株式会社Bizsuppliのメルマガバックナンバー

会計を中心とした実力派プロフェッショナル集団であるビズサプリのメンバーが、旬のネタや色々な物事への洞察を記載したメルマガのバックナンバーです。

仮想通貨取扱のルール

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.066━ 2017.12.21━

【ビズサプリ通信】

▼ 仮想通貨取扱のルール

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こんにちは。ビズサプリの庄村です。すっかり寒くなり忘年会やクリスマス
などイベントも多く多忙を極めている方も多いと思います。
2017年最後のビズサプリ通信は仮想通貨をテーマにしたいと思います。

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■ 1.仮想通貨とは

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最近はビットコインや仮想通貨という言葉を新聞やTVニュース等でよく見か
けます。

仮想通貨はもともとオンラインゲームの「おもちゃのコイン」から派生した
もののようですが、実体を持たないバーチャルなお金です。
資金決済法上で仮想通貨は、次のいずれかに該当するものとして定義されて
います。
①代価の弁済のために不特定の者に対して、使用することができ、かつ、
不特定の者に対して購入及び売却ができる
②電子機器その他のものに電子的方法で記録され、移転できる
法定通貨又は法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)でない
仮想通貨にはいろいろな種類があり有名な仮想通貨としてビットコイン
あります。

送金手数料が格段に安いため、仮想通貨は海外送金等の送金手段として使用
されることが多いです。
中国では人民元の海外への資金移動制限があるため外国との資金決済で仮想
通貨の便利さが評価されてきましたが、当局がビットコインの取引所を閉鎖
するなど国家による統制もあり、今後の行く先が不透明なところもあります。

また、仮想通貨の価格は取引所で「いくらで売りたい人」と「いくらで買い
たい人」という人がうまくマッチングして取引が成立する相対取引で決まる
ため、価格は常に変動します。したがって、投資手段として使用されること
も多いです。価格が下がったときに買って上がった時に売れば、その差額が
儲けとなります。まだ取引の歴史が浅いこと等もあり、価格の上げ下げが
激しいようです。

さらに最近の新聞紙上をにぎわしているように仮想通貨は飲食店や家電量販店
等のお店での支払手段として使用されています。国内ではまだ利用できる店舗
は限られているものの1万店舗以上で使用されているようです。
仮想通貨の代表格であるピットコインの支払いは「ウォレット」という専用
アプリを通じて行います。
お店でビットコインアドレスのQRコードを発行してもらい、それをスマホ
読み取って利用代金を送金するのみで、現金やカードが不要でスマホさえあれ
ばその場で支払が完了します。
ウォレットにある残高の範囲内で送金ができます。
仮想通貨はクレジットカード、Suicananaco等の電子マネー、デビット
カードと違い、専用のカードリーダーが不要のため、初期費用が安く済み、
また仮想通貨の支払手数料はクレジットカード決済でクレジットカード会社
等に支払う手数料よりも安いため、今後は大型店舗や個人商店でも導入が
進んでくると予想されます。

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■ 2.法整備

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仮想通貨は社会生活に欠かせない存在になりつつあるので、2017年4月に仮想
通貨について規定された新しい法律が施行されました。正式名称は「情報通信
技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」で
あり、フィンテックに代表されるIT技術の発展などの伴う環境の変化に対応す
るために金融分野の法律を改正することが法制度の目的です。金融グループに
おける経営管理の充実や共通・重複業務の集約等、技術革新や仮想通貨への
対応といった内容が盛り込まれています。

このうち、仮想通貨への対応が盛り込まれた(改正資金決済法)が改正され、
そこでは「仮想通貨とは何か」という定義しました。
日本が世界に先駆けて仮想通貨を定義した法律を制定したようです。

また、仮想通貨交換会社も定義したうえで仮想通貨交換会社に対して登録制
が導入されるとともに、仮想通貨交換業者にはマネーロンダリングを防ぐため、
仮想通貨を取引する人に対して、銀行並みに本人確認を徹底します。また、
顧客からの預かり資産と、事業の運営資金を別々に管理することを義務付けて
います。

さらに、仮想通貨交換業者の分別管理に伴い、仮想通貨交換会社の財務諸表監査
及び分別管理の監査が義務付けられることとなりました。

法整備によりいろいろな企業が仮想通貨事業に参入し、さまざまなサービスが
登場して、安心・安全に仮想通貨をつかうことができるようになることが期待
されます。

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■ 3.会計ルール

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改正資金決済法の改正により、仮想通貨交換会社の財務諸表監査が義務づけら
れたことを受け、企業会計基準委員会(ASBJ)は仮想通貨を利用する際の会計
ルールの公開草案、実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想
通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」を公表しました。
これは2018年4月1日以降開始する事業年度の期首からの適用され、仮想
通貨交換業者だけでなく、仮想通貨利用者にも適用されます。

では、会計処理はどうなるのでしょうか?
期末における仮想通貨の評価については、活発な市場の存在の有無により会計
処理が異なります。
活発な市場が存在する場合は、市場価格に基づく時価でBS計上し、帳簿金額
との差額は当期の損益として処理します。
一方、活発な市場が存在しない場合は、取得価額でBS計上します。ただし、
期末における処分見込価額が取得価額を下回る場合には、処分見込価額でBS計
上し、取得価額との差額を当期の損失として処理します。

そこで「活発な市場が存在する場合」、とは「継続的に価格情報が提供される
程度に仮想通貨取引所または仮想通貨販売所で十分な数量及び頻度で取引が行
われる場合と定義されています。

仮想通貨交換業者又は仮想通貨利用者が仮想通貨の売却取引を行う場合、
当該仮想通貨の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額
をPLに表示します。

注記情報として以下を注記します。
・期末日に保有する仮想通貨のBS計上額合計
・預託者から預かった仮想通貨BS計上額合計
保有する仮想通貨について活発な市場の有無に区分して仮想通貨種類ごとの
保有数量とBS計上額

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■ 4.税務ルール

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最後に税務上はどうなるのでしょうか?

