株式会社Bizsuppliのメルマガバックナンバー

会計を中心とした実力派プロフェッショナル集団であるビズサプリのメンバーが、旬のネタや色々な物事への洞察を記載したメルマガのバックナンバーです。

中小企業の経理業務について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.124━2020.9.23━

【ビズサプリ通信】

▼ 中小企業の経理業務に求められること

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ビズサプリの泉です。

あいかわらず、新型コロナ感染症について大きな改善もなく、近頃はいわゆる
withコロナの生活スタイルが確立されつつあるなと感じています。
特にベンチャーを中心にリモートワークが定着しつつあり、通勤電車に人が
戻ってきていると感じるものの以前とは全く違う風景となっています。
実際、飲食店では廃業するところも増えてきていると聞いています。

今回は、中小企業の経理業務について考えてみたいと思います。

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■ 1.中小企業とは

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そもそも、中小企業というのはどういう会社でしょうか。法律上、いくつか
定義があります。

中小法人(法人税法):
普通法人のうち各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が
1億円以下であるもの
中小企業者(租税特別措置法):
(1)資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち次に掲げる法人以外の法人
・ その発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を同一の大規模法人に
所有されている法人
・ 上記のほか、その発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を複数の
大規模法人に所有されている法人
(2) 資本又は出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人

中小企業者(中小企業基本法):
業種によって条件は異なるが、例えば、卸売業であれば、資本金の額又は出資の
総額が1億円以下の会社並びに常時使用する従業員の数が100人以下の会社及び個人

今回は、厳密に定義するのではなく、非上場企業でIPO準備会社や上場会社の
子会社ではない、典型的なオーナー企業で従業員30人~50人未満ぐらいの会社
ということで考えてみたいと思います。

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■ 2.中小企業の経理の役割

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以前のメルマガでも書いたとおり、従業員50人規模の会社は、経営者が各人に
指示を与えるのが難しくなるため、中間管理職がおかれ組織として業務の分業化
や組織化が進んでいきます。
管理部門から経理部門が分離され、記帳や支払い、経費精算といったいわゆる
経理業務の専任担当者がおかれます。

会社の事業も拡大し、業績見込みや資金繰りなどそれまでは経営者が頭のなかで
把握できていたことが徐々にわからなくなり、経理担当者は必要に応じて、資金
繰り表などを経営者に提出することになります。

経理は「経営の羅針盤」とよくいわれますが、実際に羅針盤として重要性が高く
なるのは、それまで経営者が見える範囲ですべてかじ取りをしていたところ、
それが難しくなるこのフェーズだといえます

業務経験上、経営者との話のなかで具体的に気にするのは次の3点です。
・会社が儲かっているか⇒業績
・資金ショートしないか⇒資金繰り
・できるだけ税金を少なくしたい⇒節税

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■ 3.業績の把握について

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経営者は当然、儲かっているかを知りたいと思っており業績を報告することが
必要となります。
もう少し具体的にいうと、会社の業績が今どういう状況かを把握し、儲かって
いるあるいは儲かっていない場合にどういう手を打つかの意思決定をするため
に業績の報告を必要とします。身近な例でいえば、商品の販売価格の値上げ・
値下げや新店の出店の意思決定などとなります。

ここでいう儲かっていると儲かっていないというのは、単に黒字赤字だけでなく、
「想定より」売上や利益がでているかでていないか、ということになります。
ということは、少なくとも粗々でも構わないので、想定となるべき予算的なもの
を作り、月次決算により実績との比較をすることが必要になります。

月次決算において前払費用などの経過勘定や償却費を均してできるだけ発生主義
にしたほうがいいという意見もありますが、私は上記のとおり予算との比較を
することが重要であることとすると、概算や均した費用は計上せず、支払ベース
での比較としたほうが、予算が直観的に立てやすいとともに実績との比較もしや
すくなると考えます。

また、年次決算と異なり月次決算を行う理由は意思決定のためですので、意思
決定が誤らない程度の精度でよく、業績報告(月次締め日)をできるだけ早く
することが重要となります。月次決算早期化のためにはできるだけ作業を減らす
ほうがよいため、経過勘定の処理などはできるだけ避けたほうがよいといえます。

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■ 4.資金繰り

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会社の経営において、資金繰りは最も重要な項目の1つであり、たいていの業種
において売上の入金よりも仕入や設備投資などの支払のほうが先行するため、
経営者は常に資金繰りを気にしています。

当然ですが、資金繰りは将来に関することですので、もちろん、将来予測のため
に実績を勘案しますが、実績それ自体はそれほど気にしないことになります。

一般的な資金繰り表では、現在の現預金残高に予算に基づく収支予定を勘案する
ことにより、将来の現預金残高を算定します。もし不足するようであれば借入
などの調達を検討することになります。
業績把握ための予算と資金繰り表作成のための予算を2重で作成にならないように、
予算はできるだけキャッシュベースになるように経過勘定などは利用しないほうが
よいことになります。

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■ 5.節税

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利益が多く出ている会社において、経営者がもう1つ気にするのは節税です。
税金の計算は実績だけに基づいているように思えますが、節税は利益が予想さ
れる段階で事前にアクションを起こすことが必要な場合が多く、決算日をこえ
たあとでは打つ手が限られます。

事前という意味では、消費税の簡易課税の有利不利や役員報酬はほぼ事業年度
の始まる前、始まった直後くらいですし、備品を購入したり、倒産防止共済や
保険などの加入についても利益が概ねみえてきた時期に検討することになります。

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■ 6.やはり予算(的なもの)が重要です

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経理はどうしても、実績の正確な計上というところに注力しがちです。もちろん、
あまりにも不正確な場合、羅針盤にはなりえませんので必要ではあるものの、
上記で述べた通り実績のみならず、将来の予測が大変重要といえます。

もちろん、上場会社のような十分な人的リソースのない中小企業において予算を
策定することはスキル的にもリソース的にも難しいですが、予算的なものを作成
し、きちんと比較、年度末の着地見込を示すことが中小企業の経理部門において
も重要な業務ではないでしょうか?

