代表という肩書を背負って他の国と
スポーツを通じて争います。このため、「自分は○○人」という意識を持ち
やすい側面があります。つまり、日本人を一生懸命応援することで、ごく自然
ナショナリズムが高揚している状態になります。この状態は、主権国家の指導
者側にしては、とても都合がいい状態です。そうしたスポーツからもたらされる
ナショナリズムの熱狂が政治的に利用されやすいということになるのでしょう。
2020年の東京オリンピック招致が決まったあの「TOKYO」と言われた瞬間
の熱狂を思い出すと、なんとなくうなずけます。

奇しくもロシアのプーチン大統領は、2000年のシドニーオリンピック選手団の
壮行会で、「スポーツでの勝利は、100の政治スローガンより国を団結させる」
と演説したそうです。2010年のバンクーバーオリンピック冬季オリンピック
で金メダルが3個と低迷したのをきっかけに、自国開催のソチオリンピック
の国家の勝利に導く必要があったように思われます。企業不正の概念でいうと、
ソチオリンピックでは、なんとしても金メダルを多くとらなければならない。」
というプレッシャー(動機)があったということになります。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 3.告発者の保護と処分の在り方

----------------------------------------------------------------------
今回のロシアの国家的ドーピング事件の発覚の発端は、内部告発でした。
ロシアの陸上女子中距離のユーリア・ステパノワ選手と、夫でロシア反ドーピ
ング機関の職員だったビタリー氏がロシア代表のコーチとのやりとりを隠し撮り
し、それをドイツのドキュメンタリー番組に提供したことで発覚しました。

ユーリア・ステパノワ選手は、反ドーピング活動への貢献が評価され、国際
陸連からは個人資格の「中立の選手」として国際大会出場を認められていま
したが、国際オリンピック委員会IOC)は、24日の緊急理事会でドー
ピング違反歴があるということでリオ・オリンピックへのロシア代表としての
参加を認めませんでした。

この判断に対して、「告発者が保護されないのであれば、組織ぐるみ、国ぐるみ
で行われるドーピングに対して勇気ある告発をする者はいなくなる」という批判
が出ています。告発者本人からも「事実誤認に基づいた不公平な決定」
「ドーピングで処分期間が終了した選手に、追加で制裁を科す形となる今回の
決定は法的に認められない」との非難の声明が出ているそうです。

不正の実態調査結果である「Report to the nations 2016」によると、
企業不正の発覚の発端で一番多いのが告発によるもので、内部監査や外部監査
を大きく引き離して毎回トップの座を譲ることはありません。
組織ぐるみの犯罪は、勇気と覚悟をもった誰かが告発をしない限り発覚する
ことが困難であることの証でしょう。

また、IOCはロシアのリオデジャネイロ大会の参加に関して、「過去にドーピング
歴がなく、また各競技団体が認めた場合」にオリンピックへの参加を認め、
ロシア選手団の全面除外を求めた世界アンチドーピング機関(WADA)の勧告を
受け入れませんでした。これについて「国家ぐるみで悪意をもった行為に対して
生ぬるい」という処分の重さに対する批判があります。日本アンチドーピング
機構(JADA)の専務理事は、「オリンピックの価値に対して非常に大きな汚点を
残した気がする」と発言をしていますし、英国のマラソン選手ラドクリフさん
は自身のツイッターで「クリーンなスポーツ界にとって悲しい日だ」と強く非難、
ロンドン五輪の陸上男子走り幅跳びで金メダルに輝いたグレッグ・ラザ
フォード選手(英国)は「双方にいい顔をしようとする、意気地なしの決定」
と強く切り捨てています。スポーツ評論家の玉木正之氏は、「スポーツが政治
に負けた」という趣旨の発言をされていました。

不正があった場合、その不正の責任者、実行者をどのように処分するか、それに
よって再発防止への覚悟を読み取ることができます。今回のIOCの判断はそれを
他人に丸投げするもので、今後もオリンピックとドーピング問題は続いてしまう
ことになりそうです。

さらに、オリンピックへの参加の可否の判断を各競技団体へ丸投げしたこと
についても強く批判が出ています。「オリンピックの開催までに2週間を
きったこの時期に、ロシア選手の出場の可否判断を各国際競技団体に押し付けた
決定は、IOCの身内からも「責任放棄」と批判的な声があがった」
共同通信社)と報道されています。
丸投げされた側の各競技団体も困ってしまいます。結局、時間切れで、
すでに結論を出した陸上と重量挙げを除けば、大半のロシア選手がリオ出場
を認められる方向になりそうです。でも、なんとも後味が悪い結論です。
ロシアの選手が表彰台に上がった時、心の底から祝福できるのでしょうか。

商業主義を目指し膨張してしまったオリンピック。毎回巨大な赤字を生み
出すお化け大会となってしまいった今、「勝てば何でもOK」でなく、
正しい努力で勝つ大会にしていかないと続かないところまで来ているので
しょう。ちょうど、企業が「儲ければ何してもいい。」のではなく、コン
プライアンス、環境、様々な利害関係者と上手な関係を築きながら継続的
に成長をしていくことを目指していくように。