消費税については仮想通貨の売買取引は非課税となります。これは、仮想通貨
は海外でも売買することもあり、海外では消費税がかからない一方で国内取引
に消費税を課すと日本でピットコインを買う人が海外で買う人よりも一方的に
不利になってしまうためです。

ビットコインをはじめとする仮想通貨を売却または使用することにより生じた
利益は、所得税の課税対象となります。原則として、雑所得に区分され、所得税
の確定申告が必要になります。

ここで注意しておきたいのは、「売却または使用すること」の取扱いです。
法定通貨に交換したときに利益が出ていれば課税対象されることは分かりやす
いですが、所有ビットコインでモノを購入したときに利益が出ていれば課税取引
となります。
例えば、100万円で買ったビットコインが150万円となり、150万円の
車を買ったときには50万円が課税対象となります。
これは仮想通貨で150万円の車を買ったときに一旦100万円の仮想通貨から
150万円の法定通貨に交換して利益が出たものと考えるためです。

以上のように仮想通貨の所得税の課税対象取引を把握するのが取引履歴は分か
りやすく残していくように心がけましょう。


本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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企業の豊かさとは何か?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.065━ 2017.12.6━━

【ビズサプリ通信】

▼ 企業の豊かさとは何か?

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こんにちは。ビズサプリの花房です。師走となり、年末特有のイベントや来年
に向けての仕事の整理など、多くの方は通常月よりも忙しくされることと思い
ます。さて今回のビズサプリ通信では、最近特に目立って来ている企業不正の
根本原因から、企業の社会的な役割について再考してみたいと思います。

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■ 1.相次ぐ不正問題とその問題の本質
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今年のビズサプリ通信では、東芝の不正問題について多く取り上げてきました
が、不正自体は2015年に起こったもので、今年は監査報告書が出来るかどうか
と上場維持問題にスポットライトが当たっていました。ところが、9月以降は
立て続けに、日産の無資格者による検査不備、神戸製鋼所三菱マテリアル
東レの品質データの改ざんが発覚し、日本のものづくりへの信頼性の危機の
ように取り上げられています。

いずれも今年たまたま行われたというものではなく、30年とか40年と言った前
から行われていたような証言も出て来ています。原因の究明は道半ばですが、
すでに経営トップが辞任に追い込まれるなど、その影響が徐々に波及していま
す。

このような不正がなぜ起こったかということについては、過去の事例も含めて
コンプライアンス意識・モラルの低下、経営陣・上司からのプレッシャー、隠
ぺい体質といった経営風土上の問題があった等、様々な理由が挙げられるので
すが、突き詰めるところ、多くの場合は結局「利益」の成長を続けなければな
らないという市場からの圧力によることが、多くの場合の不正問題の本質では
ないかと考えています。そうであれば、増収増益による成長を続ける企業が、
最も優れている企業であるという評価に対応するため、経営者として無理をし
てまで利益を確保する縛りを逆になくせばいいのではないか、と思うのです。


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■ 2.資本主義経済とガバナンス強化

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上記のことについては、上場会社である以上、会社を成長させることが経営者
に課せられるミッションであり、増収増益を続けて行くことが、投資家に対し
ての責任を果たすことであって、そのプレッシャーに屈して不正を働くことの
ないよう、内部統制を整備・運用し、コンプライアンス遵守の体制を強化し、
企業風土を含めた企業のガバナンスを向上させることで、不正を防げるのであ
るから、その上でやはり利益を追求して行くべきだと言った反論があることは
もちろん承知しています。

しかしながら、経済の成熟した先進国にとって、一般市民にとって食べて行く
ために稼ぐことが人生のすべてではなく、価値観が多様化し、少子高齢化が進
み、国内市場の成長が見込めない中で、マーケットがゼロサム、場合によって
は縮小を余儀なくされる厳しい状況の中で会社を成長させていかなければなら
ないのと、高度成長期に代表されるマーケット自体が成長する時代において、
それなりにやっていれば企業を成長させられるのでは、ITの技術革新などで新
たに作り出される産業は別として、旧態依然の既存産業については競争環境が
あまりに違い過ぎるように思います(事実、今回立て続けに不正が発覚してい
る企業は全て、素材産業や製造業と言った、かつて日本の中心となっていた産
業ではないでしょうか)。

資本主義経済は自転車操業であると形容されますが、それは経済全体が成長す
ることで、誰も損をせず、皆が勝者になることが大前提であるように思います。
それが一たび停滞すると、勝者と敗者が出てきて、敗者が多くなることで不況
になり、資本主義は停まってしまうという理屈です。IoTやAIと言った、今後
成長する可能性の高い分野の出現や、技術革新によって、今まで不況を克服で
きたということもあるでしょう。

