株式会社Bizsuppliのメルマガバックナンバー

会計を中心とした実力派プロフェッショナル集団であるビズサプリのメンバーが、旬のネタや色々な物事への洞察を記載したメルマガのバックナンバーです。

不正のトライアングル(動機・機会・正当化)と対応について考える

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【ビズサプリ通信】

▼ 不正のトライアングル(動機・機会・正当化)と対応について考える

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こんにちは。ビズサプリの辻です。
3月に入り、日差しに力強さが出てきました。もうすぐ春本番ですね。

このメルマガを書いているのは3月3日です。3月3日と言えばひな祭り…では
なく『東京マラソン2019』です。
最近はランニング人口がとても多くなり、人気のマラソン大会は走るために
抽選があります。『東京マラソン』の抽選倍率は12.1倍で非常に狭き門です。
スタートラインに立つこと自体ですごいことなんです。私事ですが、実は
一昨年11月から、学生以来四半世紀ぶりに走り始めています。学生時代は
陸上部で中距離(400m、800m)を走っていたのですが、さすがに今はス
ピードが出ません。まずはお散歩ジョギングからはじめて、最近はハーフ
ラソンのレースに出るぐらい距離を走れるようになりました。「いつかは
東京マラソン』」と思いながら限られた時間の中練習を積んでいます。
走ることに興味がない方にとっては、「抽選までして走るの?」「なんで
あんな苦しい思いを自ら進んでするの?」と理解に苦しみますよね。走る
動機は人によって様々です。「健康増進」「自己実現」「ランニング仲間
との交流」「雑念を忘れられる」等々…。私の走る動機は、「走っていれ
ば、思いっきり食べられる」ことです。走った後の焼肉&ビールは最高なん
です。皆さんもこちらの世界にいかがですか?
ラソンの事を書き出すとどんどん長くなってしまいますが、本日は「動機」
を含めた不正のトライアングルと対応について考えていきたいと思います。

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■ 1.動機とは何か

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「動機」とは『行動を起こす、あるいは行動を方向づける要因そのもの』を
言います。またある要因から、行動を起こすまでの過程を「動機付け」と言
います。ビジネスの世界では、働く人の「動機付け(モチベーション)を高
めることが重要だ」ということで、様々な取り組みが行われてきました。例
えば、業績連動報酬などはモチベーションを高めるための施策として多くの
企業が実施してきました。「頑張って業績をあげれば、報酬が多くもらえる」
ということでやる気が起きるというわけです。このようなある行動の要因が、
評価や賞罰等他の人が作った刺激によっておこるような動機付けを「外発的
動機付け」といいます。一方で、「内発的動機付け」というものがあります。
これは、心の中から沸き起こってくること、例えば興味、関心、意欲等が
行動の要因になるものをいいます。走る人の動機付けは一部のプロランナー
を除けば「内発的動機付け」から生じているでしょう。

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■ 2. 不正のトライアングル

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「動機」は善悪に関わらず行動の元となるものですが、内部統制や内部監査
に係わる方であれば、不正のトライアングル(三角形)の一つを構成する要素
として動機(プレッシャー)という言葉を思い浮かべる方も多いのではない
かと思います。多くの不正・不祥事の事件が起こるたび、「業績のプレッシ
ャー」「納期厳守のプレッシャー」といった言葉で不正の要因が説明される
のをお聞きになった方も多いかと思います。

「不正のトライアングル」とは、クレッシーという学者が1940年代の博士論
文の中で、ホワイトカラー犯罪を犯した人には次の3つが当てはめられとし
たものです。

・他人に打ち明けられない問題(動機・プレッシャー)
・機会の認識
・正当化

「他人に打ち明けられない問題」とは、例えば次のようなものがあります。
・個人的な失敗に起因するもの(ギャンブルによる借金)
・地位獲得への要望
・業況の悪化
・果たすべき義務違反

「機会の認識」とは、「自分が不正行為を起こせる立場にある」と認識を
したうえで、それを実行できる能力があるということです。例えば自分が
承認者の立場にあり、不正支出が行える等がこれにあたります。

「正当化」とは、その不正行為をすることに対して「犯罪ではない=致し
方ない」と思うことです。例えば「自分だけがやっているわけではないんだ」
「誰にも迷惑をかけない」といった心の動きになります。(以上 不正の
トライアングルについてはACFE不正検査士マニュアルより抜粋)

最近報道されている様々な不正・不祥事事件について、その要因について
当てはめて考えてみると、よく整理できるかと思います。

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■ 3.『機会』のみに着目した対応の限界

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不正のトライアングルが揃ってしまうと不正の要因になるのであれば、揃わ
ないようにすればいいと考えることができます。これまでの不正対応では、
『動機』や『正当化』は、それぞれ個人の心の動きであるため、企業として
はコントロールすることが困難と考え、『機会』をなくす、つまり不正行為
を起こさせないような牽制や管理を行っていくことで不正や不祥事を減らし
ていくということを中心に実施してきました。

この対応は、業務上横領などの個人の金銭的な動機を満たすものなどは一定
程度の効果があります。一方で、連日国会で議論されているような「統計不
正」や、昨年多くの大企業で発覚した「品質データ改ざん」といったような、
「社会全体から見れば間違っていることが組織内の論理で淡々と長年実施
されているの不正・不祥事」に対しては限界があります。むしろ、様々な
管理が強化されることで、実務上到底守り切れないような複雑で細かいルー
ルがあることで、ルール自体が形骸化していき、「ルール軽視の風土」が
根付いてしまった結果起こった不正であるように思います。

ちなみに、統計不正については、「全数調査は企業からの苦情が特に多く、
大都市圏の都道府県からの要望に配慮する必要があった」と担当課のみで
統計手法の変更の判断をしたといい、その後も「統計の方法が不適切(ルー
ルとは異なる)ということは認識していたが、安易に前例を踏襲していた。」
「不適切な方法とはわかっていたが、誤りを改めることに伴う業務量の増加
や煩雑さを避けたいという動機から放置した」とあります。(日本経済新聞
1月23日 朝刊、2月28日 電子版より抜粋)

動機も正当化の要素もぼんやりしていますが、「ルール軽視風土」が動機や
正当化の背景にあったことは間違いないように思います。

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■ 4.『正当化』に働きかける自尊心

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それでは、「ルール軽視の風土」を打破して、不正・不祥事が起きないため
には何に気を配ればいいのでしょうか。
まずは、それぞれ個人が、職業的な自尊心を持つことです。少し古い実験結果
になりますが、「個人的、組織的な違反と職業的自尊心」には逆相関関係が
ある、つまり、自分の仕事が社会に認められている、上司から認められると
思う自体で違反行為が減るという実験結果があります。(「組織健全化のため
社会心理学岡本浩一、今野裕之著)自分の仕事に誇りを持っていれば、
その仕事を侮辱するような「ずるい行為」は自ら思いとどまることができる
というわけです。

細かく行動をチェックされ、ルール違反に都度罰則が科されるような組織に
職業的な自尊心が育つとは思えません。経営者は、自分たちの組織が何で社
会に貢献していくのかということを「経営理念」や「経営目標」といった形
で常に発信し続け、組織のメンバーは、共通の目標として共感し、常に判断
の軸として持っておくことが必要です。皆さんの属している組織は、このよ
うなことが語れており、それが様々な意思決定の場で実際に判断の軸になっ
ているでしょうか。このような判断の軸を持つことで、『正当化』を防ぐこ
とができることになります。