次は、東京オリンピック。新しい知事のもと、脱商業主義、クリーン
でコンパクトなオリンピックへの第1歩となるといいなと思っています。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 4.私のイチ押し

----------------------------------------------------------------------
私事ではありますが私は大学まで陸上部、中長距離をやっていました。このため
オリンピックでは陸上、特に400、800、1500、5000、10000mを楽しみにして
います。ただ、100mやマラソンのような注目度はなく、なかなかテレビ
で映してくれないのが悩みどころ。私の推しメンは、男子5000、10000mの大迫
選手、女子5000、10000mの鈴木選手です。この競技のメダルは、強いアフリカ勢
がいるので難しいかもしれませんが、積極的な走りで入賞を目指してもらいた
いです。

4年に一度のスポーツ祭典。日本選手を応援するもよし、世界のトップ選手の
人間離れした技や速さを楽しむのもよし。4年後の東京に思いを馳せながらオリ
ンピックを楽しみましょう。今年の夏は寝不足の夏になりそうです。


本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

賛否両論のトヨタの種類株式

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.033━2016.07.20━

【ビズサプリ通信】

▼ 賛否両論のトヨタの種類株式

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ビズサプリの久保です。

 九州から東海までは梅雨明けしました。関東もそろそろ梅雨明けです。
これから毎日暑い日が続きますが、熱中症にはお気をつけください。外より
部屋の中で発症する人が多いそうです。

 ご存知の通り、昨年7月トヨタ社債のような株式を発行しました。
これは、コーポレートガバナンス上いろいろな話題を提供しました。
ここで一度、どのような株式だったのか、そして何が問題だったのかをまとめ
ておきましょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 1.  株主に有利な発行条件
----------------------------------------------------------------------

? まず、発行条件を見てみましょう。配当率が「初年度発行価格に対して
0.5%で、それ以降毎年0.5%ずつ増加し5年目以降2.5%固定」となっています。
これを見たら、マイナス金利となった今、買っておけばよかったと思っている
方も多いかもしれません。実際、予定発行数の10倍の申し込みがあったそう
です。
 これは株式ですが「譲渡制限があるため非上場」になります。トヨタはもち
ろん上場会社ですので、発行する株式は証券取引所で自由に売買できます。
その株式は普通株式です。種類株式は普通株式ではなく、いろいろ条件をつけ
た株式なのです。
 
会社法第108条1項では、株式会社は「異なる定めをした内容の異なる2種類
以上の株式を発行することができる」としており、その内容として剰余金の
配当、残余財産の分配、株主総会における議決権、株式の譲渡制限などを挙げ
ています。
 
種類株式の代表格としては優先株式があります。これは剰余金の配当または
残余財産の分配が他の株式に優先する株式です。昨年トヨタが発行した種類株
式は、配当と譲渡に条件が付けられた株式ということになります。なお、この
種類株式の株主は、株主総会での議決権を制限されませんので、その点は普通
株式と同じです。
 非上場株式ということで、一旦買ったらいつまでも売却できないのでは困り
ます。この種類株式を買った人は「2020年10月以降、年2回(4月・10月) 」に
「発行価格」でトヨタが買い取ってくれるという条件が付いています。
また、「2021年9月以降、年4回(3・6・9・12月) 」には普通株式に1:1に
交換してくれるという条件も付いています。すなわち、元本保証で普通株式
の転換(交換)の権利も付いています。ただしそれは取得から5年後です。
 「発行価額は2015年7月2日から7日のいずれかの日のトヨタ普通株終値
に26%から30%を上乗せした水準」で決まるということでしたので、5年後の
株価がそれより上がっていれば、普通株式に転換したあと売却すると売却益が
得られます。5年後の株価が下がっていれば、買い取り請求すれば発行価格
(元本)でトヨタが買い取ってくれるので売却損は発生しないという条件です。
  トヨタとしては、いつまでもこの種類株式が残っていても困る場合があるの
で、トヨタには、種類株式を保有者(株主)から買い取る権利が付与されてい
ます。普通株式に転換は、株主だけに付与された権利です。トヨタが一方的に
普通株式に転換するということはありません。トヨタが決められるのは、発行
価格(元本)での買い取りです。

投資家から見た場合、これを5年社債だと考えると年0.5%から2.5%のちょうど
真ん中の1.5%利率がついた社債だと考えられます(本当は、利息の現在価値で
比較する必要がありますが、ここではそれは考えません)。トヨタのような
格付けの高い(S&PでAA-)会社の劣後債(株式に近い社債)と考えた場合、
1年前の状況では高い利率であったと思います。昨年11月に発行されたソフト
バンク(S&PでBB+)の7年無担保社債は2.13%でした。このトヨタの種類株式
を5年ではなく7年持っていると単純平均で1.7%の利率になり、さらに長く
持っていたら通算利率は2.5%に近づきます。