しかし資本主義経済であることから、毎期の成長、言い換えると利益を計上し
続けることがあまりに強く求められる結果、その市場圧力が不正の要因となる
のであれば、逆に投資家が利益をそこまで求めなければ、不正を起こそうとす
る動機が減り、その結果ガチガチで窮屈なガバナンスでなく、ほどほどの健全
なガバナンスで済むような気がいたします。とは言っても資本主義経済よりも
いいと考えられる経済システムはないのが現状ではあるのですが。

グローバル化がどんどん進展し、未開拓地域がなくなる一方、人間の生活には
消費活動が必要ですから、皆が豊かになり人口が増えると、物的な資源が徐々
に枯渇していきます。このような問題に対応するため、大量生産・大量消費で
はなく、循環型社会への取り組みが色んな形で試されています。シェアリング
エコノミーの提唱もその問題解決への取組みの1つでしょう。


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■ 3.利益が全てではない

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それでは投資家は利益以外に何を企業に求めればいいのでしょうか?利益は、
企業の決算書の中でも代表的な指標であり、決算書に関する情報を財務情報と
分類します。一方、有価証券報告書やアニュアルレポートの中には、財務情報
以外の情報があり、これを財務情報に対して非財務情報と分類します。非財務
情報は、経営者による財政状態・経営成績の分析、経営理念や経営ビジョン、
経営者や従業員の情報、中期経営計画と言ったものがあります。また古くは
環境報告書と言われ、近年ではCSR報告書から、サスティナビリティレポート
と形を変えて来ていますが、主に環境問題や社会問題に対しての企業の社会的
取り組みをまとめたものです。

最近では、この財務情報と非財務情報を別個のものではなく、1つにまとめた
「統合報告」を作成することが、ヨーロッパ企業を中心にトレンドとなってい
ます。企業としては、『財務情報以外にも社会に提供する価値を含めて、企業
価値を含めて欲しい』というメッセージと理解しています。実際、機関投資家
の中には、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)
の頭文字を取ってESG投資と呼び、そこへの取り組みが優良な企業に投資して
行こうというという考え方も生まれています。ただ、環境問題や社会問題に対
する取り組みが財務情報と結びつきにくく、また過去・現在のみならず将来に
影響するものでもあるため(財務情報は基本的に過去情報)、投資効果として
判断しづらいと言った課題もあるので、投資指標として『利益』を超えるもの
にはなっていません。

少し前になりますが、ブータンで重要視されている指標として、GNPならぬGNH
(=Gross National Happiness)が話題となりました。国民1人当たりの幸福を
最大化することで、社会全体が幸福となるとの考え方から生まれた指標です。
コンセプトそのものは大変理想的なものですが、最近ブータンで問題となって
いるのは、『幸せ』の定義が揺れていることだと言います。当初近代的な物を
持っていない状況では、皆が欲しい物は共通で経済の成長とともにそれらが手
に入り幸福度も上がっていったのが、ある程度の物が普及し、経済格差が徐々
に出てくると価値観も多様化し、それぞれの『幸せ』の尺度に幅が出てきてい
るようです。これは、高度成長期前後の日本と同じではないでしょうか。

以前高校生時代の夏休みの課題図書で、『豊かさとは何か』(暉峻淑子 著、
1989年 岩波新書)という本を読んだ記憶があります。漠然とですが、本当に
幸せなのは物質的な豊かさではなく精神的な豊かさなのだというような話だと
漠然とは感じたものの、未熟な高校生の経験ではからは、本当に深い意味では
理解できず、難解な本だったように思います。1989年と言えばバブルの真っ只
中にあって、その中で30年も前にこの本を書いた著書の社会の洞察力は、今更
ながら凄いと感じます。

今年の11月はちょうど北海道拓殖銀行の破綻、山一証券の自主廃業から20年の
節目ということで、雑誌等で関連の記事が多く書かれています。詳細はそれら
の記事に譲るとして、やはり根本的な原因は、利益を追求するあまり無茶をし
た、ということでした。

ここで改めて企業の社会的な役割について、大学時代に学んだことを思い返し
てみると、企業には多くの利害関係者(ステークホルダー)が存在して、株主
だけでなく、従業員、顧客、債権者、取引先、政府、地域社会などとお互いに
助け合うことで企業は存続できているのであり、そのための利害調整をする役
割を、財務会計が果たしている、と学びました。つまり、企業は株主や投資家
だけを見るのではなく、それ以外の利害関係者にもきちんと向き合わなければ
ならないところ、最近特に、投資家の方を向く傾向が強くなっています。

投資家からみれば、人件費、仕入、税金、金利、いずれもコストですが、それ
らを受け取る側に取ってみれば「利益(あるいは収入)」であって、売上が
一定の下では、投資家の『利益』を増やそうとすると、その他の利害関係者へ
の分配を減らさなければなりません。果たしてそれが社会的にいいことなのか、
それを改めて考えなければならないと思います。先程の著書のタイトルを借り
ると「企業の豊かさとは何か」を考えた場合、それは投資家の懐を潤すことだ
けではないはずです。そのような観点から、企業活動の責任とその果たすべき
役割を見直すべき時代に来ており、持続可能な社会実現のためには、個々の企
業そのものの持続可能性を『利益』以外の部分でも高めて行く必要があります。

ステークホルダーとの関係性が投資家偏重になるのではなく、バランスの良い
関係を再構築することが、今後の健全な企業ガバナンスではないかと考えます。

ビズサプリグループでは、上場支援、企業再編、M&A、PMIにおける各種支援の
他、内部統制やガバナンス向上支援も行っておりますので、ご興味ありました
らご相談頂ければと思います。
http://www.biz-suppli.com/menu.html?id=menu-consult