ビズサプリグループでは、上場会社のみでなく中小企業における管理会計
ついてもサポートから実際の策定まで幅広く業務も行っておりますので、何か
お役に立てることがありましたらご相談ください。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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新型コロナ禍における監査役や内部監査の監査について

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.123━2020.9.02 ━
【ビズサプリ通信】
▼ 新型コロナ禍における監査役監査と内部監査
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ビズサプリの久保です。日本の新型コロナ感染症の新規感染者数はやや減少傾向になってきました。秋から冬にかけて、また感染拡大するという予想が見事に外れることを祈っています。ロックダウンを行わなかったスウェーデンでは感染者が一時増加したものの、現在はかなり減少しています。ロックダウンしなかった結果、経済のマイナス影響も最小限に抑え込めているようです。結局、何もしないのが正解だったのかもしれませんが、ファイナルアンサーは、来年以降に分かると思います。今回は、この新型コロナ禍における監査役や内部監査の監査について考えてみたいと思います。
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■ 1.厳しい監査環境
------------------------------------------------------------------リーマンショック後における我が国のGDPの下落は、17.8%(2009年1~3月期)でした。一方、今年4~6月期のGDPはそれを大幅に上回るマイナス27.8%でした。世界銀行による「世界経済見通し(GEP)2020年6月版」では、2020年の世界経済成長率は5.2%減になるとの予測となりました。これは第二次世界大戦以来最悪の景気後退とされています。 リーマンショックは、100年の一度の危機と言われましたが、それを上回る状況になりつつあることを認識しなければなりません。 感染症拡大予防の観点から人々の行動変容が求められ、これにより事業活動に大きな影響を与えています。その中で、テレワークが奨励されていますが、これは監査役や内部監査も例外ではありません。国内出張は最小限に制限され、海外への渡航は難しい状況です。特に、感染した際に重症化しやすい高齢の監査役は、本社の執務室または自宅からのテレワークを中心とした仕事にならざるをえないと考えられます。監査環境に制約がある一方、監査上の問題はむしろ増加傾向にあります。日本公認会計士協会は「上場会社等における会計不正の動向(2020 年版)」において、2020年3月期の会計不正は前年から7割増加したと公表しています。また、コロナ禍においては、事業環境が大きく変化するため、それに伴う事業リスクやコンプライアンスリスクなどを考慮することが必要となります。テレワークによる情報漏洩リスクも気になるところです。
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■ 2.監査手続の制約とその対策
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コロナ禍においては、移動制限や立ち入り制限などのために、事業拠点や子会社への往査が制限されます。現地・現場への往査ができない場合は、代替手続を実施することになります。契約書等の紙媒体の文書はPDFファイル等に変換することにより、パソコン経由で見ることができます。紙媒体の文書を電子媒体に変換する作業は、被監査部門に依頼するか、または国内であれば、少人数の監査補助者等が現場に出向いて、変換作業を行うことも考えられます。契約書などの監査上重要と考えられる文書に関しては、まずは電子媒体を閲覧するとしても、後日原本との照合を行うことも必要です。これは、少人数の監査補助者等が現場に出向き、短い時間に複数の重要文書一度にまとめて照合すれば効率化できます。電子署名が一般化するまでは紙媒体での原本保管はするとしても、DX(デジタルトランスフォーメーション)の見地からは、電子媒体での保管・閲覧する仕組みの導入も必要と思います。報告を受ける、説明を求める、質問を行うなどの監査手続は、オンライン会議システムを利用した面談により実施することができます。オンライン面談を利用すると移動時間が不要になり、国内だけでなく海外における事業拠点の役員・従業員とも面談できるというメリットがあります。 工場や事業拠点でスマートホン等を利用することにより、オンラインによる現場視察の実施も可能です。本社や自宅に居ながらにして、在庫の状況、工場設備、事故現場の様子などを見て報告を受け、質問をすることも可能になると思います。 前述のとおり、現場担当者がスマートホン等を操作するのではなく、少人数の監査補助者等が現場に出向いて、現場から実況中継する方法も考えられます。オンライン会議には、実際に会って話をしないと実感がわかない、顔色が読めない、雑談がしづらいなどの欠点があります。しかし、一方でその効用が大きいことから、コロナ禍が過ぎ去った後にも継続して利用すべき監査手法ということが言えます。
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■ 3.事業環境の変化と監査上の対応
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コロナ禍においては、多くの業種で事業環境が大きく変わります。業績が悪化する会社では、利益の過大計上を行う粉飾決算のリスクや、業務の混乱時に乗じた不正行為などが想定されます。業績不振への対策としてM&Aや新規事業への進出が行われる場合には、これらに関連するリスクも考慮する必要があります。コロナ禍においては、監査手続の制約は避けられません。これまでとは異なる代替手続を実施する場合もありますが、その十分性に留意が必要となります。コロナ禍において、多くの企業に共通する情報漏洩リスク、コンプライアンスリスク、財務リスクとそれらに対する監査上の対応について、ここで少し検討してみましょう。
(1) テレワークの導入による情報漏洩リスク
テレワークには、インターネット回線を専用回線化するVPN(仮想私設網)の利用が欠かせません。しかし、VPNのパスワードが流出しているという報道がありました(日経新聞2020年8月24日「テレワーク、VPN暗証番号流出 国内38社に不正接続」)。昨年9月にもVPN機器にセキュリティ上の脆弱性が発見されたとの報道がありました。脆弱性を抱えたままインターネット上で運用されているVPNサーバーが世界で1万4500台あり、そのうち1511台が日本国内にあるとしています(日経XTech 2020年4月22日「パッチを当てても駄目、テレワークのVPNに潜む致命的な脆弱性の恐怖」)。サイバーセキュリティに関しては、高度な専門知識と経験が必要になるため、外部専門家による診断を受けることが必要です。情報漏洩事故を起こすと多くの時間と費用を費やすことになります。予防のためのコストは、それに比べてかなり安いと考えてよいと思います。外部専門家の診断や助言を受けているかどうか、またそれに対してどのように対応したかが、監査上の留意事項になります。
(2) 資金繰り対策
 資金不足に陥る会社は資金調達が最重要課題となります。このような場合には事業継続に懸念が生じ、財務諸表には継続企業の前提に関する注記の記載が必要になる可能性があります。 継続企業の前提に関する注記を記載している上場企業は現状57社ですが、そのうち今年1月以降に新たに注記を付した会社は、その半数近い23社に上っています(SBI証券「継続企業注記銘柄」8月27日現在)。リーマンショック後にはこれが急増し100社を超えていたことから、今後この注記を付す会社が増加するものと見られます。 業績が悪化する会社においては、資金繰り計画に留意し、会計監査人と早めに協議することが必要となります。
(3)コロナ感染対策  感染予防対策だけでなく、役員・社員・顧客などの感染発覚時の対応についての計画立案が必要です。感染が発覚した場合に、隔離や営業停止などによる事業インパクトが大きいと予想される事業領域には、感染予防対策を強化することが必要になります。 監査においては、自社の事業領域や事業拠点ごとに、予防対策と発覚時対応の両方が適切であるかどうかに留意することが必要です。
(4)労務リスク
テレワークによる勤務状況の監督や、業績不振に伴う給与カット、希望退職の募集などに伴う労務リスクも考えられます。この分野も監査の重点領域になるでしょう。
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■ 4.事業リスクの再評価とリスクアプローチの徹底
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 事業環境の大きな変化に伴い、以上のような新たなリスクが想定されます。監査役監査や内部監査においては、コロナ禍の影響を十分考慮し、事業リスク全体の再評価を行うことがまず必要です。その結果を監査計画に反映しましょう。効率的かつ効果的な監査を実施するためには、徹底したリスクアプローチの採用が欠かせません。
ビズサプリグループでは、事業リスク評価や内部監査のお手伝いを実施しています。お気軽にお声がけください。
本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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M&Aあれこれ