忘れてはいけないのは、これは普通株式への転換条件付きの株式ですので、
株式取得の5年目以降に発行価格に比べて株価が高くなっているようだと、
上述したように普通株式に転換して売却益が得られる可能性も秘めているとい
うプラスもあります。発表直後に申し込みが殺到したのも納得できます。
 ちなみに、「AA型」種類株式という名称はトヨタが付けた名称であり、AA型
はどんな型なのか法律で決まっているわけではありません。A種、第一種など
という呼称もあります。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 2.  長引いた昨年の株主総会
----------------------------------------------------------------------
 
 種類株式を発行するためには、定款の定めが必要です。このため、種類株式
を発行する会社は、定款変更を行う必要があります。定款変更には特別決議す
なわち、総会出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。このため、
普通決議は過半数の賛成で承認されますので、種類株式の導入には一定のハー
ドルがあるのです。
 昨年のトヨタ株主総会は3時間2分かかったそうです。これまで他社が発
行したことがないような珍しい発行条件なので、それに対する質問もあったと
は思います。それにも増して、このような種類株式には後述するようなコーポ
レートガバナンス上問題があるという意見や質問が多かったのも確かです。
結果として、この定款変更決議には、反対票が24%あったそうです。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 3.  コーポレートガバナンス上の問題
----------------------------------------------------------------------
 
 コーポレートガバナンスの観点からは、コーポレートガバナンス・コードに
も書かれているように、企業は中長期的な企業価値の向上を目指すことが求め
られます。そういう点では、短期視点の株主より中長期視点の株主が増えるこ
とは望ましいことです。トヨタの種類株式は最低5年間保有することになりま
すので、中長期の株主を増やす点では優れていると言えます。
 これに対して「スチュワードシップ責任を負った機関投資家株主の多くが、
トヨタの種類株式発行に賛成したことは理解できない」といった意見がありま
した。これはなぜでしょうか。

 元本保証と毎年0.5%ずつ配当率が増加することを約束し、それと引き換えに
5年間は譲渡できないようにするということは、「物言わぬ株主」を多くつく
ることになるからだと思います。
 言い方を変えると、会社の経営に不満がある株主は、株式売却という究極の
選択がありますが、それを選択できない代わりに固定的な配当で満足する株主
を増やすことになるということです。
 株主の権利を制限するような種類株式を発行するという議案には、普通株式
を保有する株主は反対すべきだというのが、上記の反対意見の趣旨です。国民
の年金を運用するGPIF、ゆうちょ銀、生保などは、国民、個人、企業から預か
った資金を運用する機関投資家株主です。その立場からみるとこのように「物
言わぬ株主」をつくる種類株式は望ましくない、ということです。
 結果として、大多数の機関投資家株主はトヨタの種類株式に賛成したのです
から、まだまだスチュワードシップ・コードを理解した「物言う株主」として
の行動が身についていないということかもしれません。ただ、第1回の種類株
式発行は発行済株式数の約1.4%で、発行上限はその4.5%程度ですので、これく
らいなら問題ないということで賛成したということも考えられます。

 トヨタは、このような「奇策」を使わなくても、中長期安定株主を増やすこ
とはできるはずだ、という意見もありました。中長期株主の確保のためには、
株主優待制度がよく使われます。少なくとも、この社債的な種類株式の発行は、
個人株主から歓迎されたとしても、コーポレートガバナンスの観点からは、
特に譲渡制限がある点が望ましくないと思います。読者の皆さんはどのように
考えますか。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

収益認識とキャッシュフロー経営について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.32 ━ 2016.7.6 ━


【ビズサプリ通信】

▼収益認識とキャッシュフロー経営について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

ビズサプリの三木です。

「売上はすべてを癒す」というのはダイエーの創業者である中内功さんの名言
ですが、私も小さいながらも会社を営むようになって売上の大切さが実感でき
るようになりました。
ボトムラインの利益がいくら重要でも、その源泉たる売上がないとどうにもな
りません。

今回のメールマガジンでは、売上、すなわち収益の認識基準をめぐる最近の動
向を踏まえながら、キャッシュフロー経営とのつながりを考えたいと思います。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 1.売上を分解してみる

----------------------------------------------------------------------

業態により多少違いはあるものの、一般的には以下のようなステップで会社は
お金を稼いでいます。

(1) 受注
(2) 製品やサービスの提供
(3) 請求
(4) 入金

(1)は双務契約で、売手は商品を提供する義務を負い、対価の金銭をいただく権
利を得ます。
(2)は双務契約の片方、売手が義務を果たしたことを意味します。
(3)は双務契約のもう片方である対価を求める行為であり、
(4)で権利や義務が全て精算されることになります。

収益認識とは、このステップのどこで売上を計上するかという問題にほかなり
ません。

現金主義だと(4)で売上計上です。
対価の確実性に軸足を置けば(3)、義務を果たすことに軸足を置けば(2)が収益認
識のタイミングになります。

会計ルールは(2)ですが、実務上は(3)で経理処理をして、決算時だけ(2)に調整し
ている会社も多数存在します。また、(2)の中でも何をもって義務完了とするか
バリエーションがあり、出荷なのか着荷なのかといった議論があります。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 2.収益認識基準の動向