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

 

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「自分らしく」に ついて

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.064━2017.11.15━━━

【ビズサプリ通信】

▼ 自分らしく

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こんにちは。ビズサプリの辻です。どうしましょうか。あっという間に今年が
終わってしまいます。昨年も同じことを書きましたが、この加速的な時間の流
れ、みなさんも同じ思いでしょうか。

これから、自分の1年間を振返ることが多いシーズンとなりますね。最近よく聞
くフレーズに「自分らしく」というものがあります。本日は「自分らしく」に
ついて考えてみたいと思います。

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■ 1.「自分らしく働く」とは?
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若い人がせっかく入社しても短期間で仕事をやめてしまうことが問題になります
が、その理由に「自分らしく働けないから」というものが多くあるそうです。

「自分らしく」という言葉は、スポーツ選手が使っているのをよく耳にします。
この場合はおそらく「自分の練習成果を最大限発揮する」「自分が表現したい
ことを精一杯表現する」「得意な技をとことん極める」といった比較的明確な
意味を持って使われています。

一方で、「自分らしく働く」ということを定義するのは結構難しくはないで
しょうか。
実際に、ある研究機関が様々な企業において、アンケートやディスカッションを
通じて「自分らしく働く」とは具体的にどういうことかを聞いたところ、ほとん
どの人が定義できないという結果が出たそうです。

ただ、ある企業で新入社員に対して行う新入社員研修において、研修期間を通じ
て、冒頭の最初の30分間「自分がこの会社の中でどのような価値を発揮できる
か」「自分にしかないものはなにか」「どんなことが自分らしいといえるのか」
という点について考えてもらったところ、通常の研修(自分らしさを考える時間
はない)を受けた新入社員に比較して離職率が低くなり、仕事に対する満足度が
高いという実験結果があるそうです。(ハーバードビジネスレビュー 2017年
10月号「建設的な不調和」で記号も社員も活性化するより抜粋)

つまり、どのように働くことが「自分らしいのか」を考えること自体が大切な
ようです。


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■ 2.「自分らしくない」ことのサインを見逃さない

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「自分らしくない」と感じる一つに、自分の良心や倫理観に反するような行為を
強要されるということがあります。この場合は、まだ「組織の論理」「組織だけ
がもつ悪しき価値観」に染まっていない人の方が正しい感覚を持っているかも
しれません。

誰かが唱えた疑問・異論に対して、「ずっとこういうやり方だった」と「いつも
のやり方」を押し切っていては、組織内で自浄能力が発揮されることはありま
せん。最近の大手企業の不正・不祥事はこのような「組織の論理」「同調圧力
で、新しく入ってきた人の素朴な疑問やストレスをくみ取れておらず、結果的に
長年「誤ったいつものやり方」が「正しいやり方」として継続されているよう
に見えます。

時には「自分らしくない」とストレスをためている若い人のストレスに耳を傾け
ることは、自浄作用を発揮する大切な情報収集の1つなのです。このような話に
耳を傾ける機会や時間を取れていますでしょうか。また「いつものやり方」を
振り返ることはありますでしょうか。


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■ 3.幸せだと「生産性」もあがる

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ちなみに、ある調査結果では人間の生産性は、「幸せだ」と感じると上がる
そうです。(「競争社会の歩き方」大竹文雄著)

「日本のホワイトカラーの生産性は低い」と言われていますが、ひょっとした
ら、「仕事から得られる幸せ度」が低い、つまり、「仕事が好きでない」から
かもしれません。自分の仕事に対して誇りを持っており、その仕事を「天職」
と思っていると生産性も高く、そして創意工夫やイノベーションも生まれるの
でしょう。

このように考えると、例えば従業員満足度調査等では、「会社に対する満足度」
だけでなく、「仕事自体」に対するやりがいや満足度の項目について、注視して
やりがいを持つために何をすべきかを考えていくことも必要でしょう。


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■ 4.その前の次元が満たされていることも大切

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「自分らしく働く」というのは、仕事での自己実現ともいえます。「自己実現
欲求」はマズロー欲求5段階説の階層ででいうと最終の高度な欲求です。
それ以下の階層の欲求が満たされていない限りは、そもそも「自分らしく働く」
という欲求も出てこないのかもしれません。

例えば、海外子会社などで安全欲求が満たされれていない状況や、非正規労働で
経済的な安定がなく、「食べるものにも困る」状況では「自分らしく働く」どこ
ろではありません。

特に、日本でも非正規労働や子供の貧困の問題などが顕著になっています。みな
が「自分らしく働く」ということを考えられるような次元になるようにしていく
ことも大切ですね。


本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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東芝の特注指定解除は勇み足

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.063━2017.11.01━━
【ビズサプリ通信】
▼ 東芝の特注指定解除は勇み足
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 結構暖かな日が続いたと思ったら、急に11月下旬並みの気温に下がりまし
た。季節外れの台風が毎週のように来ます。10月の長雨も127年ぶりとのこ
と。皆様、健康管理にはご留意ください。
 さて、東京証券取引所は10月12日付で、東芝の特設注意市場銘柄(特注)
の指定を解除すると発表しました。これによって、上場廃止の恐れを周知する
「監理銘柄(審査中)」の指定も外れました。そのため東芝の株価も少し上が
っているようです。今回の【ビズサプリ通信】では、この東証の指定解除に
ついて考えてみました。