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■ 5.不正予防だけが目的ではない

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職業的自尊心には、仕事に対する「エンゲージメント」が強く関連します。
エンゲージメントとは仕事に対する「熱意」「積極的に関わる姿勢」を言い
ます。あるコンサルティング会社が行った仕事に対するエンゲージメントに
ついての調査によると日本人の仕事に対するエンゲージメントはG8で最下位
だったそうです。例えば、下記のような結果が出ています。(アデコ株式会社
HPより転載 タワーズワトソン「グローバル・ワークススタディ2012」)

・「私は会社の目標や目的を大いに信じている」という問いについて、「そう
思う」と答えた割合は、グローバル平均が68%だったのに対して日本企業は38%

・「私はこの会社で働くことを誇りに思う」という問いについては、「そう思
う」と答えた割合は、グローバル平均は72%だったのに対して日本企業は47%

長時間労働も厭わず、仕事熱心な日本人像とは異なり、仕事に対して非常に
ドライで冷めた本音が見えてきます。日本人が勤勉で愛社精神があり、積極的
に熱意をもって仕事をしているのではなく、不満を抱えながらも会社に留まっ
ている人も多いということを示しいるように思えます。

仕事の自尊心を持ってもらう事、そのベースとなる仕事に対するエンゲージメ
ントを高めてもらうこと、これらは一朝一夕にできることではありません。
例えば、最近は従業員満足度調査(ES調査)を実施してる会社が多いと思い
ますが、この結果を顧客満足度調査(CS調査)と同じ真摯さで受け止めて対応
をとっている会社はまだ少ないのではないでしょうか。また、業績報酬などの
外発的動機付けだけでは仕事に対する自尊心やエンゲージメントが高まるわけ
でもありません。内発的な動機付けに働きかける施策の方がむしろ重要となっ
てきます。そのような働きかけを継続的に行っているでしょうか。

自分の仕事に誇りを持った個人によって構成される組織の方が、上司の指示や

前例になんとなく従い、波風立てないよう気を配っている組織より生産性高く、
そして持続的に成長することは明らかです。そしてこのような強い個人が構成
している組織になることで結果的に不正・不祥事予防につながることになるの
です。
「ES調査を形式的に実施する」「人手不足だから働く人を大切にする」のでは
なく、「強い企業になるために働く人を大切にする」といった意識で採用、人
材育成、人事評価基準、業績評価そして内部統制を再考していく必要があるよ
うに思います。


本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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経費精算業務について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.091━2019.2.20━
【ビズサプリ通信】
▼ 経費精算は合理化できる
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ビズサプリの泉です。
2019年最初のメルマガとなります。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
私自身の業務は一般的な会計士、税理士の業務をやりつつも、経理関連のサポート業務が多く行っています。今回はみなさんも知っているようで、あまり知らない、経費精算業務について取り上げたいと思います。
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■ 1.経費精算とは
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経費精算とは、従業員が業務に必要な経費を立替えて払い、事後に精算を行うことであり、具体的な例は、取引先への交通費、出張の際の宿泊費、文具や切手などの必要な消耗品の購入、取引先との会食のための交際費などが思い当たるかと思います。
小規模な会社だと経費精算業務を紙で行っていることが多いのですが、大体50人以上くらいの会社では何らかの経費精算システムが導入されています。その場合の実際の経費精算の一般的な流れは次のとおりです。申請者:1.領収書などを受領、保管 2.経費精算システムに金額、使用用途などを入力 3.領収書原本を台紙などに貼り付け 4.期限までに領収書原本を承認者に提出承認者:5.領収書原本と申請内容の精算金額等内容の一致を確認 6.精算の可否を判断(主に業務との関連性) 7.領収書原本を経理に提出経理部門:8.領収書原本と経費精算システムの金額等の一致を確認 9.精算してよいか内容の妥当性精査(主に社内ルールとの整合性) 10.科目、課税区分など会計項目の確認 11.会計システムに取り込み 12.振込み 13.領収書原本等を保管
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■ 2.よく課題となること
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経費精算業務そのものは、直接売上や利益に結びつかない付随的業務であるものの、申請者にとって直接自分の支出となるためやらざるをえず、また、経理部門にとっても量が多いが間違えられない業務となります。具体的に、実際の現場において課題となるのは次のようなことです。
申請者にとっては、1.通常、立替の都度でなく、1月分などためてから締め日付近でまとめて申請することが多く、領収書等を紛失する。2.システムの使い勝手が悪いと、金額等のシステムへの入力が手間となり時間がかかる3.領収書の台紙等への貼り付けが手間となる承認者:5.領収書原本の確認のためには、リモートで承認できない経理:8.領収書の原本と申請金額の一致を確かめるのに時間がかかる      13.大量の領収書の保管が必要
特に申請者にとって、通常の業務が忙しい中、月1度領収書を財布から集め、経費精算システムへ入力していくという業務はかなり負担が重く、実際、自分がサラリーマンであったときは毎月憂鬱でした。
経理部門の経費精算担当にとって、本来は、項目10の会計項目の確認に注力すべきところ、業務の大半をしめる業務は項目8(領収書原本との確認)の大量の領収書とシステム上の申請金額、内容の照合となります。
また、そもそも経費精算業務は、相手が社内でかつ広範囲に広がるため苦情も多く、経理部員が精神的に疲弊しやすい業務といえます。よくある苦情の例として、次のことがあります。・自分は忙しいor偉いので特別扱いしてほしい 精算期限を超えても精算すべき 領収書だけ渡すので台紙の印刷や貼付などの作業は時給の安い経理がすべき 交際費について社内ルールで禁止されているお店での利用も認めるべき 申請がない(遅れている)場合は個別に連絡してくれ・自分はお金がないのですぐに精算してほしい・自分は申請をしたはずなので、領収書原本がないのは紛失した経理の責任・上司が忙しいので、精算の承認をしてくれないこの辺りは、会社によって対応は違うものの、経理部門における経費精算担当者は、非正規社員であることも多く、担当者が安定しない理由の1つでもあると思います。
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■ 3.最近の流れ
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経費精算業務は、コア業務ではないとして10年くらい前からアウトソースが流行っていますが、最近では、クラウドシステム及びスマートフォンの普及、画像認識、自動仕訳機能の高度化、オペレータ入力サービスなどにより、経費精算システムも実はかなり進化してきています。
例えば、項目1の領収書の紛失、項目2の経費精算システムへの入力の煩雑さの課題に関しては、申請者はスマートフォンで領収書の写真をとれば、画像認識やオペレータ入力により自動的に経費精算システムに金額や日付が入力、過去の入力から使用用途も自動提案され、入力作業はほぼなくなります。領収書のない電車やバスなどはSuicaPASMOの履歴から自動でされます。また、項目5のリモートでの承認の課題に関しても、領収書等は画像で添付されるため、クラウドシステム通じて、承認者はリモートで承認することができます。
ただし、この場合でも領収書の紙の原本が必要であり項目3の領収書の台紙への貼り付け、項目8の領収書原本と申請金額の照合、項目13の領収書原本の保管の課題はまだまだ残ります。
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■ 3.電子帳簿保存法
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この領収書原本紙問題については、電子帳簿保存法を利用し、紙ではなくデータを原本とし紙を廃棄するということが考えられます。ただし、従来は、例えば、電子化することについて金額基準があったり、画像化できるのは決められたスキャナでなければならず、スマートフォンは利用できない。また、本人が画像化する場合は領収書受領してから3日以内など、要件が厳しく実質的に運用がかなり難しいものでした。
要件は年々緩和されており、直近の通達において、ついに本人が画像化する場合でも他部署が全件原本とシステムの金額の照合することを前提にして、37日まで期間が延長され画像を原本化することが可能となりました。他部署が全件照合をするとなると、結局、従来と同じ紙による申請が必要となってしまうのですが、画像認識をうまく使うなど照合方法自体を工夫することにより省略できるのではないかと思っています。
そうすれば、次の通り、経費精算業務はぐっと省略化されます。申請者:2.経費精算システムに入力(スマートフォンで撮るだけ)し、領収書は            回収ボックスにいれる承認者:5.領収書の画像と申請内容と精算金額の一致を確認(リモートでできる) 6.精算の可否を判断経理部門:9.精算してよいか内容の妥当性精査   10.科目、課税区分など会計項目の確認   11.会計システムに取り込み   12.振込みシステムor外部サービス: 新.画像認識等で画像と紙の領収書を一括照合
経費精算については、まだまだ効率化の余地あるところであり影響も大きいところです。一度、やり方を見直すこともいいのではないでしょうか。
ビズサプリグループでは、経理業務の改善などのコンサルティング業務も行っておりますので、何かありましたらご相談ください。
本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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日産自動車の株価連動型インセンティブ受領権(SAR)とは何か