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.122━2020.8.19 ━
【ビズサプリ通信】
M&Aあれこれ
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ビズサプリの三木です。
暑い日が続きます。今年はマスクを着用することが多く、また一段と暑さを感じてしまいます。熱中症にならないよう乗り切りたいものです。このところ会社のM&Aに絡む仕事が立て続けに舞い込んでいます。新型コロナによる景気への影響は産業によってムラが大きく、街中の居酒屋やレストランは廃業してしまったところもある一方で、7月初旬に公表された日銀短観でもITや建設はむしろ景気の見立てがプラスとなっています。もともと事業承継に悩んでいた会社が前倒しで売却に動いたり、コロナショックがむしろプラスに働いた会社がM&Aの好機と捉えたりしているケースもあるかもしれません。
今回のメールマガジンでは、そんなM&Aの大まかな流れと、私なりに感じている注意点を取り上げます。
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■ 1.M&A内容の検討
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■ マッチングまず買い手と売り手の候補がいなければM&Aは始まりません。このマッチングはM&Aの仲介会社や金融機関が行うケースが多いですが、当然ながら最初は匿名で仲介者を介して業種、規模などの情報をやりとりしつつ、先のプロセスに進むかどうかを検討していきます。売り手と買い手がある程度絞られてきたら、秘密保持契約を締結し、買い手側企業が意向表明書をまとめます。これは、希望する提携形態、希望価格、スケジュール、必要な意思決定プロセスなどをまとめたもので、ここで指定した方式に沿ってその後の手続が行われていくことになります。
デューディリジェンス買収過程の大きな作業として、DD(デューディリジェンス)があります。これは買収監査ともいわれ、買い手が売り手の帳簿や各種契約、ビジネス状況や社内管理体制を細かくチェックして、売上は帳簿に記載されている通りか、隠れ負債は無いか、後々問題となるような契約を締結していないかなどをチェックしていきます。このDDは、財務、法務、ビジネスの各方面で行われますが、短期間で売り手の会社の状況を見極めなければならないため、弁護士や公認会計士など専門家が中心となって調査を進めていきます。
■ 価格算定DDと同時進行で価格の算定が行われます。価格算定には様々な方法がありますが、主だったところでは純資産法(帳簿上の純資産をベースにする)、マルチプル法(類似上場企業の株価をベースにする)、DCF法(将来の事業計画上のキャッシュフローを割引計算する)があります。とはいうものの仮定を少し変えるだけで価格は大きく変わりますし、売り手は高く、買い手は安く買いたいという交渉要素もあります。M&Aにおける価格算定は絶対的なものではなく、その後の交渉のベースとなるものと言えます。
■ ストラクチャ検討もうひとつ並行して進めないといけないのが、ストラクチャの検討です。単純に株式を移転するM&Aもあれば、持株会社を作ってぶら下げる方法、営業譲渡する方法など様々な方法があります。買い手または売り手が複数社のグループである場合、どこの会社がどこの会社の株を所得するのか決める必要もあります。取得も100%とは限らず、マイノリティ出資にとどまるケースもあります。こうしたストラクチャをどうするかにより、その後の提携の仕方だけでなく、税務も大きく影響を受けます。例えば、売り手企業に多額の繰越欠損金があれば、それを節税に有効活用できるスキームにしないと損です。また、M&Aの後には連結で多額ののれんが生じることも多く、買収後に自社の業績にどう影響するのかも検討が必要です。ストラクチャは、最初からある程度描けていることもあれば、DDの結果を踏まえて修正することもあります。また、業態によっては、監督官庁の許認可や、独占禁止法などの法令に触れないかようなストラクチャにする必要があります。クロスボーダーM&Aでは現地国の法令チェックも欠かせません。もちろんDDで出てくる情報は、ストラクチャや価格算定上も極めて重要です。DDの結果による補正を加えながら価格とストラクチャを練り上げていきます。
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■ 2.クロージングと契約
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DDを経て売り手と買い手が折り合ったら、クロージングに向かいます。クロージングの上での重要事項としては、契約書の締結と価格決定があります。会社の価格算定は一定の基準日をもって行われますが、会社の価値は実際には日々変動しています。このため、大きなM&Aでは価格修正条項を付して、基準日以降に発生した巨額損失などについて、一定の算式で価格を調整する文言を付け加えることがあります。また、バイオベンチャーなど変動要素の大きな企業を買収する場合は、買収後に一定の目標を達成した場合に事後に買収価格を修正し、追加支払いをする条項(アーンアウト条項)を付け加えることもあります。なお、価格修正条項やアーンアウト条項は、理屈の上では極力取り入れたい条項に思えますが、適切に計算式を定義できなければ意味がありませんし、計算式に曖昧さが残ると逆にトラブルの種にもなります。このため中小企業のM&Aではこうした条項は設けないことが多く、短期的な損益よりも10年20年の長期スパンで企業価値を図る視点で交渉が行われることが多いように感じます。このように価格決定と変動にかかる計算式を確定出来たら、それを盛り込んだ最終契約を策定します。この最終契約に盛り込まなかった事項は後で取り返しがつきませんので、弁護士やM&Aの専門家を交えて慎重に検討する必要があります。長かったM&Aプロセスも大詰めですが、最後の最後まで気が抜けません。
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■ 3.Post Merger Integration
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株式の移転が成立したら、登記など株式関連の事務の作業を経て、次にPMI(Post Merger Integration)を行います。PMIは、M&A後に子会社にしておくのか吸収合併等に進むのかによっても変わりますし、子会社にしても少数株主がいるのか、オートノミー経営のスタイルをとるのか等によっても変わってきます。PMIはどのような形態が企業価値を高めるかという経営判断により範囲や深度が変わるものであり、統合すればよいというものではありません。やみくもな統合は亀裂を招くこともあり、加減が重要です。一般的に経理や総務といった管理部門は集約することでコストダウンを図ることが多いですが、人事についてはビジネスに合った給与水準やインセンティブ形態を維持するために、敢えて集約しないことも多くあります。システムも大きな要素です。システムが分かれたままだと非効率ではありますが、システム構築にはお金がかかるため、次のシステム更新のタイミングまでは統合しないという判断もあり得ます。現実には、システムが複雑すぎて手を付けられず、複数のシステムを跨いだ業務運営が長く続くケースも見受けられます。合併まで進む場合で、特に相互の規模感が対等に近い場合は、内部で主導権争いが生じることもあります。こうなると本業に割くべき力をそがれてしまうため、意図的に買い手でも売り手でもない新しい会社という社内文化を作っていくケースもあります。例えば、新社名や会社のロゴ、社内制度などは一新してしまい、人事についてもゼロベースで再構築するようにする等です。
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■ 4.M&Aで躓かないためには
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M&Aの過程には様々な困難があります。価格が折り合わずに頓挫することや、中小のオーナー企業では旧オーナーの待遇が決まらない、あるいはオーナーの「心変わり」で案件自体が消滅することも珍しくありません。
コンプライアンス近年は、上場企業のみならず非上場企業でも大企業ほどコンプライアンス意識は高くなっています。一方、小規模なオーナー企業では、公私の区別が不十分で黒とは言わないまでもグレーな支出が行われていることもあり、それがネックとなってM&Aが進まないことも増えているように感じます。今後事業承継を考える小規模企業では、「身ぎれい」にしておくことも選択肢を増やすことにつながりそうです。
■ DDを充実させるM&Aのゴールは最終契約書ではなくビジネスの発展です。M&Aで失敗リスクはゼロにはできませんが、不要なリスクは当然避けるべきであり、そのためにはきっちりしたDDが必要です。例えば、物流を統合したいという目論見のあるM&Aでは、物流システムは統合できそうか、そのためにはどの程度の期間やコストがかかりそうかもDDのテーマとなります。技術者が欲しいM&Aであれば技術者の給与水準が課題となります。DDは弁護士や公認会計士といった専門家に任せっきりでは、こうしたビジネスの観点が手薄になります。
「M&Aを通じて何を目指したいのか」についてDDチームとしっかりしたコミュニケーションを取る必要があります。
■ 高値掴みを避けるしっかりしたDDを行うことは、買収したい一心で高値掴みすることを防ぐ意味もあります。M&A後に生じるのれんは、ひとたび減損となると業績へのダメージが甚大です。そもそも高値掴みをしてしまうとのれんも多額であり、すぐに減損の危機にさらされます。亀田製菓は2019年2月に株式会社マイセンの株式90%を取得し子会社化し182百万円ののれんを計上しましたが、それからほぼ1年後の2020年3月期の決算で145百万円ののれんの減損(おそらく償却額を除いた全額)を計上しました。これは亀田製菓としては規模がそこまで大きくない話でしたが、高値掴みにより短期間で多額の減損を計上すれば、経営責任を問われることは避けられません。
■ 買収前の体制法令違反に鈍感な会社や管理体制が極端に貧弱な会社を買収すると、特に上場企業では買収後に大きな問題を生じる恐れがあります。買収後に経理が混乱しJSOXの不備につながった事例もあります。M&Aを活発に行う会社では、こうした内部統制に係る視点もDDでチェックするポイントとして買収に関する社内ルールにしておくことも全社的統制の一環と言えるでしょう。
ビズサプリグループでは、DDの実施や価格算定、PMIのご支援など、M&Aを成功させるためのご支援も提供しております。お気軽にお声がけください。
本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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事業承継の方法