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■ 1.これまでの経緯
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 東証は、2015年9月、東芝による過去5年度分の訂正報告書の提出を受けて、
特設注意市場銘柄に指定しました。東芝は、その1年後の2016年9月に内部
統制の改善状況を報告する「内部管理体制確認書」を東証に提出しました。
しかし、東証は改善が不十分として特設注意市場銘柄の指定を継続することに
しています。
 東証は、特設注意市場銘柄に指定した1年半後の2017年3月には、上場
廃止となる恐れがあることから「監理銘柄(審査中)」に指定しました。
東芝は、このタイミングで東証に対して、再度「内部管理体制確認書」を
提出しました。この東芝による内部統制の改善状況の再度審査を開始する
時点で、東証は「監理銘柄(審査中)」に指定したということになります。
 このような経緯で冒頭のとおり、東芝の「特設注意市場銘柄」と
「監理銘柄(審査中)」の解除が行われたことになります。東証のこの審査は
「内部管理体制確認書」が提出された3月から10月まで7ヶ月かかったという
ことになります。

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■ 2.監査法人の監査意見は限定付き適正意見
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 この東証による審査の間に、東芝有価証券報告書を提出しています。
そこで明らかになったのは監査法人の監査報告書が「限定付き適正意見」
であったことでした。
 これは「6,522億円もの金額が、場合によっては全額前期の損失として
計上すべきであった」という限定事項でした。我々専門家から見て、
「こんな限定事項ありか? これなら不適正でしょ」としか考えられない
ものでした。
 この監査意見が不適正意見なら即上場廃止になっていたところでした。
新聞紙上では適正意見が出たので、次の課題は当期末に債務超過が回避できる
かどうかだ、という論調に変わりました。
 限定付き適正意見というのは、決算の一部分が適正でないということです。
それも東芝の場合、上述のとおり最大6,522億円もの金額が当期の損失と
すべきでないというものでした。実は、この6,522億円が絶妙な金額で、
もしこの金額を前期(2016年3月期)に損失として計上していたら、前期決算
はギリギリ債務超過にならない金額でした。もしこの金額が6,800億円だっ
たら、2期連続債務超過になっていたところです。すなわち、監査法人
よる限定付き適正意見はスレスレのウルトラCだったのです。

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■ 3.内部統制は不適正
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 限定付き適正意見は決算書に対する監査意見ですが、内部統制報告書に対す
る監査意見は「不適正意見」だったということは、あまり報道されていません。
東芝は「内部統制は有効」という報告をしていますが、これに対して監査法人
は「有効でない」と結論づけたため、監査法人は「不適正意見」を表明したの
です。
 東証は、東芝が提出した「内部管理体制確認書」を審査したことになって
います。監査法人が「内部統制は有効でない」としているにも関わらず、
東証は特注の指定解除をしたことになります。

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■ 4.内部統制の懸念は解消されたのか
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 いくら監査法人の監査意見が限定付き適正意見(決算書)であったり、
不適正意見(内部統制)であったりしても、過去の状況を示しているにすぎ
ない、という反論があると思います。決算と内部統制は2017年3月期以前の
状況です(厳密には内部統制の評価は期末時点)。東証は現時点と将来を見て、
特設注意市場銘柄の指定解除をしたのだと思います。それでは、東芝の現在と
将来の問題が解消されたのでしょうか。
 報道されているように半導体事業が2018年3月末までに売却できないと、
2018年3月期で2期目の債務超過になり、東芝上場廃止になります。
懸念材料はこれだけでしょうか?
 実は、2017年3月期の東芝の連結財務諸表にはウェスチングハウスグループ
が含まれていません。その結果、ウェスチングハウスグループの内部統制は、
評価対象から外れています。筆者はこれが重要な問題と思っています。
 ウェスチングハウスグループという一種の「爆弾」を抱えた状態であるにも
関わらず、その会社(子会社を含む)の決算が除外され、内部統制も評価対象
に入っていないという状況なのです。破綻した会社は連結から外しても良いと
いう米国会計基準によって、これらの会社は連結から除外されていますが、
これによって内部統制の評価対象も自動的に対象外となります。
 これは筆者の推察ですが、東証に提出した「内部管理体制確認書」に
ついてもウェスチングハウスグループは除外されていたのではないかと思い
ます。ウェスチングハウスの内部統制に問題があれば、子会社のウェスチング
ハウスの決算が適切にできない可能性があり、ウェスチングハウスの正しい
財務情報がタイムリーに親会社の東芝に伝わって来ないということになります。
それは後になって、減損、債務保証損失、損害賠償損失のような形で現れると
思います。そのような状況では東芝の決算が適切にできるとは思えません。
 これまでも、ウェスチングハウス関連で、急に7,000億円を超える減損が
計上されたことが報道されています。この大部分が限定付き適正意見の対象に
なっていると考えられます。これは減損の対象になる資産がそもそも計上され
ていない状況で、資産(のれん)を計上すると同時に減損処理したことから
発生しました。ウェスチングハウスグループの内部統制がわからない状況では、
何が起こるかわからないということが言えます。
 以上から、東証による特設注意銘柄と監理銘柄(審査中)の解除は、
「勇み足」と言わざるをえません。

 本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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議決権行使助言会社

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.062━2017.10.17━━━

【ビズサプリ通信】

▼ 議決権行使助言会社

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こんにちは。ビズサプリの庄村です。秋の深まりを感じる季節となりましたが、
いかがお過ごしでしょうか。収穫の秋を迎えておいしいものをついつい食べ過
ぎ過ぎてしまっている方もいらっしゃるかもしれません。今回のビズサプリ通
信では、議決権行使助言会社について取り上げたいと思います。

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■ 1.議決権行使助言会社とは
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来期の株主総会に向け、水面下で色々と検討している会社も多いと思います。
新聞やインターネット等で議決権行使助言会社ということばを良く耳にします
が、議決権行使助言会社とはいったいどのような会社なのでしょうか?