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.090━2019.2.06 ━
【ビズサプリ通信】
日産自動車の株価連動型インセンティブ受領権(SAR)とは何か

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ビズサプリの久保です。インフルエンザが猛威を振るっています。皆様は大丈夫でしょうか。くれぐれもご用心ください。今回も前回に引き続き、役員報酬について考えてみたいと思います。日産自動車有価証券報告書に記載していなかった役員報酬には、ゴーン元会長に対する株価連動報酬が含まれていたとされています。この株価連動報酬がどのようなものなのか検討してみましょう。
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■ 1.SARはバーチャルなストックオプション
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日産自動車は、株価連動型インセンティブ受領権(SAR=ストック・アプリーシエーション・ライト、以下「SAR」)という日本では一般的でない業績連動報酬を採用しています。
SARは、いわば「バーチャルなストックオプション」です。仮想的に自社株式を取得して、その後売却したとした場合の売却益相当額を会社が役員に対して金銭で支払うものです。新株予約権ではなく、支払を金銭で行う点がストックオプションと異なります。
業績連動報酬には、年次賞与のような単年度の評価に基づく年次インセンティブと、複数年度の評価に基づく中長期インセンティブがあります。SARは中長期インセンティブの一種です。
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■ 2.そもそもストックオプションとは
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ストックオプションには、主に通常型(税制適格型)ストックオプションと1円ストックオプション(株式報酬型ストックオプション)があります。
通常型すなわち税制適格にするためには、権利行使価格を権利付与日における時価以上に設定しなければなりません。権利付与日から会社の業績が向上して株価が上がった場合には、権利行使価格で権利行使(自社株式の購入)をして売却すれば、売却益部分が役員への報酬になります。
(売却時の株価 ― 権利行使価格(自社株式の購入価格))× 株式数=売却益(役員への報酬)
通常型の場合は、自社株式取得時点では役員に対する所得税が課税されず、売却時に売却益に株式譲渡所得として課税(税率20.315%)されます。高額所得の役員にとっては給与所得より低い税率になります。
一方、1円ストックオプションは、権利行使価格が1円のストックオプションです。権利行使価格が1円のため税制適格にはなりません。このため、自社株式を取得した時点で、株式の時価相当額が給与所得として課税されます。権利行使価格(自社株式の購入価格)が1円のため、ほとんど無償で自社株式をもらったのと同じ効果があります。
(売却時の株価 ― 権利行使価格(1円))× 株式数= 売却益(役員への報酬)
1円ストックオプションは、役員が自社株式を取得した時点で給与所得として課税されますので、すぐに株式を売却しない場合には納税資金が必要になります。
通常型ストックオプションの場合は、権利行使価格より株価が下落した場合には、権利行使しないという選択ができます。このため、株価が上昇したときにしか役員報酬としての効果がありません。
一方、1円ストックオプションの場合は、株価が下落しても1円以上であれば売却益が期待できるので、役員報酬としての効果があります。もちろん、役員が頑張って会社の業績を向上させ、その結果、株価が大幅に上昇すれば大きな売却益を期待することができます。
要するに、1円ストックオプションは、株価の上昇によって役員報酬が増え、株価が下落したら役員報酬が減少するという効果があるということになります。
このため、日本の上場会社では、株価上昇時しか役員報酬の効果がない通常型ストックオプションはあまり使われず、株価上昇・下落の両方に効果がある1円ストックオプションが多く使われています。
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■ 3.バーチャルなストックオプション
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日産自動車のSARは「バーチャルなストックオプション」と説明しましたが、SARは「通常型ストックオプションのバーチャル版」と言えます。行使価格を一定時点の株価に設定し、それより株価が上がった場合には株価と行使価格の差額を役員報酬として金銭で支払います。
(権利行使時の株価 - 権利付与日の株価)× 株式数 = 役員への報酬
バーチャルなストックオプションで、1円ストックオプションに相当するものもあります。これはファントム・ストックと呼ばれるものです。ファントムは幻影、幽霊という意味です。ファントム・ストックは、まさにバーチャルなストックオプションという意味合いになります。ファントム・ストックによる役員報酬は次のようになります。
(報酬基準額 × 株価変動率)× 株式数 = 役員への報酬
株価変動率は一定の時点の株価からの変動率とします。野村ホールディングスが外国人役員向けに過去からファントム・ストックを導入しています。平成29年度の税制改正で損金算入が可能になったことから、三菱地所ファンケル良品計画(外国人役員向け)などが導入を開始しています。今後も導入事例が増えるかもしれません。
SARは、行使価格より株価が大幅に下がって回復見込みがない局面では、インセンティブ効果がほとんどなくなります。一方、ファントム・ストックは1円ストックオプションと同様に、株価が下落しても役員報酬としての効果がある点でSARより優れていると言えます。
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■ 4.日産自動車のSAR
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2013年6月25日開催の株主総会で承認されたSARの内容は次のとおりです(2015年6月の株主総会で適用期間が延長されています)。
日産の場合、各事業年度ごとに権利付与し、付与時点の株価と権利行使日の株価の差額が役員報酬として金銭で支払われます。
役員は、権利行使可能期間内で権利行使する必要がありますが、この期間は権利付与した日から10年以内の時期に取締役会が決めることになっています。
年間付与総数は、適用期間内の各事業年度について、6 万個(当社普通株式6百万株相当数)が上限となっています。権利付与日の株価より権利行使日の株価が高い場合、すなわち役員の業績向上努力によって株価が上がった時には、その株価の差額×付与数が役員報酬となります。
日産自動車の株価は事件発覚後下落していますので、SARに基づく役員報酬はあまり期待できないと思います。また、この報酬プランの適用期間が平成30年度末、すなわち2019年3月末までになっています。今年の株主総会で適用延長するかどうかが注目されます。
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■ 5.有価証券報告書の何が虚偽記載か
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取締役会は、役員の各人の報酬額の決定をゴーン元会長に一任していたと報道されています。ゴーン元会長は、各役員の報酬だけでなく、自分自身に対する報酬を決めていたということになります。
そもそも有報では、ゴーン元会長にはSARは支給されていないことになっています。検察当局は、今年1月の追起訴事由において、2010年度から2017年度の8年間で約91億円分の役員報酬が有報に記載されていなかったとしています。有報記載のどの部分がどのように虚偽記載されていたのか、今後明らかになると思います。
本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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役員報酬と報酬委員会の役割