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.121  2020.8.6━

【ビズサプリ通信】

▼ 事業承継の方法

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ビズサプリの庄村です。
2020年8月に入りました。長かった梅雨も明け、コロナ禍でマスク着用のなか、
気温が35度を超える猛暑となっているところもあるようですが、熱中症には
くれぐれもお気を付けください。
今回は事業承継の方法をテーマとします。

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■ 1.中小企業の現状

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中小企業は我が国企業数の約99%、従業員数の約70%を占めており、経済
や社会を支える存在として、また、雇用を支える存在として重要な役割を担っ
ています。

中小企業庁によれば、中小企業経営者の高齢化が進み、経営者交代率は長期にわ
たって下落傾向にあるようです。すなわち、多くの中小企業では経営者が高齢化
しているにもかかわらず、経営者の交代が起こっていないということです。この
ままでは優秀な中小企業が多いにもかかわらず経営者の高齢化と後継者不足によ
って廃業を余儀なくされる例も多くなってしまいます。
大企業の場合には、中小企業と違い、優秀な人材も多く代表取締役の交代も比較
的頻繁に行われ、代表取締役候補もたくさんいます。むしろ出世競争を競う状況
となります。特定の経営者に依存する部分が中小企業よりも少ないため、経営者
が変わっても、会社運営が大きく変わることは少ないです。

一方、中小企業の経営者の多くは、悪く言えばワンマン経営となっていて会社運
営が経営者個人に大きく依存していることが多いです。もし経営者が病気やけが
で倒れたら大きな混乱が生じてしまいます。
したがって、中小企業の経営者交代は慎重に対応する必要があります。

事業承継とは、会社の経営権や理念、資産、負債など、事業に関するすべてのも
のを次の経営者に引き継ぐことです。事業承継の方向性には、「親族内承継」、
「親族外承継」、「第三者への売却」、「廃業」があります。下記では、各事業
承継の方向性の最近の動向とメリット、デメリットなどを説明します。


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■ 2.親族内承継

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親族内承継は、現経営者の子をはじめとした親族に会社を承継させる方法です。
中小企業庁によると、20年以上前は親族内承継が83%以上ありましたが、息
子や娘が多様な価値観の影響で事業を引き継ぎたくないと考えるケースや、経営
者自身が子供に経営の負担を負わせたくないと考えるケースが増えているため、
親族内承継は50%程度となり減少傾向にあるようです。

親族内承継は、一般的に、親族内外の関係者から心情的に受け入れられやすいこ
と、親族という身近な存在であるため、事業承継を行うにあたって重要となる意
思の承継がしやすいこと、相続等により財産や株式を後継者に移転できるため、
所有と経営の分離を回避できる可能性が高いといったメリットがあります。
一方、親族内に、経営能力と意欲を持っている後継者候補がいれば最良ですが、
いない場合でも経営を任せがちであったり、相続人が複数人いる場合には後継
者の決定や経営権の集中が難しくなったりします。特定の子供に承継させる場合に
は他の兄弟との間で不公平が起こらないようにしないと遺産トラブルがおこってし
まう可能性が高くなってしまいます。


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■ 3.親族外承継

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親族外承継は、会社役員や従業員など親族でない人に会社を承継させる方法です。
長年社長の右腕として会社をささえてきた会社役員・従業員や将来有望な会社役
員・従業員が役員候補となるため、業務に精通しており経営方針の一貫性を保て
、他の従業員の理解も得やすいこと、親族内に適性のある後継者がいない場合で
も候補者を確保しやすいといったメリットがあります。
信頼している部下が会社を承継すると経営者も安心していられます。
親族内承継の減少を補うように親族外承継の割合が近年増加しているようです。