----------------------------------------------------------------------

2014年にIFRSと米国基準で足並みをそろえて収益の新基準が発表されました。
2018年1月以降に開始する事業年度から適用されます。

この基準はメルマガで語りつくせないほど複雑・かつ精緻なものですが、収益
は義務を果たした時に認識する、というのが一貫した考え方です。

こうしたIFRSと米国基準の動きを踏まえ、我が国でも収益認識基準が検討され
ています。
2016年2月4日に企業会計基準委員会が「収益認識に関する包括的な会計基準
開発についての意見の募集」という文書を公表し、5月末までコメントを募集し
ていました。
今後の方向性は未確定ですが、当然ながらIFRSや米国基準を相当に意識した基
準開発となるでしょう。

なお、この基準の内容はメルマガで語りつくせる内容ではありません。
当社での勉強会も考えてしておりますので、ご要望やご意見などお寄せいただ
けますと幸いです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 3.売上タイミングと債権管理

----------------------------------------------------------------------

皆さんの会社は、複式簿記を使っていると思います。
貸方に売上が計上されると、通常は同時に売掛金が計上されます。

(借)売掛金 (貸)売上

このとき、請求と同タイミングで売上を計上していれば売掛金はすべて請求済
ですが、製品やサービスの提供時点で売上を計上すると売掛金の中に請求済と
未請求が混在することになります。

売掛金の中に請求済と未請求があるのは煩雑に思えます。
しかしながらキャッシュフロー経営という点では、未請求の売掛金も含めて回
収管理すれば請求を早くすることにつながり、資金の回収も早くなるので好ま
しいと言えます。

このように、売上を計上するタイミングによって債権管理の範囲が変わります。
範囲が広いほど当然ながら仕事は大変ですが、会社全体としての資産効率を上
げるチャンスにもなります。

ちなみにこの分野では建設業会計が先駆者です。
工事サービスの提供に応じて段階的に売上と資産を計上し、請求が先行した場
合には前受金として未成工事受入金に計上します。売掛金も請求・未請求を区
別して管理することが一般的です。
ひとつの取引が大きく長期間にわたるため、こうした手法が発達してきたとい
えます。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 4.受注からのプロセス管理

----------------------------------------------------------------------

実はIFRSと米国基準の収益の新基準を開発していく際に、受注の段階から会計
処理することも議論されていました。
(最終的には求められてはいませんが、注記で関連情報の開示が必要です)

(1) 受注
(2) 製品やサービスの提供
(3) 請求
(4) 入金

前述したように①受注とは双務契約ですから、条件付きの債権(義務を果した
らもらえる)という資産と、履行義務という負債があり、

(借)条件付きの債権 (貸)履行義務

という仕訳が理屈の上では可能です。
見慣れない仕訳ですが、要は受注残を対照勘定で計上しているだけです。

(1)受注から(4)入金までが短縮できれば会社の資産効率は大幅に上がりますが、
(3)請求で売上計上している会社は帳簿上では(3)~(4)しか資産管理できません。
(2)で売上計上すれば管理範囲が(2)~(4)に広がります。
(1)受注から会計処理を行えば、理屈上は(1)~(4)まで帳簿で資産管理できます。

帳簿上はBSが膨らんで資産効率が悪化したように見えますが、実は見えていな
かった部分が帳簿に乗って管理の範囲が広がったことになります。

考えてみれば受注残は会社の大切な財産です。
受注を受けて、製造業なら生産計画を練り、サービス業なら人の手配をするな
ど、コストが発生します。
そうしたコストを早く回収するのはキャッシュフロー経営としては当然ですが、
現状では受注残はきちんと管理されていなかったり、「多いほうが良い」とい
う観点でしか見ていなかったりします。
受注残管理はたいてい営業部門の仕事なので「たくさん受注する」「できるだ
け積み上げる」ことに力点が置かれがちなのかもしれません。

帳簿に乗っていないものの資産効率はなおざりにされがちです。
しかしながら受注残も未請求債権も、大切な会社の財産。
本当のキャッシュフロー経営を目指すなら、①受注から④入金までをスピード
アップする観点も取り入れたいものです。

こうした管理を、帳簿を通して行うのかKPIのような指標で行うのか、やり方
はひととおりではありません。
わが国でも収益の基準が検討されています。世界的に収益の会計処理が検討さ
れていることを機に、貴社でも収益認識と会社の管理プロセスを紐づけて見直
してみてはいかがでしょうか。


本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

役員報酬について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.031━2016.06.23━
【ビズサプリ通信】

▼ 役員報酬について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

こんにちは、ビズサプリの庄村です。

梅雨明けが待たれる毎日ですが、お元気でいらっしゃいますでしょうか。
6月と言えば、3月決算の会社では、有価証券報告書の提出や株主総会の開催
等大きなイベントが待っています。
有価証券報告書の作成や監査対応、株主総会での想定問答集の作成等、お忙し
くされている方も多いと思います。

株主総会開催前のこの時期は、役員報酬に関する記事を新聞等でよく見かけま
す。
ソフトバンクグループが退任報道で話題となっているニケシェ・アローラ副社
長に支払った前期の役員報酬が約80億円であり、日本企業で過去最高を記録
した、という記事。LIXILグループの瀬戸社長が年間報酬の全額を株式で受け取
る方式に改めたという記事。ソニーの平井社長の報酬が前期比2.5倍の5億
1,300万円となった記事等が報道されました。