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.089━2019.1.23 ━
【ビズサプリ通信】
役員報酬と報酬委員会の役割
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ビズサプリの三木です。今回のメルマガでは、役員報酬と報酬委員会の役割を取り上げます。
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■ 1.日産の事件
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日産のカルロス・ゴーン元会長の事件が世の中を騒がせています。背任行為があったかとともに焦点があたっているのが役員報酬です。
責任やリスクの大きさを考えるとある程度報酬が高いのも納得するとしても、通常の勤め人からすると天文学的な報酬額で、「こんなにもらっていたのか!」「がめつい!」と驚いた方もいらっしゃると思います。一方で、その人が経営することで会社に100億円のメリットがあるならば、会社としては90億円を払っても経営してもらったほうが良いことになります。
経営者といえど人ですから、報酬の仕組みによって行動は左右されます。そして経営者の行動は会社の命運を左右するので、経営者報酬もまた会社の命運のカギとなっています。

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■ 2.役員報酬決定の仕組み
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会社の役員(取締役など)の報酬は、金額や算定方法を定款に定めるか、株主総会での決議によって決まります。株主総会で上限を定めて配分を取締役会に任せることは可能ですが、総額まで取締役会に一任することはできません。取締役の報酬を取締役会が決めてしまっては、勝手に増額してしまいかねないためです。
なお、一口に報酬といっても色々なものがあります。業績や働きぶりに関係なく支払う固定報酬がありますし、業績連動報酬にも、どのような業績に連動させるか(売上/利益/株価/増収・増益率/ROE等の指標)、対象とする業績は短期か複数年かによって多様な仕組みができます。他企業に引き抜かれないための防衛としての報酬も考えられます。払い方も、金銭で払う場合、ストックオプションとする場合、福利厚生など現物で提供する場合など多様です。

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■ 3.報酬委員会は何をするか
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報酬委員会を設置していても、上記の報酬決定の仕組み自体に変わりはありません。報酬委員会のメンバーもまた取締役ですので、すべてを任せるわけではなく、株主の目は入れる仕組みとなっています。
報酬委員会の大きな業務は、報酬体系の設計とその見直しです。
<設計>報酬委員会は、どういう報酬体系にするのかの設計を行い、株主総会で決議された枠の中で、取締役と執行役の中での金額配分を担います。最も重要なのは報酬体系の設計です。上述の通り報酬は経営者の行動を左右しますから、適正な報酬体系になっていないと経営者の行動がゆがみます。通常は複数の報酬のミックスとします。例えば、経営の前提として生活の安定を保証する固定報酬を〇〇%、業績連動報酬を〇〇%、ストックオプションを〇〇%といった具合です。取締役や執行役が株主の利益に合う行動となるよう、適度なインセンティブ性のある体系が必要です。ただし、粉飾決算を画策したり、短期的な利益を追い求めて長期投資に無関心になってはいけませんから、バランスが重要です。
<見直し>また、報酬が支払われた後には、その報酬が適正だったかの振り返りが必要です。完璧な報酬体系というものはなく、ビジネス環境の変化によっても適正な報酬体系は変わります。そこで報酬委員会は、支払われた報酬について、経営者の行動を正しい方向に導く効果があったか、見直しは必要かを検証します。

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■ 4.実例
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実例を見てみましょう。
例えばコカ・コーラでは、株主利益に沿った報酬体系となっているか、財務数値以外も考慮する必要があるか等を報酬委員会が検討し、検討結果を報酬委員会からのメッセージという形で開示しています。https://www.coca-colacompany.com/packages/message-from-compensation-committeehttps://www.coca-colacompany.com/stories/coca-colas-board-of-directors-outlines-compensation-strategy
また、GMでは10ページにわたる報酬体系の説明と、それに対する20ページの分析結果・見解をProxy Statementに乗せ、株主・投資家に公開しています。https://media.gm.com/static/proxy-statement/HTML1/general_motors-proxy2018_0041.htm
日本ではここまで詳細な検討と開示を行っている会社は少数です。残念ながら、おざなりな開示、最低限の開示が多いのが実情です。自分の報酬をできるだけ公表したくはない心理もわかりますが、この不透明さが日産の事件の背景にもあるように感じます。根拠も開示して堂々と報酬をもらうまでには、カバナンスにもう一段の成熟が必要そうです。現実には社長が報酬委員会メンバーの候補者選びをすることも多く、その社長に向かってセンシティブな報酬の話を切り出すのは難しい面もあります。しかしながら、難しいからこそ報酬委員会の存在価値があるとも言えます。役員報酬を聖域扱いし続けることは難しくなってきているといえるでしょう。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。
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Reboot(再起動)の年

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【ビズサプリ通信】

▼ Reboot(再起動)の年

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皆様、明けましておめでとうございます。ビズサプリの花房です。今年の話題
と言えば、皇位継承とそれに伴う改元元号の変更)、消費増税、オリンピッ
ク1年前としての盛り上がり(ラグビー好きの方にとってはラグビーワールド
カップ)でしょうか。中でも、皇位継承はGWを10連休として行われる一大イベ
ントであり、祝賀ムードが盛り上がることが予想されるだけに、経済効果も大
きいと思われます。カレンダーやスケジュール帳の需要もありますが、システ
ム会社にとっては、日付を和暦で入力するシステムの変更に対応するという特
需が期待されまれます。

改元で分かっているのは、明治以降の元号のイニシャル、M(明治)、T(大正)、
S(昭和)、H(平成)、が重ならない、漢字二文字であり、新元号の公表は4月1日
に行われるということです。従って、5月1日の新元号使用までの準備期間が1ヶ
月しかない中で、これに対応するためにSEの方は残業や休日対応が求められる
かもしれません。また経理に係る部署の方は、4月30日~5月2日が祝日になる
ため、5月の月初の営業日数が極端に少ないことから、4月の月次締の負担がか
なり大きいことが予想されます。

改元は世の中への影響が大きいですが、それは、それだけ元号がいまだ日常生
活で使われることが大きいからだと思われます。日付を記載する際に、西暦を
使うことが徐々に多くなってきたようには感じますが、役所を始め、多くの場
合に生年月日等を和暦で記載することが求められます。合理性を考えると、全
て西暦で統一した方がいいはずですが、和暦を捨てきれないのは、伝統、ある
いは文化を重んじてのことだと思います。

また1つの元号は、まとまった1つの時代を象徴する意味で、元号が変わること
で、また新しい時代が始まるきっかけにもなります。明治以降、元号の変更は
天皇陛下崩御に伴い、不測の中で行われていましたが、天皇陛下の退位に基
づく、スケジュール化された改元という、今回は我々が経験する初めてのケー
スになります。1つの時代の節目として、通常の「新年」以上に、何か新しいこ
とを始めるには、相応しい年と言えるのではないでしょうか。

平成31年」=「○○元年」あるいは「○○1年」をReboot(=「再起動」)の
年として、心機一転、皆さんも何か新しいことを始めては如何でしょうか。節
目の年に始めたことは、何年経っても、記憶に残ること間違いなしと思います。