一方、親族外承継は経営者から株式を相続する親族内承継と異なり株式が相続さ
れないので株式の取得対価の準備が難しいというデメリットがあります。株式譲
渡が行われないと、経営者にとっては非上場株式が現金化できず、経営者個人の
保証や担保提供資産を外してもらえません。また、後継者にとっても所有と経営
が分離されたままとなり、重要事項の決定権がないこととなり会社経営のモチベ
ーションも下がってきます。
そのため、後継者の金融機関からの株式取得費用の融資や、黄金株(拒否権付株
式)などの種類株式の発行、従業員持ち株会を活用するスキームなどで後継者の
資金力問題を解消しているようです。

 

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■ 4.第三者への売却

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3つ目の引継ぎ方法はM&Aによって会社を第三者へ売却する方法です。
親族や従業員等の親族外で適任な後継者がいない場合に、広く候補者を外部に求
めることができます。多くの場合、株式譲渡によりM&Aが行われますので、経営者
も会社売却の利益を得ることができます。
M&Aによる事業承継は中小企業の後継者確保の困難性により近年は増加傾向にあり
ます。

M&Aによって第三者へ事業を承継するときには、経営理念や経営ノウハウの承継には
留意が必要です。経営理念がうまく承継されないと経営者交代後に従業員のモチベ
ーションは下がってしまいます。また、経営ノウハウがうまく承継されないと経営
者交代後に取引は継続できないなどの弊害が生じてしまう可能性があります。

中小企業のM&Aでの企業価値は年買法(時価純資産+のれん代(年間利益の〇年
分))で評価されることが多いです。もしM&Aによって事業承継をするのであれば
高く会社を売却するために企業価値の向上に着手することが望まれます。
企業価値が高く魅力的な会社であれば買手もすぐに見つかりやすいです。

M&Aで最適な買手候補を見つけるまでには数カ月かかるのが一般的であり、買手が
見つかったあとも数回のトップ面談等の交渉を得て最終的に買手と合意されM&A
成立します(成立しないケースもあります)。したがって、M&Aを実施するときは
時間的な余裕をもって取り組むことが必要になってきます。

M&Aは自力で行うことは不可能でありM&A仲介業者を選定してから取り組みます。
M&A仲介業者は、専門の仲介会社、弁護士や公認会計士などいろいろな人が取り組ん
でいます。そのなかで信頼できる良いM&A仲介業者を選定することがM&Aを成功させ
るキーポイントになってきます。


M&Aによって買手企業がみつからない場合は、事業承継ができず、やむなく廃業に
追い込まれるケースが出てきます。


本日もビズサプリ通信をお読み頂きありがとうございました。

ビスサプリグループでは事業承継支援やM&A仲介サービスを提供しております。是非
お気軽にお問合せ下さい。

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『諸行無常』

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.120━ 2020.7.15━━

【ビズサプリ通信】

1. 諸行無常

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ビズサプリの花房です。在宅時間が多くなったことで本を読む時間も増えており、
毎週のように書店で新たな本を探しています。様々なジャンルを選ぶよう心がけ
ていますが、最近はミステリー小説にはまっています。書店の雑誌コーナーに
行くと、「アフターコロナの時代に…」と言った、タイトルや、記事の雑誌が
増えてきているようですが、まだ国内でも海外でも感染拡大は続いており、ウィ
ズコロナがどこまで続くか分からない中で、アフターコロナの状況を予想して
その対応の仕方を語るのは、いささか時期尚早な気がします。

実際、第2波、第3波、がいつかは分かりませんが確実に来るでしょうし、ワク
チンについても実用化しても直ちに皆に行きわたるわけではないため、ワクチン
が簡単に手に入る状況にならないと、コロナが収束した後の状態、すなわちアフ
ターコロナは実現しないと言えるでしょう。ワクチンにより集団免疫が出来れば、
感染は1~2年で収束する可能性があります。しかし、効果的なワクチンが現れず、
自然感染による集団免疫の獲得を待つとなると、3~5年、あるいはそれ以上の
長期にわたり、感染拡大が続く恐れもあると言います。

それまでは、人の移動を含めて、経済活動が大幅に制限されるため、長期化する
ほど、経済へのダメージは予想がつかないほど大きなものとなる可能性があり
ます。世界銀行が2020年6月8日に発表した、新報告書「世界経済見通し(GEP)
2020年6月版」によると、2020年の世界経済成長率は5.2%減になるとの予測で、
これは第二次世界大戦以来最悪の景気後退であるとのことです。

世の中は絶えず変わりゆくものです。仏教の教えでは、世の中のものは全て
移り変わり、同じ状態でとどまることがないことを、『諸行無常』と言うそう
です。「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」とは、日本人なら誰もが
一度は聞いたことがある、平家物語の冒頭の有名な言葉ですが、この世のすべ
ての現象は絶えず変化していくもの、ということが自然の摂理なのです。

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2. 臨機応変

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今年度の予算は、当初3月27日の国会で、102兆円で成立しました。これは過
去最大でありましたが、さらに新型コロナ対策等で、第一次、第二次補正予算
合わせて、58兆円規模の追加の歳出が決議されています。その結果、今年度の
国家予算は、160兆円と巨額に膨れ上がりました。この中には、すでに受け取っ
ている方が大半と思いますが、特別定額給付金、いわゆる、1人当たり10万円
の給付金として12.8兆円の予算が組み込まれています。その他、感染症対策の
費用もありますが、企業の雇用維持と事業継続支援のための予算が相当程度あります。

企業支援の予算としては、直接的な企業の支出を補助する、雇用調整助成金
家賃支援給付金、中小企業や個人事業主などに最大200万円を給付する持続化
給付金もありますが、企業が当面、一番気になる資金繰り支援のための予算と
して、約12兆円が計上されました。これは主に、保証協会付の融資の保証料免除
や、利子を実質無利子とするための資金として使われます。

企業にとって資金繰りは命綱ですから、収入が減ったとしても、金融機関からの
借入の返済を始め給与や取引先への支払い等を滞りなく行っていかなければなり
ません。大企業などで手元資金に余裕がある会社であればいいですが、中小企業
を中心に資金繰りに余裕がないところは少なくなく、まずは、当面の運転資金の
確保が最優先となります。

コロナによる景気後退がどのくらい続くか分からない中で、政府支援による
資金繰り確保も活用しながら何とか凌ぐ間に、次の一手を打って行かなければ
なりません。危「機」的な状況に「臨」んで、適切な対「応」をその時の状況
次第で、適切に「変」えて対処する、まさに臨機応変な対応が求められています。
コロナ後をいくら考えても想像通りとなる保証がない中で、我々に出来ることは、
まず目の前のやるべきことを見つけて、それに集中することしかないと思います。
日々それを繰り返していった結果、いつの日か、この危機的状況を乗り越えら
れるはずです。