議決権行使助言会社とは、株主総会での議決権を持つ機関投資家を顧客とし
て、投資先企業の株主総会議案に対する議決権行使について賛成・反対の推奨
を行う会社です。具体的には、機関投資家に対して株主総会での議決権行使に
参考となるレポートを配信している会社です。

機関投資家株主総会で議案に賛否を表明しなければなりませんが、投資先企
業がとても多く、株主総会が一時的に集中する場合、個々の議案に十分に時間
をかけるリソースがないため議決権行使会社のレポートを参考にするのです。

議決権行使助言会社で有名なのは、米国のインスティテューショナル・シェア
ホルダー・サービシーズ(ISS)とグラスルイスの2社です。
議決権行使助言会社機関投資家機関投資家の投資先企業から個々の議案に
対する賛否の理由を求められます。そのため、ガイドラインを公表しています。

以下2,3では、2017年に改定した議決権行使助言会社ガイドラインの主な
改正点をご紹介します。


日本では、2017年5月に日本版スチュワードシップ・コードが改訂され、機関
投資家の議決権行使の個別開示が始まりました。
日本の機関投資家議決権行使助言会社ガイドラインを参考にすることでしょ
う。そのためこのガイドラインはアメリカの会社が作成したものですが、日本で
も注目を集めています。

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■ 2.相談役・顧問制度

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日本企業では、取引先との関係維持や社内での相談に乗るため相談役や顧問が
いる会社が多いようです。
2016年9月に実施した経済産業省のアンケートによると、東証1,2部上場会社
のおよそ62%において相談役・顧問が就任していることが分かりました。

2017年の米ISSガイドラインでは、相談役や顧問を新たに規定する定款変更
議案について反対を推奨することとしました。
それは、相談役や顧問は取締役ではないため、株主代表訴訟の対象にもならない
し、また、その報酬や活動状況が外部に開示されないことが理由です。
したがって、相談役や顧問を取締役の役職として規定する定款変更決議について
は反対を推奨していません。この場合、必要であれば取締役に対して責任を問う
ことができるためです。

会計不祥事問題が明らかになった東芝では、会長や社長を退いた経営者が相談役
としてトップの人事や企業経営に大きな影響を与えてきました。
後継者である現在の会長や社長が、前任者(相談役や顧問)が決めた企業戦略を
変更することが難しくなってしまします。

東芝の会計不祥事事件がISSガイドライン改訂に影響を与えたのかもしれません。

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■ 3.社外役員の兼務制限

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米グラスルイスの2017年に改定したガイドラインでは、役員兼務数の上限の引
き下げを行いました。
上場会社の執行役員を務めていない役員については、6社以上の上場会社で取
締役・監査役を兼任することに反対を推奨することとしました。
上場会社の執行役員を務めている役員については、3社以上の上場会社で取締
役・監査役を兼任することに反対を推奨することになりました。

近年の取締役または監査役の責務は重くなる一方で、社外役員がその役割を果
たすためには、十分な時間を必要とするためです。
社外役員は事前に送付される取締役会の資料を熟読し内容を理解したうえで取
締役会へ出席したり、会社の事業などを理解するために、工場や店舗を往査し
たり、会社幹部と面談など、十分な時間が必要となるためです。
兼務を制限して当該会社に時間をかけてほしいとの要請と思われます。

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■ 4.日本版スチュワードシップ・コードとの関連

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前述した、2017年5月に改訂された日本版スチュワードシップ・コードでは、
指針5-4にて、「機関投資家は、議決権行使助言会社のサービスを利用する
場合であっても、議決権行使助言会社の助言に機械的に依拠するのではなく、
投資先企業の状況や当該企業との対話の内容等を踏まえ、自らの責任と判断の
下で議決権を行使すべきである。」としています。

ISSでは、取締役会への出席率が75%に満たない取締役選任議案に反対推奨す
る方針でしたが、2016年6月に開催されたソフトバンクグループの株主総会
前年度の取締役会出席率が56%と、75%に満たない社外取締役である永守重
信・日本電産会長兼社長の再任議案に賛成推奨したようです。
取締役会への出席率は低いものの人物本位で評価した結果です。

形式にとらわれず、実質で評価することが必要ではないでしょうか。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。


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株式の非上場化

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.061━2017.9.29━━━

【ビズサプリ通信】

▼ 株式の非上場化

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こんにちは。ビズサプリの花房です。9月も終盤に入り、来週はもう10月です。
朝晩が涼しくなって季節の変わり目を感じます。今回のビズサプリ通信では、
株式の非上場化、特にMBOについて取り上げたいと思います。