「平成」は、インターネットが一般化し、ネット社会が事実上誕生、成長した
時代でした。それも最初はパソコンが主流でしたが、今ではスマホ中心に拡大
しつつあります。誰もがiphoneの誕生を予測できなかったように、今年から始
まる新元号の元ではどのような社会になるのか予想できませんが、ネット社会
の成長の段階で間違いなく日本で進むこととして、「キャッシュレス化」があ
ります。今回は、このキャッシュレス化をテーマに取り上げてみます。

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■ 1.消費増税対策とキャッシュレス化

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我々消費者に身近な、かつ生活への負担が大きい消費増税ですが、過去2度延
期されてはいますが、このまま行けばさすがに今回は延期されることはないで
しょうから、10月1日に予定通り消費税率の10%への引上げが行われる予定です。

消費税率Upは消費者からみれば、単純に支出増になりますので、政府は前回増
税時のような駆け込み需要での反動減が起きないよう、いくつかの政策を発表
しています。昨年の12月21日に閣議決定された、平成 31年度税制改正大綱に
おいても、消費増税に対する需要変動の平準化等の観点から、住宅ローンの所
得税額控除期間の延長(単純な延長ではなく、消費税率2%引上げ分の負担に配慮し
たもの)や、自動車税の減税(自動車取得税は廃止)等、税制面からの消費増
税対策が明らかになっています。

なお、消費税率が10%となっても、飲食料品や新聞は軽減税率制度が適用され、
8%のまま据え置かれます。但しこの制度は、みりん風調味料は該当するが、み
りんや料理酒は該当しない、栄養ドリンクもオロナミンC(清涼飲料水)は該当
するが、リポビタンD医薬部外品)は該当しない、さらに、日刊紙の定期購読
は対象だが、電子版やコンビニでの販売は該当しない、といった、専門家でも
判断に窮することもありそうな、かなり複雑な制度となっています(先述のよ
うな例は、「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(個別事例編)」国税庁
費税軽減税率制度対応室、によりまとめられていますが、実に84個の事例があ
り、実際の現場では事例にないようなケースが沢山出てくることが想定されま
す)。

また、消費増税対策と日本のキャッシュレス化率上昇の二兎を追える政策とし
て、中小店でキャッシュレス決済した際のポイント還元策が検討されています。
当初は増税分の2%を還元する話でしたが、首相の鶴の一声で還元率は5%で話が
進んでいるようです。中小事業者保護の色彩もあるのだと思いますが、そもそ
も大企業は対象外、中小事業者も大手チェーンのフランチャイズの場合は還元
率が2%になる、キャッシュレス決済に対応する専用の端末がない場合は新規に
設置、ポイント還元に対応するためのシステム変更が必要といった時限措置の
ため、消費喚起の効果が限定的なこと、システムコスト等の費用対効果も踏ま
えて、実現可能性のハードルはかなり高そうです。

消費増税対策とキャッシュレス化の推進を一度に進める妙案があればいいです
が、当該制度は導入されるとしても、増税時からオリンピック前までの9か月
間のみの実施ということなので、少なくともキャッシュレス化推進の効果も限
られるのではないでしょうか。キャッシュレス化と言っても、現在流通してい
る紙幣・硬貨が電子データに置き換わるものであり、企業間取引や国民の生活
の重要なインフラであること、また日本でキャッシュレス化が進めば、政府と
しても、電子データでお金の動きを把握しやすくなり、脱税・マネーロンダリ
ング・紙幣の偽造等の犯罪防止を効果的に行いやすくなる利点があるだけに、
今回の増税対策にかこつけた場当たり的な施策ではなく、キャッシュレス化の
手法として、ユーザーの利便性やセキュリティ、導入コスト等の優劣を踏まえ
た上で、どの規格を中心に日本のキャッシュレス化を推し進めるのか、長期的
な視点でしっかりとグランドデザインを描いて欲しいと思います。

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■ 2.スマホがキャッシュレス化を推し進める

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日本は「現金大国」と揶揄されるほど現金好きな国民で、超低金利の中、タン
ス預金も増加していると聞きます。少し前のデータですが、BIS(国際決済銀行)
が主要国の現金の流通残高を対名目GDP比率で比較したものによれば、日本の
当該比率は2015年末時点で19.4%であり、ユーロ圏の10.6%、米国の7.9%、
韓国の5.6%等と比べて、突出していることが如実に表れています。

それだけ、日本の治安の良さや、日本国の発行する紙幣の信用力が高いことの
裏返しでもあると思います。一方で、キャッシュレスの決済手段の代表格であ
る、クレジットカードの利用率が低いことを示すものでもあります。日本では、
クレジットカードが使える場所は、比較的高額の商品やサービスを取り扱う店
です。個人商店やファーストフード店では、カードが使えないお店が多く、仮
に使えるとしても、金額の下限を設けていたり、カードによる支払を嫌がるお
店も少なくありません。

その理由としてよく理由に上がるのは、クレジット決済用の端末の導入費用と、
利用額に応じて支払う加盟店手数料率の高さです。これはお店の業態にもよる
ので一概には言えませんが、小売に比べて飲食店は高い傾向があるようです。
またカード会社によっても、加盟店手数料の料率は異なります。ただ最近は、
スマホの普及とともに、モバイル決済が普及してきています。これは、お店の
スマホタブレットをPOS端末として、クレジットカードの読み取り機を付け
る形式のもの、消費者にスマホアプリをダウンロードしてもらい、そこに会員
IDを表示させて決済する形式のもの(消費者はクレジットカード情報等を登録
しています)、FeliCa等のお財布携帯としての形式のもの等、様々なものが
普及してきています。

また日本での電子マネーは、ここ10年くらいの間に、プリペイド式を中心とす
交通系Suicaパスモ)、流通系(nanacoWaon)を中心に普及して来て
ました。これらは日常生活で利用頻度の高い電車やコンビニ・スーパーでの利
便性が高いこと、流通系はポイントが付くことから、一気に普及しました。
但し、プリペイド式は上限金額が数万円であり、主に少額決済でしか利用され
ていないため、取引件数は多いものの、金額ベースではまだまだこれからと言
えます。

さらにここに来て注目を浴びているのが、QRコードを使った決済方法です。仕
組みとしては、お店はQRコードを印刷して置くだけで、あとは消費者が専用ア
プリでQRコードを読み込めば、決済が完了します。店としては専用端末が不要
で、またソフトバンクとヤフーが共同で手がけるQR決済アプリの「PayPay」
やLINEが手掛ける「LINE Pay」は、最初の3年間の決済手数料を無料とするこ
とで、早期の会員獲得を狙っています。特に昨年末に話題となったのが、
PayPayが行ったキャンペーンで、1回の支払毎に最大20%を、さらに抽選で40
回に1回の確率で、支払い額の全額をキャッシュバックするとしたところ、
2019年3月31日の終了日を待たず、開始からわずか10日で終了するほどの反響が
ありました。

昨年末には、みずほFGは2019年3月にQRコードを利用した、デジタル通貨を発行
することを発表しています。また同じく銀行のサービスとして、ゆうちょ銀行
QRコードを使ったスマートフォン決済サービスとして「ゆうちょPay」を今年
の2月から始めることとしており、銀行が直接サービスを提供することで、ユー
ザーとしての電子マネーに対する安心感は格段に高まる気がします。また他の
電子マネーで後払い式のものは、最終的にクレジット決済になるため、使い過
ぎを嫌って後払いに抵抗のあったユーザーも、銀行口座からの引き落としにな
る銀行提供のQRコード式の決済サービスであれば、クレジットに慎重な日本人
の活用が進みそうです。