こんなに多額の役員報酬をもらっているのは、私たちからしてみれば大変羨ま
しい限りです。


今回のメルマガでは、役員報酬について考えてみたいと思います。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.コーポレートガバナンス・コードと役員報酬

----------------------------------------------------------------------

2015年6月1日より、わが国企業の収益力・稼ぐ力の向上や、中長期的な
企業価値向上に向け「コーポレート・ガバナンスコード」の適用が開始されま
した。
こうした取り組みの一つとして、会社役員へのインセンティブ制度の導入を促
進することが求めてられています。

その背景には、日本企業の役員報酬は依然として固定報酬中心であり、欧米と
比較して業績連動報酬や株式報酬の割合が低く、業績向上のインセンティブが
効きにくい状況であること。それに加えパフォーマンス・シェアやリストリク
テッド・ストックといった欧米で一般的に利用されている株式報酬の手法が未
発達であり、その結果、こうした報酬体系の違いからグローバルに経営人材を
獲得し、優秀な経営人材の獲得が難しくなることがあります。

アメリカでは時価総額の高い上場企業60社のCEO報酬平均が18億円程度
にくらべ、日本の上場会社の社長の報酬水準は、上位10%でも1億円程度で
す。アメリカでは報酬が高すぎると言われているものの、アメリカと日本の社
長報酬額の差はかなり大きくなっています。

役員報酬は多ければ良いわけではありません。多額のインセンティブが強引な
経営や粉飾決算の要因になることもあるし、インセンティブも何に連動させる
か十分に考えなければ思わぬ副作用を招きます。かといって定額では役員が粉
骨砕身しません。コーポレート・ガバナンスコードは、役員に的確な動きを促
す仕組みとして役員報酬をしっかり設計することを求めていると言えます。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■2.役員報酬の区分

----------------------------------------------------------------------

役員報酬は、「基本報酬」、「短期インセンティブ報酬」、「長期インセンテ
ィブ報酬」に区分されます。

基本報酬は、経営者の職務内容、能力、過去の実績等をもとに決定される固定
の金銭報酬で、業績等によって変動しない報酬です。

短期インセンティブ報酬は、1年で決済される役員報酬です。その代表格が役
員賞与です。
役員賞与の具体的な支給額の決め方は様々ですが、一定の業績指標の達成状況
に応じて支給額が決定されるのが通常です。業績指標の数値が一定水準に達し
ないときは、残念ながら役員賞与は支給されないこととなります。

長期インセンティブ報酬は、経営者に対して一定のインセンティブを与えるこ
とを目的とした報酬です。
長期インセンティブではストックオプションが一般的ですが、株式交付信託、
リストリクテッド・ストック(譲渡制限付き株式)、パフォーマンス・シェ
アなどがあります。

役員報酬全体に占める役員報酬区分を日本とアメリカで比較すると、日本で
は、基本報酬64%、短期インセンティブ報酬20%、長期インセンティブ
16%となっており、アメリカでは、基本報酬11%、短期インセンティブ
報酬22%、長期インセンティブ報酬67%となっています。
基本報酬と長期インセンティブ報酬の割合が逆になっていることが明確とな
っています。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■3.長期インセンティブ報酬

---------------------------------------------------------------------
ストックオプションは自社の株式をあらかじめ定められた行使価格で購入する
権利です。
株価が長期間低迷している状態ではインセンティブ機能が十分に発揮されない
ことから、権利行使価格を1円など低廉な価格とすることで株式保有と類似し
た状態を実現する株式報酬型ストックオプション(1円ストックオプション
の利用が近年増加しています。

株式交付信託は、報酬相当額を信託に拠出し、信託が当該資金を原資に市場等
から株式を取得した上で、一定期間経過後に役員に株式を交付する報酬プラン
です。

リストリクテッド・ストックは、一定期間の譲渡制限が付与された現物株式を
役員に付与するものです。
リストリクテッド・ストックを付与された役員は譲渡制限が解除されるまで株
式を譲渡できないため中長期的な株価向上のインセンティブが継続されます。

パフォーマンス・シェアは中長期の業績目標達成度合いに応じて現物株式を交
付するものです。

リストリクテッド・ストックやパフォーマンス・シェアは欧米では広く使われ
ていますが、日本ではあまり活用されていません。今後は広く導入されるよう
会社法や税法の改正も始まってるようです。
今後は、わが国でも採用する企業が増えてくるものと思われます。

 

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

税制度について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.030━2016.06.08━
【ビズサプリ通信】

▼ 梅雨入り前

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

日本は四季のはっきりした国です。ようやく朝晩も過ごしやすくなってきたか
と思っていたら、6月になり東京も今週から梅雨に入ったようで、曇り空か雨
模様の日が続いています。今年の梅雨は蒸し暑く、太平洋側は大雨の傾向と予
測されているようです。

夜歩いていると、最近心なしか、夜間の道路工事が多い気がします。気のせい
かもしれませんが、平日も夜になると都内のいたるところで、道路工事をして
います。道路工事は公共事業であり、財源は言わずもがな、我々国民や企業か
らの税金ということになります。