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3. 新しいビジネスモデル

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世の中の変化が緩やかであればいいのですが、現在は時代の節目なのか、100年
に1度と言われるような想定外の事象が頻繁に起きています。今年もすでに、
先週は九州を中心とした豪雨がありました。そしてそれらは突発的に起きます
ので、誰もが即座には対応しきれず、一時的にフリーズした状況になるのは致し
方ありません。しかし、このような人類にとっての危機的な状況は歴史上何度も
訪れ、その度に人類はそれらを克服してきたことは、歴史が証明しています。
その時、生活様式を含めて様々なことが大きく変わりますが、その変化に対応
できた企業だけ長きに渡り、生き残ることが出来たと言えます。

このような中、一早くコロナに対してうまく対応し、コロナの影響をもろとも
しなかった企業が、ニトリです。2020年3~5月期決算では、売上高は1737億円
で前年同期比3.9%増、営業利益は同22.3%増となっています。緊急事態宣言に
より、最大110店舗を臨時休業したものの、巣ごもり需要や在宅勤務向けの家具
の販売が伸び、ネット販売も好調だったようです。

ネット販売を駆使して巣ごもり需要をうまく取り込んだように見えますが、これ
はやろうと思ってすぐに対応できるものではありません。自社物流の強化を図っ
てきたこと、ネット通販のサーバー強化、といったデジタルトランスフォーメー
ションへの対応を先駆けて行ってきたことが、結果としてコロナ対応として効果
を発揮しました。また多くの製品は、感染の少なかったベトナムの拠点で製造
していたことが、欠品を避けられた理由となったようです。

ここまで、ニトリのように、即座にうまく対処しきれた企業は少ないと思います
が、飲食店では、多くのお店が、テイクアウトや宅配を始めるきっかけとなりま
した。まだ手探り状態で、採算面では課題もあるところが多いと思いますが、
コロナ前の集客状況にはすぐに戻らないことを前提として、新しいビジネスモデル
を構築していかなければなりません。

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4. 変化するチャンス

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長寿命企業、とりわけ、老舗と言われるところは、創業以来ずっと同じ事業を
行っているわけではなく、時代に即して商材や取引のスタイルを変化し続けな
がら、事業継続してきました。生物学の進化論では、「生き残るものは、力の
強いものでも頭の良いものでもなく、変化に対応出来るものである」という言葉
がありますが、まさに企業も同じで、自然や政治、世の中のテクノロジーと言った
環境変化に応じて、自らを変革できる企業が存続していくことが出来ます。

世の中は常に変化していますから、いつかは変わっていかなければならない中で、
今回の新型コロナウィルスの騒動は、否応なしに、すぐに自らの企業の在り方を
変えていかなければならない状況が訪れました。前向きにとらえれば、ショック
療法的かもしれませんが、これを変革のチャンスと考えて取り組めばいいのでは
ないでしょうか?

老舗と言えば、一般的には「保守的」なイメージがあるものですが、常に新しい
ものにチャレンジする「革新性」も併せ持っていると言われます。その企業の
根幹となる、経営理念のような守るべきものは守り、一方で市場ニーズを汲み
取って、あるいは時代を先読みして、変化を恐れずチャレンジし続けることが、
企業を継続させる秘訣かもしれません。

そしてより大事だと考えられることは、そこで働く人ではないかと思います。
昔から言われる、日本企業の良さは、同時に強みにもなっている部分ではあり
ますが、人を育て、人を大事にすることだと思っています。トヨタ自動車社長の
豊田章男氏は、「モノづくりは人づくりから」、ということで、「人づくり」
にとことんこだわっていきたいと仰っています。それは、経営の神様と言われた、
松下幸之助翁が言われたように、「企業は人なり」だからでしょう。

ビズサプリグループでは、テレワークのための業務改善支援、非常事態における
決算開示支援も行っておりますので、ご興味ありましたらご相談頂ければと思います。
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本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

“えらい人”には誰がなる?

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.119  2020.7.1━

【ビズサプリ通信】

▼ “えらい人”には誰がなる?

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ビズサプリの辻です。
2020年も半分が終わり7月に入りました。気象庁から発表された夏の3か月長期
予報は日本全国「平年より暑い」。今年も暑い夏になりそうです。マスクを着用
しながらの猛暑。あまり考えたくないですよね。

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■ 1.“えらい人”の不祥事

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ちょうど1年前、人事院からのご依頼で国家公務員の皆様に「公務員倫理セミ
ナー」を実施しました。人事院では幹部公務員を中心とする不祥事が続発した
ことを受けて「倫理原則」を定め、国家公務員倫理審査会を中心に公務員倫理
について様々な取り組みをされています。NGの行動をわかりやすくまとめた
「マンガで学ぶ公務員倫理」という冊子や、常時携帯可能な「国家公務員倫理
カード」を作成・配布したり、「公務員ホットライン」を設置したり。また、
倫理に関するシンポジウムを開催し、不祥事を起こした省庁の若手官僚の皆さ
んが、不祥事で揺らいだ官僚に対する信頼を取り戻すための様々な施策に真摯
に一生懸命取り組んでいるプレゼンをお聞きもしました。

そのような中、
経済産業省の「持続化給付金」業務の不透明な発注
検事長の「賭けマージャン」辞職
中小企業庁長官と取引業者の「前田ハウス」パーティー疑惑
といった公務員による不祥事の報道が相次ぎました。
ある意味目新しくもない伝統的な不祥事の内容で「いつの時代の話なのだろ
う…」「変わらないね…」と思った方も多かったのではないでしょうか。

しかし人事院の取組を一部ではあるものの実際に見てきた私としては強烈な
違和感があるのです。

「“現場”と“えらい人”とのこの温度差は何だろう」

これは企業でも同様のことが起こっていることがあるように思います。

もちろん“えらい人”だからこそ報道価値があり、文春砲に狙われ公表されて
しまうわけであって、“えらい人”だけが不祥事を起こすわけではありません。

ただ“えらい人”の不祥事はその人の権力が大きいため面と向かって行動の
是正を指摘することが難しく「もう抑えきれない」となったところで情報が
外にあふれてきます。このためいったんあふれて外に情報が出たときには結構
大事(おおごと)になっていることが多いのはこれまでも様々な不祥事で皆さん
目にしてきたことではないでしょうか。そのような例で最近記憶に新しいのが
関西電力の「金品受領問題」です。