またSuicaはカード式から、スマホのアプリとしてのモバイルSuicaへの移行を
進めています。スマホが生活になくてはならないものとなってきた現在では、
単なるコミュニケーション、エンタテイメントツールとしてだけでなく、お金
のやり取りについても、スマホでの決済がカギを握っている状況です。オンラ
イン取引の決済はクレジットカードで行うのが主流でしたが、今後は更なるス
マホの普及、様々なアプリの開発とともに、現金のやり取りはスマホ上で行う
のが当たり前になりそうです。そこでの決済手段として、上記で紹介したもの
の他、「楽天ペイ」や「d払い」(docomo)等があり、さらに電子マネーへの
参入企業が増えて行くと思います。さらに世界を見れば、中国での電子マネー
は「ウィチャットペイ」、「アリペイ」のシェアが大きく、いずれもQRコード
式による利便性、導入コストの安さが、急速に普及した要因と言われています。
アメリカではAppleの提供する「Apple pay」やAmazonによる「アマゾンペイ」
も日本に進出しており、群雄割拠の様相となっています。


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■ 3.スマホ経済圏とキャッシュレス化の拡大

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昨今話題のシェアリングサービスとして、代表格は配車アプリの「UBER」や空
き部屋の貸出アプリの「Airbnb」、日本発ではスマホによるフリーマーケット
である「メルカリ」が有名ですが、ビジネスモデル的には、スマホ上のアプリ
で、個人の空いたリソースを別の個人にマッチングすることがベースになって
います。個人間取引であるため、提供者・利用者相互の信頼性やセキュリティ、
決済の担保が課題ですが、相互評価の仕組みを取り入れたり、支払もクレジッ
トカードやその他電子マネーでキャッシュレスにより行うことでそれを可能に
しています。

また法人の提供するサービスとしても、ECサイトを始め、音楽や動画配信、旅
行、ゲーム、料理の出前等、消費者が生活に必要なあらゆるものが、徐々にス
マホで提供されるようになり、スマホ経済圏が拡大しつつあります。それらも
決済はクレジットやQRコード式アプリ等、キャッシュレスにより行われます。
逆に言えば、スマホ経済圏におけるサービスは、キャッシュレス決済が大前提
になっていると言えます。

一方のリアル店舗では、決済手段として日本では根強い現金の他、主にク
レジットカードが使われてきましたが、複数のクレジットカードを持っている
人でも、実際に使っているのは2~3枚だと思います。スマホ経済圏では、キャ
ッシュレスの決済手段として、クレジットカード以外に様々な電子マネーが乱
立して来ていますが、1人のユーザーとして対応できるのも通常は2~3種類が
限度ではないか、と想定されます。

そうすると、いずれは数種類の電子決済に集約されるかもしれません。ユーザ
ーとしては、どれかに1本化された方がいいでしょうし、その方が一気にキャ
ッシュレス化が普及すると思います。スウェーデンは銀行が中心となり、Swish
という電子決済の仕組を取り入れたところ、一気に普及し、世界一キャッシュ
レスが進んでいる国と言われているそうです。しかし一方で、決済サービスを
提供する企業にとっては、スマホ決済サービスは重要な収益源であるため、決
済サービス提供企業としては、すでにサービスを始めた規格から、他社、あるい
は国が決めた規格に合わせるのは、簡単には妥協できない話でもあります。

ここで普及のカギを握るのは、利便性とセキュリティ、低コストであること、
だと思われます。決済の都度手続きが煩雑だと使ってもらえませんし、セキュ
リティに問題があれば見向きもされません。そして店側としては、導入コスト・
ランニングコストが安くないと導入に踏み切れない事情もあります。今後キャッ
シュレス化が進むことは間違いないですが、日本発の決済サービスが普及して
行くのか、それとも実績のある米国、または中国の決済サービスが日本でも同
様に普及して行くのか、これからの2,3年が勝負の年と考えられます。

そしてキャッシュレス化が進めば、リアル経済圏にある店舗も大きな恩恵を受
けるはずです。例えば、従来小売店舗における問題として、レジや、ATM・夜間
金庫に入金する際の盗難のリスク、それに備えるための警備会社や現金回収サー
ビスのコスト、また毎回現金をカウントし、レジを締めることに係る人件費コス
ト、と言った、様々なコストがかかることが挙げられます。今後キャッシュレス
な決済サービスの普及とともに、今まで導入の障壁となっていた導入・ラ
ンニングコストが低減して行けば、キャッシュレス化のコストが現金を扱うこと
のコストを下回る時期が訪れ、そうなると、キャッシュレス化が一気に浸透し、
売店舗としては、現金管理やレジ締業務と言ったものから解放されることにな
ります。特に人件費が増加傾向をたどる近年において、省力化は大きな課題です。
すでに米国、中国ではその先を一歩進んでいて、無人店舗も徐々に普及し始めて
来ており、日本でも実験店舗を始めている企業が出てきているものの、ここでも
キャッシュレス化が前提のため、キャッシュレス化が進まないと、無人店舗の普
及の障害となりかねません。

なお、クレジットカードやスマホ決済では、大抵ポイント制度があり、利用額に
応じてポイントがたまり、それを買い物に利用できるようになっています。この
ようなカスタマー・ロイヤルティ・プログラムについては、会計上は従来、将来
使用される可能性のある未使用のポイント残高を「ポイント引当金」として引当
計上していました。これについては、2021年4月以降開始の事業年度から原則適
用される「収益認識会計基準」においては、ポイント付与を、追加の財又はサー
ビスを取得するオプションと捉え、そこから将来の履行義務が生じ、収益の計上
を繰り延べることになります。ポイント制度を設けている企業にとっては、大き
く影響すると言えます。

ビズサプリグループでは、会計士、事業会社での経験豊富なコンサルタント
より、効率的・効果的な業務改善の支援、それに係るスプレッドシート等の企
業内ツールの作成支援やシステム導入のコンサルティングIFRSや新会計基準
用の支援も行っておりますので、ご興味ありましたらご相談頂ければと思います。
http://www.biz-suppli.com/menu.html?id=menu-consult

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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経営者不正を考える

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.087━2018.12.19━

【ビズサプリ通信】

▼ 経営者不正を考える

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こんにちは。ビズサプリの辻です。
早いもので2018年の最後のメルマガとなりました。みなさんにとって今年は
どんな1年でしたでしょうか。

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■ 1.2018年の不正・不祥事

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不正・不祥事については2018年もずいぶん多くの報道が行われました。昨年
から引き続きモノづくりの会社の品質不正が次々明らかになりました。これら
の改ざん行為はあまり罪の意識がないまま長年業務として淡々と行われていた
ことがわかっています。「顧客と約束したスペック」といった契約文書で交わ
した「ルール」が建前と捉えられ、前例や口頭での引継ぎが重視されるといった
企業文化であったということが推測されます。

また、印象的なものとしては「日本大学のアメフト問題」から端を発したアマ
チュアスポーツ界のハラスメント問題が一気に表面化しました。私が子どもの頃
(数十年前の話ですが、、、)のスポ根漫画は、「ハラスメント」に耐えなが
ら逆境を乗り越えていくこと自体がメインストーリーでした。ただ、今はその
ような指導方法は言うまでもなくNGです。前回のメルマガで書いた「医学部の
入試問題」も「品質不正」も「スポーツ界のハラスメント問題」も、長年「こ
ういうものだ」と思われていた組織内部での常識が、世の中の常識と大きく
ずれてしまっていることで不正・不祥事が表面化してきたという共通の特徴が
あるように思います。