税金と言えば、今年4月に公表された、政権担当者を含む世界の富裕層や企業が
租税回避を行っていたことに係る機密文書であるパナマ文書が公表されて話題
となり、先日の伊勢志摩サミットにおいて、税と透明性について議論されまし
た。そしてサミット後の先週には、安倍首相は来年4月からの消費税率10%への
増税を延期することを発表しました。

今回のメルマガでは、税制度について考えて見たいと思います。

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■1.納税義務と租税回避

----------------------------------------------------------------------

そもそも税金はなぜ必要なのでしょうか?アメリカの国税庁に相当する建物の
入り口には、「租税は文明社会の対価である」(オリバー・ウェンデル・ホー
ムズ)と記されています。税金は文明社会における公共サービスや公共施設の
使用料、ということです。但し、使用料と言ってもサービスを受ける人が直接
対価を支払うのではなく、「税」という形で広く徴収し、実際に公共サービス
使う人は無料で、あるいは僅かな負担で済むことになります。

そして日本における納税は国民あるいは企業の任意ではなく、義務として日本
憲法第30条に規定されています。それは基本的に他の先進国でも同じです。
義務として定められているにもかかわらず、世の中には「租税回避」を行う人
がいます。富裕者層ほどその傾向が強いのだと思いますが、それは高い税金を
支払うことに対する納得感が欠如しているからと思われます。高い税金を支払
っても、その税金が適切に使われ、あるいは自分もその恩恵を受けることがあ
れば、文句を言ったり租税回避の行動に走ることもないのではないでしょうか。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■2.税金の使い道

----------------------------------------------------------------------

平成28年度の予算上の国の歳入約97兆円のうち、約6割の58兆円が税収です
(残りは国債の発行等)。地方税まで含めると、国及び地方公共団体の税収は
100兆円規模となります。これだけ多額の税収が一体何に使われているのかを
きちんと分かっている人はほとんどいないのではないでしょうか。

かくいう私も意識したことがなかったので国税庁のホームページ等で調べてみ
ると、国について言えば、税収と国債を合わせた100兆円のうち、一番多いのは
社会保障費で約3分の1を占めています。次に国債の償還や利払いに約4分の1、
地方交付税が約16%、続いて公共事業費6.2%、文教・科学振興費5.5%、防衛
関係費5.2%と続きます。社会保障と過去の借金の返済で実に約6割と、大部分
を占めていることになります。

公共事業が思ったより少ないと思いましたが、それでも絶対額は6兆円あります
から巨額です。90年代頃までは公共事業が盛んで建設国債の発行が多かったよ
うですが、近年は高齢化による社会保障費の負担増が国債発行の主たる要因で
す。国債は借金でいつかは将来世代が返さなければならないもので、今や国債
残高は1,000兆円を超え、国民1人当たりで800万円以上となります。毎年国債
として支出しているのが23兆円ほどですから、全て元本返済に回すとしても完
済まで40年以上かかる計算ですから、気の遠くなる話です。

社会保障費も年々増え続け、それがさらに国債残高を増やす要因となっている
訳で、構造的な問題をそのままにしていると将来世代の負担がどんどん増加し、
いわゆる世代間格差が拡大するのですから、少しでも早く抜本的な手を打たな
ければならないことは言われ続けている中で、政府が社会保障費の財源である
消費税の増税先送りを決断したことが与える影響は、相当大きいと感じてしま
います。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■3.社会保障と税の一体改革

---------------------------------------------------------------------

ここでいう影響というのは、高齢化の加速とともに加速度的に膨らむ社会保障
費の財源への、という意味です。『社会保障と税の一体改革』は、社会保障
充実・安定化と、将来世代への負担の先送りの軽減を達成するために、平成25
年に成立した法律に基づく政策で、消費税率を5%から10%に引き上げる増税
の5%分は全て、社会保障の財源とすることが前提となっていました。増税
よる財源規模は当時14兆円を想定していましたから、今回増税を延期した3%
分は約8兆円の財源に相当します。

8兆円を他の手段で賄うことは簡単にはできません。もちろん年金・医療・介護
子育て支援と言った社会保障給付は、税金だけでなく社会保険料も財源であ
り、税金と保険料の割合はおよそ40%対60%となっています。税収が足りなけ
れば保険料を増やせばいうのも乱暴な話ですし、そもそも急激な保険料の引き
上げは世間からは受け入れられないでしょう。そのために消費税の増税分を社
会保障の財源に充て、社会保障を安定化・充実するというのが、社会保障と税
の一体改革の骨子だったと思います。

収入がなければ使うことが出来ません、あるいは使う金額を変えないのであれ
ば、借金が増えるのみです。いつか景気が良くなったら実行すると言っていた
ら、手遅れになってしまうかもしれません。問題を先送りにするのも限界があ
ります。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■4.海外に逃げる富裕層