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■ 2.関西電力の金品受領に関する調査報告書から

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先日、関西電力の「金品受領問題」後の株主総会が終了し、監査役会設置会社
から指名委員会等設置会社への移行と外部人材の取締役会長への起用等を行っ
た新体制がスタートしたとの報道がありました。株主総会後には社長が記者会見
を行い、改めて金品受領問題への謝罪等を行い、新たに社外より会長に就いた
榊原定征経団連会長は、「関電は一連の問題で危機的な状況にある。これまで
の経験・知見を総動員して強固なガバナンス体制を構築し、新しい関電の創生に
全力で取り組む」(日本経済新聞2020年6月25日付より抜粋)といったコメント
を発表したそうです。

関西電力の一連の問題を調査した第三者委員会の「調査報告書」(2020年3月14日)
の中で次のような記載があります。

『役職員2万人を超える巨大企業である関西電力の人員の中から選抜された数十
名もの幹部が、以上のような(報告書に記載のような)基本的なコンプライア
ンスに違反する行為を行い、あるいは、そうした行為を知りながら、何十年も
の間、誰も異を唱える勇気を持てず、さらに、経営陣の一部も、この問題を認識
しながら、長年何らかの対策を取らず、税務調査を契機として本件問題が発覚
するまで漫然と放置し続けていたという責任感・決断力の欠如は深刻である。』

多くの方が共感すること思いますし、恐らく関西電力の多くの従業員の方が
そう思ったのではないでしょうか。関西電力程の大企業であれば、おそらく
毎年コンプライアンス研修を実施してきていることだろうし、社長を始め多く
の役員が今回金品受領を受けた人も含めてコンプライアンスの重要性を公の場
で発言をしてきたことでしょう。それでも金品授受や特定の人の影響力で発注
先を変えてしまうようなコンプライアンスの基礎を長年辞める事ができなかっ
たわけです。

「建前と本音」「聖域」「会社のため」「この場合は仕方なかった」といった
“えらい人”論理があったのでしょうか。ただそれが社会一般の感覚とずれて
いる場合、それがいつかは表に出て強烈な非難を浴び会社を危機に陥れること
になります。

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■ 3.高級車の方が運転が粗い?

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「人の行動は「権力」によってどう変わるのか」については数多くの実験が
行われています。「権力を持つ人の振る舞いはそうでない人よりも非倫理的
となるか」については、皆さんの予想通り「時と場合による」です。ただ、
『権力には人間の心理を変える作用がある、すなわち、自分に「権力がある」
と感じている人と「権力が欠如している」と感じている人とでは、考え方、
感じ方、振る舞い方が異なる』ということは膨大な数の実験の結果が示して
いるそうです。(ハーバードビジネスレビュー 2016年5月号より)

いくつかの実験とその結果をご紹介します。
・被験者を3名のグループに分けて、その中で1人「リーダー役」を決める。
グループ毎に座り、4枚ずつクッキーを配ると7割のリーダー役が他のメン
バーに断りをいれずに2枚目のクッキーを取る。権力があると自分が2枚目
のクッキーをもらうのは当然と思ってしまい、他社への配慮が足りなくなる
傾向がある。

・被験者を上司役、部下役にわける。この被験者たちには、質問や文書をする
ことで、「上司役」には権力感の高揚を、「部下役」には権力感の低下を
誘発した。そのうえで、自分用と他者用にチョコレートの詰め合わせを作っ
てもらった。すると、「上司役」が作ったものは自分用が平均31個、他者用
が平均11個だった。一方「部下役」が作ったものは、自分用が平均14個、
他社用が平均37個となった。権力がある人は自分自身を大切にする傾向がある。

・公道で歩行者が横断しようとしているところで、車が止まるかどうかの実験
を行った。この結果、高級車はファミリーカーに比較すると止まらない車が
多かった。

・大学生を「強い権限を持つ上司グループ」と「弱い権限をもつ上司グループ」
 に分け、両グループともに部下役の高校生に指示を与えて生産性を上げること
 で利益を上げるような疑似企業を作った。「弱い権限上司グループ」は部下
 役の高校生の生産性を上げるために粘り強く高校生を説得し、また仕事以外
 にも積極的にコミュニケーションをとって生産性を上げようとした。一方
 「強い権限グループ」は高校生の意見を聞かず、報酬と配置転換で生産性を
 上げようとし、そのうち解雇を脅しに使うような行動もとるようになった。
 そのうえ部下(高校生)の能力を低く評価し、業績アップは自分のおかげだ
 と高い自己評価を付けた。

どれも社会科学や心理学の実験なので、本当に権力をもったわけでもなく、
実際に人事評価で“えらく”なったわけではないのですが、「権力を持つ」
こと自体で人間のふるまいが変わるということを示しています。

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■ 4.ガバナンス=社外だけではない

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組織内で権限を持っている「経営者」が強い権限の使い方を誤り、誤った判断
をすることで企業が危機に陥ることがないようにする仕組みがガバナンスとな
ります。このコーポレートガバナンスの切り札が「社外の目」であり、上場企
業が守るべき行動規範を示した東証の「改訂コーポレートガバナンス・コード」
(2018年6月公表)では、「上場会社は少なくとも2人以上」とし、「3分の1
以上の社外取締役を選任することが必要と考える上場会社は十分な人数を選任
すべき」としています。つまり、「3分の1以上」を事実上の目標になっている
わけです。
ただ、このように執行側が行った判断の是正をすべて社外にお任せしないとい
けないようなガバナンスはお粗末ではないでしょうか。先に紹介した事例を含
めて過去報道された大きな不祥事事案についても社外取締役がいなかったわけ
ではありません。むしろ形式的には立派なガバナンス体制があり、とても高名
な方が社外取締役に連なっていたのではないでしょうか。ただ、社外は社外で
す。社内の情報、特に伝わりにくい不祥事の情報をキャッチしその判断をタイ
ムリーに是正するのには限界があります。むしろ社内メンバーでもきちんとし
たガバナンスが効くような組織を作っていく必要があります。そのためには
社内の中で多様な判断軸が持てるような組織、つまりはダイバーシティ
(多様性)に富んだ組織を作っていく必要があります。

危機が起こってしまってからでは自律的な改革がなかなかできず、とにかく
「緊急手術」的に無理やりにでも社外に大幅に権限を与えた改革が必要になっ
てしまいます。そうでないと利害関係者全体が納得しないからです。その状況
は会社にとって望ましいことではないことは確かですから、緊急手術になる前
の平時から権威や権力をもって多様な意見を封じるようなことになっていない
か、「聖域」がないか、「聖域」を許すような風土になっていないかどうか
を検証していく必要があります。ただ、これは当たり前ですが、“えらい人”
、つまり権力を持つ側から提案しない限りはなかなか進みづらいことです。