そして、なんといっても年の最後に来た日産自動車のゴーン氏問題です。
ゴーン氏といえば世界的にも著名な名経営者であり、報酬や私的に使用した
(と言われている)金額も使用使途も、少なくともわが国においては桁違いの
金額や常識外れの使用使途であるため、どうしてもセンセーショナルな報道に
なりがちです。新聞報道などでは、「今回の件を他山の石としすべし」といっ
た記述もありますが、「日産のゴーンさんだからこのような状況になっていた」
という要素も多分にあるため「他山の石」とするのはなかなか困難に思います。
今日は、もう少し一般化した「経営者が行う不正」という観点で考えてみたい
と思います。

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■ 2. 一般的な不正の類型と不正

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一般的には不正の手口は下記の3つに分類できます。(日本公認不正検査士協会
 「不正検査士マニュアル」より)

1.賄賂・談合のような法律違反
2.資産の不正流用
3.報告(財務・非財務)不正

ゴーン氏逮捕の夜に開かれた西川社長の記者会見では、ゴーン氏の行った不正は
上記のうち「2.資産の不正流用」と「3.有価証券報告書の虚偽記載」だという
ことが明言されていました。

「2.資産の不正流用」には具体的には下記のような手口があります。
 ● 実態のない業務委託契約を締結し、親族の会社に振り込む
 ● 勤務実態のない親族等に給与を振り込む
 ● 私用の費用を会社に請求し支払いを行う
 ● 会社の情報資産(営業秘密や顧客情報、特許情報)等を横流しする

また、3.については、粉飾決算などの財務報告不正、データ・表示の偽装
等の不正等があります。

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■ 3.経営者による資産の不正流用

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経営者による資産の不正流用は、一般的にはオーナー経営者又は経営者として
の在任期間が長いなどで、たとえ周囲が何かおかしいと気が付いたとしても
「おかしいとは言えない」状況で生じることになります。

資産の不正流用は最も発生件数が多い不正の手口です。ほとんどの場合が、
私腹を肥やすため、個人の金銭欲を満たすために行う事が多いものです。
このため、通常は、不正実行者の上司や同僚等が気付きさえすれば、それなり
に行動が起こされ、是正がされていきます。そして、このような不正を「早く
気付く」ための仕組みが「内部統制」です。つまり、不正リスクを十分軽減す
るような適切な内部統制が整備され、そして当初想定した通りの運用が確実に
行われることで、資産の不正流用リスクは抑えることができます。

しかし、不正の実行者が経営者であった場合、経営者が、内部統制を無視した
ような指示を出すことにより内部統制が無効化されてしまうことがあります。
具体的には、たとえルール上は認められていないような経営者家族の私的な
旅行の代金について「請求書」と「支払申請」が経理財務部門に回付されてき
たとします。経理財務部門は誰の申請であったとしても「社内ルールではこの
ような支出は認められない」とルールを楯にして、突き返すことができます。
これは、会社の経費の公私混同を防ぐための内部統制の仕組みです。

しかし、その申請が経営者の支出であった場合、経理財務部門としては「突き
返しづらい」という心理的なハードルがあるでしょう。また、たとえ勇気のあ
経理財務担当者が「この旅行代金は私用でしょうか。それとも社用でしょう
か。」と聞くことができたとしても、例えば社長室から「社用です」と言われ
てしまえば、踏み込んで指摘し、突き返すことはほぼ不可能ではないでしょうか。
そして、その社長が先ほど指摘したようにオーナー経営者やカリスマ経営者で
あればなおさらのことです。

では、内部統制は経営者の資産の不正流用に全く無効かといえば決してそうと
はいえません。不正流用に関する内部統制が整備、運用されている会社におい
ては、経営者といえどもそれを無効化するのには結構な手間と労力がかかるも
のです。また、普段からコンプライアンスや倫理を語っている本人が、例えば
公私混同と取られかねない支出を指示すること自体、自分の発言との矛盾に違和
感があり、心理的なハードルが高くなることは間違いありません。経営者不正に
対しても内部統制を矮小化することなく、地道に整備・運用していくことは重要
と考えます。

そして最近は、内部通報制度や内部告発により、公私混同の事実が社外に伝えられ
るという時代になりました。平成28年度の消費者庁の調査では従業員3,000名
以上の会社での内部通報制度の設置率は99.2%(ちなみに1,000名~3000名の
会社でも93.5%)、そのうちの77%が外部受付窓口を持っています。今回の
ゴーン氏の件が記者会見で言及されたように本当に内部通報から発覚したことか
どうかはわかりませんが、「経営者の公私混同は、内部通報又は告発という形で
外に出るんだ」ということが広く認識され、経営者も含めて緊張感が出るようで
あれば、それはそれでいい効果があったのではないかと思います。

今回の日産の件では、経営者の力が非常に大きく、内部通報への対応として司法
の力を借りるというかなり特殊な状況ですが、そのような場合は稀で、通常は
経営者の公私混同、不正支出があった場合には、監査役社外取締役が十分な
監督機能を発揮すれば、詳しい調査が行われることになるでしょう。

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■ 4.有価証券報告書の虚偽記載について

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ゴーン氏が起訴された直接の容疑は、有価証券報告書虚偽記載となります。
有価証券報告書のわが国の開示のルールでは、報酬額が1億円以上であれば個別
にその報酬を開示することになっています。漏れ聞いた話によると、「1億円
ルール」ができたときは日産の件とは桁が違いますが、1億円を何とか下回る
ように「報酬の後払い」ということはそこここで起きた話だったとのこと。
当時、それほど開示にあまり積極的ではなく、また横並び意識が強かった日本
人の気持ちとしてはわからなくもない感覚ですが、本当に情けない話だと思って
しまいます。経営者であれば、開示して恥ずかしい報酬をもらうべきではないと
個人的には思います。

報酬開示の趣旨は、株主から委任を受けた取締役が、その働きに見合った報酬を
どのように決めて、いくらもらっているかを示すものです。その全員の報酬を
記載するのが本来の姿であって、そもそも1億円以上という線引きをするから、
「高額」な人だけを洗い出してランキングするといった報道にもなるのだと思い
ます。1億円未満であっても全員の役員報酬を開示している会社もあります。
実際、この事件が起きる前から金融審議会のディスクロージャーワーキンググル
ープでも役員報酬の開示ルールについては見直しをしていく旨報告されています。
今後は報酬プログラム(算定方法)や実績についてより積極的なディスクロー
ジャーが求められるようになっていくと思われます。

そして、今回虚偽表示の対象となった報酬の記載は公認会計士の監査対象外です。
このこと自体に驚かれた方も多いと思います。私自身もお客様に説明すると
「そうなの?」と驚かれました。したがって今回のゴーン氏の件であまり会計
監査の是非について大きな議論になることはないかもしれません。
ただ、同じ「有価証券報告書」という書類の中、しかも数字の部分について会計
監査人の監査対象とそうでないものが混在していること自体、社会一般からみれ
ば非常にわかりづらく、さらに公認会計士への信頼を損なっているようで大変
残念に思います。今後、有価証券報告書における監査対象外の情報への公認会計士
の関与が検討されることになるのではないかと思います。