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■ 1.USEN上場廃止
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今年の8月10日に、㈱USEN上場廃止となりました。上場廃止理由は、「株式
会社U-NEXTとの経営統合及びそれに伴う持株会社体制への移行のため…」と
あります。U-NEXTは動画配信サービス、USENは有線放送の会社であり、両社
とも筆頭株主宇野康秀氏であり、営業基盤を共有し、経営効率を高める狙い
のようです。経営統合のスキームとして、U-NEXTがUSENに公開買付(TOB
をする形で行うのですが、事実上、宇野氏によるマネジメント・バイアウト
MBO)と見られています。

スキームの詳細は省略しますが、今年2月13日付のUSENの開示資料において、
「宇野氏は、当社の主要株主である筆頭株主であり、かつ、公開買付者の
完全親会社であるU-NEXTの代表取締役社長及びその支配株主であるUNO-
HOLDINGSの一人株主です。このように本公開買付けは、当社の取締役会長
及び主要株主である筆頭株主である宇野氏の主導の下で行われることから、
本経営統合はいわゆるマネジメント・バイアウトMBO)に類する取引で
あると考えております」と記載しています。

同様の資料に、「マネジメント・バイアウト(MBO)とは、公開買付者が当社
の役員である公開買付けのことをいいます。」とあり、宇野氏がUSENの役員
であってかつ、宇野氏個人がUSENを買い取るのであれば、MBOそのものです
が、今回のスキームは宇野氏個人ではないけれども、総合的に判断すると
実質的にMBOだと言っているのだと思います。

そして通常、MBOをする際には、対象が上場会社の場合は買収者の持分はさほ
ど大きくないので、買い付けに必要な資金を借り入れるのが一般的です。
今回のUSENのケースでも、合計800億円を上限として借り入れる予定との
ことでした。

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■ 2.MBOのメリット・デメリット

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MBOの理由は様々ですが、USENの場合は、筆頭株主である宇野氏の下、U-
NEXTの傘下にU-NEXTの既存事業を切り出した会社、USENの既存事業を切り
出した会社、その他の子会社を配置する持株会社制とすることで、「マネジ
メントとして最適な経営資源の配分を実行することができると考えている」
と言っています。

株式を上場すると、経営がガラス張りになり、経営者が長期的な思考で将来の
事業を構築しようとしても、それが短期的には収益に繋がらない、あるいはコ
ストがかかると判断されれば、短期的には利益が減る可能性があることから、
すぐの配当や株価上昇を期待する株主からは、反対される傾向にあります。

そうすると経営者は株主の期待と本来自分がやりたいことのはざまで悩むこと
となり、会社の従業員や将来性を考えた場合、上場を廃止し、余計な外部の圧
力を極力減らす道を探すこととなり、それが非上場化、ひいては自らが株式を
買い取る道を選択すること、すなわちMBOを行うこととなるのです。

そうすると経営者は外部の株主を気にすることなく、従業員のことを大切にし、
リストラをすることなく長期雇用で家族経営を継続する、あるいは権限を社長
に集中できるので、意思決定を迅速化し、チャンスを逃すことなく実行できる
利点もあります。

但しそれはもろ刃の剣でもあり、権限が社長に集中する結果、社長によるワン
マン経営(部下の進言に耳を貸さなくなる)、会社としてハイリスクな選択を
すれば、ハイリスクを負いやすくなる、社長個人も多額の借入により、業績が
改善しなければ、返済できないリスクを負いやすくなる、コンプライアンス
対する意識が希薄になる、というデメリットもあります。

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■ 3.不況に強いのは上場会社かオーナー会社か?

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少し前になりますが、2014年7月11日付の日経新聞の記事で、『オーナー
企業、資産の効率利用でサラリーマン経営上回る』という記事がありました。
その要旨を簡単に述べると、大株主に創業家や創業一族がいたり、経営に携わ
ったりする企業を「オーナー系」、それ以外を「非オーナー系」に分け、業績
や財務などを比較した結果、総資産利益率(ROA)は非オーナー系が平均
7.83%に対してオーナー系の平均は9.03%と大きく、またその他の指標も総
じてオーナー系の方が成績が良かったと言うのです。

非上場会社=オーナー会社ではないですが、非上場の会社は上場会社に比べて
株式の売買が自由でない分、株式が誰かに集中しやすい傾向にあるのは事実で
す。そしてMBOは経営者が中心となって株式を買い取るため、MBOした会社も
一種のオーナー会社と言えます。実際MBOの多くは、元々創業者が上場後、
株式を買い戻すケースも目立ちます。

元々の創業者、あるいは当初はサラリーマン社長であってもMBOをする経営者
は事業への思い入れが非常に強く、リスクを取って、すなわち覚悟を以って
経営できるのが強みのように思います。そしてそのような経営者は総じて行動
力や従業員を大事にする姿勢から、カリスマ経営者として、従業員のベクトル
を一つの方向へ集中することで、大きな改革を成功に導けるのでしょう。

不況下においてはいち早く課題を把握し、対応策を計画し、実行するスピード
感が重要となります。また現在企業が置かれている環境は、国内における市場
規模の成長の限界・縮小や、世界的な社会情勢の不安感、AI、IoTに代表される
ITの進化等の中、企業自身がドラスティックに変化・対応していかなければな
りません。その意味で社長1人で意思決定できず、取締役会、場合によっては
株主総会を経なければ行動できない上場会社と、社長の一存で物事を決め、全
社員をいつにまとめられる求心力のあるオーナー会社の方が、一般的には優位
であると言えそうです。