----------------------------------------------------------------------

水が高きから低きに流れるが如く、富裕層は税率の高い国から低い国へと資産
を移す傾向があります。せっかく稼いだ資産を税金に取られるのはもったいな
いという心理が大きいのでしょう。節税、それが行き過ぎた脱税は今に始まっ
たことではありませんが、経済がグローバル化し、お金の移動が自由に行える
現在において、金融資産や不動産を海外に持つ流れが加速しています。

国は不当な税逃れを防止するため、毎年12月31日に評価額が5千万円を超える
国外財産を有する者に対して、国外財産調書を税務署に提出することを求めて
います。平成26年度は提出者が約8千人、その総財産額は3兆円を超えますが、
未提出者も相当数いると思われます。未提出だと過少申告加算税が加重される
等の罰則がありますが、それもどこまで効果を持つか分かりません。

また昨年の7月1日からは、国外転出時課税制度が創設され、平成27年7月1日
以後に国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることを言います)
をする一定の居住者が1億円以上の対象資産を所有等している場合には、その
対象資産の含み益に所得税及び復興特別所得税が課税されることとなりました。

このように海外への資産移転に係る課税強化策が取られ、また大口の海外送金
情報を課税当局は掴んでいるようですので、租税回避を防止する網の目がだん
だんと狭まって来ていますが、合法で(グレーなものも含み)、複数の会社を
かませて複雑なスキームにして、お金の足跡を分かりにくくすることで、脱税
を試みることもあるようですので、課税当局と納税者のイタチごっこは終わる
ことはないでしょう。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■5.終わりに

----------------------------------------------------------------------

最初に税は文明社会の対価、公共サービスの使用料と書きましたが、使い道の
実態は、国債費を除くと社会保障費としての使い道が3分の1を占めるように、
実質は年金や医療費の給付として請けるものですから、警察や消防という受け
るか受けないか分からないサービスに比べると、誰もが恩恵を受けるものです。
但し、年金や医療費については、恩恵を受けるのは高齢者で、それを負担する
のは現役世代という世代間格差が大きな問題です。これは構造的な問題であり、
高度成長期には目立ちませんでしたが低成長社会においては、仕組みを変えな
ければ打破できないものです。その手段が消費税の増税だった訳ですから、延
期すべきでなかったという意見も多いと思います。

税は取られるもので、好んで納める人・企業はまずいないでしょうから、その
使い道がもっと身近に分かり、体感できることが、重要なんだろうと思います。
北欧諸国はいずれも消費税率が20%を超えて日本よりかなり高いですが、国民
の政治や行政に対する信頼が高いという話も聞きます。それは、税が高くても
見返りとして手厚い福祉が保障されていたり、政治家の汚職が少ないというこ
とも影響しているようです。

日本は企業勤めの人は源泉徴収され、年末調整すれば確定申告をしなくていい
ことから、そもそも税金を支払っている意識が低いので、税金の使い道につい
て興味を持ちにくいと言われます。また政治家の不祥事、政治の混迷もあり、
選挙の投票率の低下が示すように、政治に対しての興味も薄れて来ています。
私も反省していますが、財務省国税庁のホームページで、税金の源泉や使い
道といった収支は簡単に見ることが出来ます。税金を嫌がるのではなく、より
有効に使われるよう、国民1人1人が興味をもってその使い道をウォッチしてい
くべきと思います。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 

会議について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.029━2016.05.25━

【ビズサプリ通信】

▼ 会議について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

こんにちは。ビズサプリの辻です。

爽やかな晴天の日が続いていますね。日本の5月は本当に気持ちがいいです。
東京オリンピックも猛暑の8月ではなく、5月に開催すれば多くの外国の方が
日本をもっと好きになってくれるのにな、と思います。

最近、海外駐在のご主人と一緒に海外で生活していた友人からおもしろい話を
聞きました。ご主人は海外駐在中、残業も少なく帰宅は早め。プライベート
も大変充実していたそうです。ご主人は、「日本に帰ったら、職場の日本式
働き方を見直すぞ!」と勇ましかったそう。
ところが、日本に帰国後、あっさり日本式勤務形態に戻り、毎日残業の日々だ
そうです。
長時間労働については、生産性、ストレス、女性の社会進出等の様々な観点か
問題が指摘されていますが、その長時間労働の原因の1つに会議の多さ、会議
の時間の長さがあるように思います。

今日は、会議について考えてみたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 1.そもそも会議にする必要性は?
----------------------------------------------------------------------

私は、仕事柄よくお客様と打ち合わせをすることが多いですが、その日程の
調整が難しいことがよくあります。「その日は終日会議」「毎週金曜日の午前
中は定例会議」といった感じで参加者全員の日程確保が困難なためです。
特に役職が上にいけばいくほど、仕事時間のほとんどが会議ということも少な
くありません。

その会議、本当に”会議”である必要があるのでしょうか。

会議を行うには何らかの目的があると思いますが、会議とは「議論を尽くして
意思決定をする場」です。そもそも会議の目的がはっきりしない場合、会議
体にする必要があるかどうか検討したほうがいいかもしれません。