会計士業界としては、今回の件から「会計監査には関係がない」と安心するの
ではなく、監査が「社会」から認めてもらうため、「社会からの期待」に応える
ため、会計監査の役割をどのような情報発信をしていけばいいのか、また経営者
不正についてどのように対峙していくべきかよくよく考えないといけないように
思います。

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■ 5.年の終わりに

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ゴーン氏の問題が法的に違法行為だったかどうかは裁判所の判断に任せるとし
て、「コンプライアンスの意味は、法律さえ守っていればいいのではなく、広く
社会一般から求められる“倫理的”な行動かどうかも含まれる」ということ考え
るとやはり不適切な行為も多くあるように思います。
すっきり背筋を伸ばして年を迎えるために倫理的な判断を行う基準をご紹介し
ます。A seven-step guide for ethical decision-making (Michael Davis
1999)の中で判断を自らチェックをする際のチェックポイントの一部分を抜粋し、
わかりやすく加工したものです。

・その選択肢は他の選択肢に比較して害は少ないか
・その選択肢は新聞報道(今ならWEB)等で公にしてもらいたいか
・その選択肢は、公に説明ができるものか
・自分がその選択肢の影響を受ける側になっても同じ選択肢をとるか
・家族・同僚・組織のコンプライアンス責任者はその選択肢を支持してくれるか

来年が重要な判断の局面で倫理的な判断を行うことのできる皆様が幸多き年に
なりますように。

平成最後のお正月、どうぞよいお年をお迎えください。
そして、ビズサプリグループを来年もどうぞよろしくお願い致します。

Merry Christmas & Happy New Year

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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管理会計の在り方について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.086━2018.12.5━

【ビズサプリ通信】

▼ 管理会計のありかた

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ビズサプリの泉です。

2018年も12月となり、師走の忙しさを感じるとともに、気温もぐっと下がった
と実感している近頃です。
経理部門における役割は開示制度が大きく変わってきたここ十数年は財務会計
重視されていましたが、それが一段落して管理会計にも一定の役割を果たすこと
が求められているという流れがあるようです。 最近、クライアントとの業務を
していく上も、また経理業界の雑誌においても管理会計が再び注目を集めている
ように感じており、今回は管理会計の在り方について取り上げたいと思います。

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■ 1.管理会計とは

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株主、投資家、国、銀行といった会社を取り巻く利害関係者に対して、制度に
基づいて報告される財務会計とは異なり、管理会計とは、英語ではManagement
Accountigとされるように、経営をするための会計であり、その目的は経営者
や管理者が意思決定をするための羅針盤となる会計情報を提供することです。
具体的には、事業への社内リソースの配分や事業からの撤退を検討するための
事業の業績評価を適切に行うためであったり、より適切なインセンティブ
付与する人事評価の指標とするために利用されます。

管理会計の代表的な業務としてよくいわれるのが原価計算や予算管理です。
原価計算は、個々の製品についてコストがどのようにかかっているかを明ら
かにし、販売価格をいくらにすべきかについて有用な情報を提供するととも
に、製品の原価の内訳を明確化することでコスト削減をする際に役立ちます。
予算管理は、予算と実績を比較することで過去の実績の分析を行い、将来の
実績見込みの精緻化を図ることが主な目的となります。

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■ 2.原価計算や予算管理が管理会計なのか

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もちろん、原価計算によりコスト構造を明確化するとともに、予算管理により
業績評価を行うことで予算達成を目指すということは、会社の目的である利益
の最大化という点で有用ですが、原価計算と予算管理だけが管理会計ではない
と考えます。

原価計算によるコスト構造の明確化については、販売価格をコストに利益を
上乗せする方法で決めることよりも市場における価値、需要によって決まる
ということが増えてきています。また、個々の商品で黒字を確保する必要も
なく、例えば、シェアをとるために赤字であっても戦略的に低価格で販売する
場合もあります。このような場合、原価計算は販売価格のための意思決定に
役立っているとはいえません。
特に製造業以外においては、原価計算におけるコスト管理はあまり効果がなく、
単なるコストを集計するだけになっている場合も多いといえます。

予算管理についても、精緻な着地見込みをつくることで、例えば投資計画や
資金繰りに一定の情報をえることはできますが、「将来に向けての社内リソ
ースの配分」については直接的に有効とはいえないのではないかと思います。

個人的には管理会計といえば、まずは費用を変動費、固定費と分解し、限界
利益を明確にすることだと思います。
固定費は直接費なのか、配賦される間接費なのかを区分することになります。
従来は変動費で配賦される間接費というのは考えにくいものでしたが、最近
AWSのようなサービスの登場で配賦する会社もでてきました。
事業のリソース配分の決定においては、限界利益を最大化するようにしますし、
事業撤退の判断には、単に商品や部門別の利益が赤字ではなく、間接費の回収
ができているかを検討したうえで決定しなければ、判断を誤り赤字が大きく
なる可能性もあります。
ただ、会計情報は一般的には財務会計のルールに基づき作成されるため、集計
単位が勘定科目毎になっており「変動費」、「固定費」といった観点で区別
して集計ができるようになっていることは実務上は少ない印象です。

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■ 3.配賦計算は果たして必要なのか

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最近、いくつかの会社のコンサルティング業務をしているときに、配賦計算を
どの程度すべきかということで議論になることがありました。
配賦計算のメリット、デメリットは次の通りかと思います。

<メリット>
・各事業、部門にコストを負担させることができる
・コストを負担させたうえで、各事業部、部門に求める利益の額が明確化できる
<デメリット>
・配賦計算の手間、煩雑さがふえる
・基準をどこまで精緻にしたところで恣意性がはいる
・実際発生額を配賦する場合は、間接費の発生部門等でコスト意識が低下し非効率
性が発生する恐れがある

原価計算基準やセグメント会計基準、固定資産の減損会計等の財務会計において、
間接費の配賦は一般的な考え方です。また、従来の経理業務のおいては集計を精緻
に正確に行うことが重要視されてきたために、財務会計をしてきた経理部員の中
には配賦計算をすることについて強いこだわりをもっている人も多いと思います。
ただ、管理会計において、有用なのでしょうか?

もちろん、全社でかかっているコストを各事業に配賦することで上記のとおり稼
ぐべき利益の額が明確化はされるものの、デメリットのほうが大きい気がします。

配賦のデメリットである煩雑さは経理部に負担をかけるとともに、現場の各事業
担当者にとっては、通常管理不能費であるとともに、多段階配賦をした場合コス
トの中身が見えづらくなる問題のほうがはるかに大きいと考えます。

特に配賦額について、発生した科目と同じ科目で振り替えている会社が多いです
が、その場合、同じ科目内に直接費と間接費が混在し、コスト構造が見えづらく
なり管理ができなくなります。
もはや、本来コスト管理を精緻にしようとしたにも関わらず、間接費がどれくらい
発生しているかすらよくわからなくなっている場合も見られます。

「とりあえず、何でも配賦」とするのではなくて、一度、立ち止まってその配賦
計算は管理上必要があるのか考えてみるべきではないでしょうか。もし、財務
会計上必要であれば、組替えで対応をすれば済むことになります。

ビズサプリグループでは、決算や法定開示書類の作成といった財務会計のコン
サルティング業務のみならず、各業種における管理会計の見直しや、システム
更新の際の要件定義のサポートも行っておりますので、何かありましたらご相談
ください。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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