冒頭のUSENに限らず、昨年はマネースクエアHD、アデランス、今年はTASA
KI等、有名企業のMBOが続いています。またかつてMBOした企業の再上場で
は、2014年のすかいらーく、今年3月のあきんどスシロー等があります。
一度MBOで非上場化した後で改革を行い、体制を立て直して再び成長軌道に
乗せ、再上場を図るというのも企業の戦略の1つと言えます。

一方で上場会社の方は一般的にその知名度、社会的安心感から優秀な社員を集
めやすく、借入だけでなく資本市場からの資金調達が出来るので多額の資金を
集めやすい、会計監査を受ける過程において内部統制がきちんと整備・運用さ
れることや一定のガバナンスが求められることから、経営管理体制が充実する、
といった点で優位性があります。

起業した経営者の1つの目標は「上場」です。ある程度ビジネスが軌道に乗り、
より成長を加速するため、上場することを目指しますが、上場そのものが目的
ではなく、上場していることを通じて、会社の理念や経営方針の実現を目指し
て行くことが肝要です。最近は『ESG』投資という言葉もあり、環境(Environ
-ment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を重要視して投資を
する考え方です。

シリコンバレーでは、世の中の問題解決型の起業が多いとも聞きます。やはり
起業の目的として重要なのは、いかに世の中の役に立つか、ということではな
いでしょうか。そのための戦略の1つとして、上場か非上場化の選択があると
思います。

ビズサプリグループでは、上場支援、企業再編、M&A、PMIにおける各種支援
も行っておりますので、ご興味ありましたらご相談頂ければと思います。
http://www.biz-suppli.com/menu.html?id=menu-consult

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

 

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真実の瞬間(Moment of Truth)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.060━2017.9.13 ━

【ビズサプリ通信】
▼ 真実の瞬間(Moment of Truth)
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ビズサプリの三木です。
今回のメールマガジンでは「真実の瞬間(Moment of Truth)」について紹介します。
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■ 1.Moment of Truthとは
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仕事に人生に常に全力投球したいのは誰しも同じですが、現実問題として人間には好不調の波がありますし、集中力にも限度があります。チャンスを逃さないようにするには勝負どころをしっかり把握したいものです。スカンジナビア航空の元CEOのヤン・カールソン氏は、この勝負どころのことをMoment of Truthと呼んで重要視しました。
これは営業職だけでなく、直接顧客と接しない内勤者でも平社員でも同じです。勤め人であれば上司との間でのMoment of Truthがあります。仕事だけでなく人生でもMoment of Truthがあります。一目ぼれなどはまさにそうでしょうし、重要な試験がその瞬間ということもあるでしょう。あるいは思いもよらなかったことが後で振り返ると人生の岐路となっていることもあったりします。
人生は有限であり、第一印象を得る機会は一度しかありません。一度きりのチャンスを逃さないようMoment of Truthを意識して生きたいものです。

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■ 2.複数のMoment of Truth
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営業を例に考えてみると、顧客にとってMoment of Truthは1回ではないこともあります。
例えば、ネットで商品を検索し、実際の店舗で購入、持ち帰って使用することを考えてみます。ネットで探したときに「最近はこんな機能もあるんだ」「カッコ良さそうなデザイン!」と感じることもあるでしょう。店舗で実際に商品をみて一目ぼれするケースもあるでしょうし、店員の親切な説明が決め手になることもあります。逆に、何の気なしに買ったものでも、使って見てその性能や使い勝手に感動することもあります。
売り手にしてみれば勝負どころが複数あることになりますが、すべてに張り込むことは難しいので通常は焦点を絞ります。例えば価格勝負の牛丼チェーン店であれば「この値段でこのボリューム!」と思わせるコストパフォーマンスが重要でしょう。高級レストランでは「素晴らしい顧客サービス!」と思わせることが重要で、来店いただいた時に備えて店員をしっかり教育します。
会計的には、売上100円に対するコスト構成を考えるとこの辺が見えてきます。価格勝負の牛丼チェーンであればコストパフォーマンスを裏付ける材料費率が高くなるでしょうし、高級レストランであれば顧客サービスを裏付ける人件費が高くなるでしょう。通常の会社であれば自然と勝負どころに費用をかけるコスト構成になりますが、もし「見当違い」なコスト構成になっているとしたら問題です。
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■ 3.経営管理との関係
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昔は勘と経験で経営管理をしてきましたが、今は多くの会社で定量的な経営管理手法を採用しています。バラつきを抑える改善手法であるシックスシグマ、価値とコストのバランスに注目するバリューエンジニアリング、指標の置き方そのものに注目していくバランススコアカードなど、大きな会社になれば何らかの定量的手法によって経営管理や業務改善をしています。ビッグデータが扱いやすくなってきたこともこの流れを後押ししています。
大きな会社になるほど勘と経験では管理できず、定量化しなければ全体像が見えませんから、この流れは必然と言えるでしょう。しかしながら忘れてはいけないのは、多くの経営管理手法では出発点として「顧客満足度」や「顧客にとっての価値」を用いていることです。ここの定量化がうまくできていないとどんな経営管理手法も意味がありません。そして、顧客がその製品やサービスに惚れ込み価値を認めるのは、実はMoment of Truthの一瞬なことが多いのではないでしょうか。
経営管理手法は、一度導入してしまうと数字が独り歩きしがちです。顧客にとってのMoment of Truthをしっかり捉え、そこにウェイトを置いた設計になっているかどうか、時に見直してみるのもよいかもしれません。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。