意思決定は終わっていて、情報共有や周知徹底を図りたいのであれば、メール
やWEB掲示板等の情報伝達のルーツを活用することもできますし、どうして
も直接顔を見て伝達する必要があるのであれば、伝達の場として招集し、時間を
短縮することもできます。また、ちょっと相談したいだけ、アドバイスをもらい
たいだけなら会議体にする必要はありません。普段からコミュニケーションを密
にとり、会議体をとらなくても自然発生的なショートミーティングができる環境
を整えておけばいいかと思います。最近は、そういう自然発生的な短時間の
ミーティングを支援するような、オープンスペースに簡単なミーティングス
ペースや立ち話用のスペースといったオフィスレイアウトもあるようです。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 2.会議をマネジメントする

----------------------------------------------------------------------

「次の会議、何の会議だっけ?」
「この議題で1時間って。。決まるわけないじゃん。」
「1時間の会議なのに、キーパーソンが来たのが30分経過後。再度議論の顛末
を説明しなければいけなかった。」
「今の会議って、出席する必要あった?なんで呼ばれたんだろう。」

皆さんもこのような『会議あるある』は尽きないのではないでしょうか。いったん
会議を開催すると決まれば、意味のある会議がきちんと運営できるようマネジ
メントする必要があります。

まず、会議前に事前準備は欠かせません。議題提案者は、会議で決めるべきこと、
議論のポイント、時間配分等を簡単にまとめて、少なくとも会議の1日前までに
出席者にメールするといいでしょう。その一手間で、提案者も頭の中が整理され
ますし、参加者は提示された議論のポイントに対して自身の意見を用意しておく
ことができます。議論の下地が整うわけです。会議の場でいきなり提案されても
その場の思い付きの意見では、議論が深まらないこともあるでしょう。

次に、健全に議論が行われ、正しい意思決定ができるような会議にする必要が
あります。会議が正しい形で運営されるヒントとして、「ロバート・ルール」
というものがあります。このルールは1876年に、アメリカのロバート将軍が、
様々な会議に参加する中でその進行に疑問を抱き、「会議の意見を集約し民主的
に運営する原理・原則」をとりまとめたものだそうです。多くの国際会議は多か
れ少なかれ、このルールをもとに運営されているそうです。

ロバート・ルールの中に「少数意見の尊重の原則」があります。文字通り、少数
の意見も尊重して議論をするといったことになります。会議が委縮した雰囲気
だったり、反対意見がいいづらい雰囲気では会議をする意味がありません。

ある企業の会議では議題に対して誰も反対意見を述べないと、「まだ理解が
進んでいない」として採決を見送ることにしているそうです。
反対意見や慎重な意見があってこそ、正しい意思決定ができるということを
経営者の方がよく理解しており、このような会議運営をしているのでしょう。

一方で、「反対のための反対」があっては議論が深まりません。ロバート・ルール
では、相手の発言中に割り込む、他者の議論の腰を折るといった行為で会議が
遅延することを防ぐため、「支持がない意見はきかない」という規則もあります。
修正動議をする場合、発言者に、「I second」と賛同する人が続かない限り、
その意見を聞くことはない、というものです。

また、上記のように少数意見も遠慮なく言えるような雰囲気にするため、司会者
の進行が重要になってきます。皆さんの会議では司会者は、議題の提案者という
ことが多くないでしょうか。前述のロバート・ルールでは、提案者と司会者は
別にし、司会者は議題に対して意見を言わない、というルールになっています。
司会者は、少数意見にも耳を傾け、多くの参加者に発言を促し、議論を活性化
することに心を配ることに集中することがミッションです。ロバート・ルール
の中で、司会者の要件の1つに、「自己中心的でなく、ユーモアに富むこと」と
あるのも興味深いです。

最後に、会議の決定事項が必ず守られる必要があります。会議の場では賛成を
しておいて、実際には納得していないから「あんないい加減な会議で決まった
ことは無視していいんだ。」と豪語して遵守しない、ということもよくある話
ではないでしょうか。これでは、会議の時間はすべて無駄となってしまいます。
そうならないためにも議論を尽くすことが必要ですね。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

■ 3.日和見が一番の悪

----------------------------------------------------------------------
日本では、「空気を読む」文化があるため、たとえ意見があったとしても会議の
席で意見を言わず、だんまりを決め込む人も多くいます。会議出席者の多くが
一度も発言しないという会議も多いのではないでしょうか。

ある社会心理学の実験によると、「危険性の高い原案(=必ず反対という意思
決定がされないといけない原案)が提案され、それに反対の意見の人が十分に
多いときでも日和見主義者が多いと、原案が可決される確率が高い」そうです。
(組織健全化のための社会心理学~違反・自己・不祥事を防ぐ社会技術~岡本
浩一・今野裕之著)何も意見を持たない、発言をしないことは会議に何も影響
を与えないのではなく、悪影響を与えるのです。

会議の様々を書いてきましたが、すべての会議を望ましい方法にするのは無理
があります。まずは、ご自身が主催できる会議から少し会議の方法を見直し
してみてはいかがでしょうか。無駄な会議、無駄な時間が減れば長時間労働
改善の少しは資することになるかもしれません。初夏の爽やかな夕方、早めに
帰宅するのは清々しいと思います。


本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━