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■ 5.“えらい人”に誰がなるか

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“えらい人”が平時から多様な意見を取り入れ、間違った判断で物事が進んで
いかないようなガバナンスが効く仕組みを構築していくためには、そういうこ
とをできる人が「えらく」なっていくような人事制度が必要となります。経営
者が絡んでいるような不正や不祥事が起こった場合には、そのような人が
「経営者」として選ばれるような人事制度を変えない限りはその後の再発防止
策は絵空事になります。今後コロナの影響もあり、仕事の仕方も評価の在り方
も益々多様になってくるでしょう。その変化に同質性が高いばかりに気付くこ
とがきない会社は、優秀な人を集める事ができずボディブローのようにマイナ
スの影響が出てくることでしょう。

自分の会社はどのような人が“えらく”なっていますでしょうか。
“えらくなった人”はどのような判断軸、行動をとっていますでしょうか。
また皆さん自身がどのような判断軸、行動をとっていますでしょうか。

ビスサプリグループでは人材コンサルティング会社とも連携をとり、内部統制
と人事制度に関する知見を活かした従業員意識調査や統制環境の根幹としての
人事制度の考え方についてのオンラインセミナー等を実施しています。是非
お気軽にお問合せ下さい。

本日もビズサプリ通信をお読み頂きありがとうございました。

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現金・預金の横領

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ vol.118━2020. 6.15━

【ビズサプリ通信】

▼ 現金・預金の横領

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ビズサプリの泉です。

新型コロナ感染症について、緊急事態宣言が解除され経済活動が再開されつつ
あるものの、東京では新規感染者数が少し増加しているように感じます。
電車などの公共交通機関に乗ると乗車客数も一時期に比べると明らかに増加して
いますし、繁華街の人手も戻ってきているようです。

自分の業務においても出張や会食の予定が入り始めたりと、ステージが変化した
のだろうとは思いつつ、ワクチンもまだないため、油断は禁物と感じています。

そんな中、自分の業務と割と関わりあいのあるベンチャ―業界において29億円
という巨額の横領事件がおきました。
今回は、現金・預金の横領について考えてみたいと思います。

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■ 1.なぜ横領するのか?

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新聞報道によると今回の29億円の横領はFX取引に使われたとのことでした。
巨額横領事件として少し前になりますが、青森県住宅供給公社横領事件では
15億円を横領し女性に貢いだといわれています。

売店舗においては、少額ですが現金の紛失は割と日常茶飯事であり、「こち
らは今日飲み会だけどちょっと手持ちがないな」といった軽い気持ちから起こ
ることが多いと思われます。

いずれにしても、派手な生活をしたい、投資の失敗を穴埋めたいなど、粉飾
などとは異なり、完全に個人の金銭の欲に起因することが多いといえます。

また、東京三菱銀行の10億円横領やみずほ銀行の13億円横領などに代表され
るように金融機関においては横領事件がよく報道されていますが、現預金を
取り扱う業種という特殊性があるため今回は考慮せず、一般の事業会社、特
に本社部門について考えてみたいと思います。

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■ 2.不正のトライアングル

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一般的に不正は「不正のトライアングル」が揃ったときに発生するといわれて
います。詳細はここでは省きますが、簡単にいうと次の3つの要素となります。

動機:不正を行う理由(例:ノルマへのプレッシャー)
機会:不正を行える環境(例:担当が自分のみで発見される可能性が低い)
正当化:不正を正当化する事情(例:待遇への不満、自分だけやっているわけではない)

現金・預金の横領に不正のトライアングルをあてはめると具体的には次のよう
なものになります。

動機:個人的に借金を抱えている
機会:担当者は自分のみ、又は自分に決裁権限がある、第三者のモニタリングがない
正当化:一時的に借りるだけ、報酬・待遇への不満(もっともらっていいはず)

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■ 3.非上場会社における横領

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非上場会社では通常オーナーに権限が集中しており、ネットバンキングの承認
権限や銀行印もオーナー自ら管理していることが多く、その場合は横領も起き
づらいといえます。(オーナー自ら横領する動機もないため)

ただし、その権限を従業員に移譲した後は、中小企業が多い非上場会社におい
ては、十分に人員がいないため、担当者は少数又は1人、出納と記帳は同じ担当
となりがちです。特にオーナーが信用して移譲している人物の場合は人事異動
もなく、同じ担当者が1人で長期に担当することもよくあります。当然、銀行印
などもその担当者が管理を任されます。
ベンチャー企業やその他の非上場会社では厳しい監査もないこともあり、経理
担当者による現金・預金の横領や不正な経費精算が実は結構おきています。

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■ 4.上場会社における横領

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上場会社となると、少し事情が異なります。
経理担当は複数いることに加え、通常上場の過程において出納担当と記帳担当は
分けられており、現金出納、振込業務は1人で行うことはなく、ダブルチェック
体制が基本的に備わっています。

そのうえで上場会社における横領は大きく2つあると思います。

<不正な送金>
経理担当役員や経理部長など決裁権限のある人が、通常の支払フローを経ること
なく直接、支払作業担当者に指示をして送金することがあります。
この場合において、担当者は自分の上長から、時には役員から指示されると、
イレギュラーにもかかわらず適切であるかを考えずに実施することがままあります。
(後で理由をきくと「誰々さんからいわれたから。」と答えます。)

実際、直接の上長である課長を通さず部長が担当者に直接送金依頼し、途中で
そのことを知った課長が作業をとめさせ、通常の支払フローを経るよう指示する
という事例もありました。(幸いにもその件では不正ではありませんでしたが。)

<不正な経費精算>
上場企業となると規模も大きくなり経費精算の権限もオーナーから委譲される
こととなります。請求書などに基づく通常の支払は取引先の登録など一定、統制
が入っていますが、経費精算は従業員に払うこともあり甘くなりがちです。
結果として、プライベートの費用を不正に精算することいったことが起きやすい
構造となります。

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■ 5.対応策

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現金・預金の横領は個人の金銭の欲によるものが多く、また動機は他者から認識
することは難しいため、正当化と機会に対応することが効果的です。
<正当化への対応>
コンプライアンス意識の高い企業風土の醸成
  ルール軽視の企業風土の場合個人の主観による正当化が起きやすい
・(難しいですが)できるだけ透明性、納得性の高い評価制度、報酬制度の設計
  待遇への不満がたまりやすい
<機会への対応>
経理担当、特に責任者(部長クラス)の定期的な異動
・決まった承認、決裁手続きの順守
  不正の場合は責任者自ら支払データを作成や指示などイレギュラーな場合が多い
・経費精算においては、使用用途を制限するとともに自己承認を許容しない

ビズサプリグループでは、不正に関する統制行為の設計から不正の調査まで
広くコンサルティング業務も行っておりますので、何かお役に立てることが
ありましたらご相談ください。

本日も【ビズサプリ通信】をお読みいただき、ありがとうございました。

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